「木のいのち 木のこころ」

「木のいのち 木のこころ」
西岡常一 小川三夫 塩野米松

昨晩テレビでサラメシを見ていたら、
住み込み宮大工の特集をやっていました。
小川、という名前にピンときて調べたら、
やはり「木のいのち 木のこころ」
の小川三夫さんでした。

この本は僕のオールタイムベストの一冊なので、
おぉっ!ってなって急いで本をざっと読み返しました。

“百工あれば百念あり、これをひとつに統ぶる。
これ匠長の器量なり。
百論「一」つに「止」まる、これ「正」なり。”

何年も前にこの言葉を読んだ時よりも
ぐっとその重みを感じちゃって、
思わず深くて丁寧なお辞儀をしたのでした。

以下、数年前のレビューを再掲させていただきます。
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法隆寺付きの宮大工、西岡常一氏とその弟子、孫弟子たちの仕事論。
戦争から帰ってきてまず何よりも自分が手をつけた法隆寺がまだ建っているかを確認した、みたいな逸話の数々に時間の感覚がおかしくなります。宮大工のように伝統を重んじる世界でもその仕事としてのあり方は時代とともに移り行き、その中で発せられる“食えないのは職業じゃない”の重さたるや。

“百工あれば百念あり、これをひとつに統ぶる。これ匠長の器量なり。百論一つに止まる、これ正なり。”

思わず背筋が伸びます。
組織論も満載で、
最小労力で最大効果を求める西洋式とは違い、
自分一人の働きで何人の人を養えるかを考える東洋の思想は今の超速トレンド的な感覚からすると時代遅れに響くかも。
でもきっと学ぶことは多いはず。

本書の構成も面白く、特に天地人ラストの人の章はインタヴュー形式で、進むごとに弟子、孫弟子、新人、入ったばかり!とどんどん歴が浅くなっていきます。各々の中に「宮大工としての自覚」が芽生えていく様子がテープ逆回しの中で非常に瑞々しく追体験できる仕様です。人それぞれの形ながら、たしかに受け継がれているものがあることに胸が熱くなります。

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