ネットニュース 警官に撃たれて死んだ「41歳男」無惨な遺体を見た友人が抱く疑問
「殺してもいいと思ったのでは?」服役中の “誤診” 疑惑も警官に撃たれて死んだ「41歳男」無惨な遺体を見た友人が抱く疑問
1月13日の昼過ぎ、静かな午後の時間が流れていた大阪府八尾市に不穏な車列が現われた。先頭の車を運転していたのは、住所、職業不詳の石橋健太容疑者(当時41歳)だった。
石橋容疑者の車を「盗難車」と認識したパトカーは追跡を開始する。隣町から3分近く追い続けたあと、車列は幼児教育施設がある細い路地に入った。その先の交差点の信号が「赤」のタイミングで、警察は運転する石橋容疑者に職務質問を試みた。
すると、車はパトカーにバックで衝突。警官が停止を求めたが、石橋容疑者は応じず、白昼の住宅街には4発の銃声が鳴り響いた――。
「警察発表では、2人の警官が盗難車を挟むように両脇に立ち、それぞれ2発ずつ計4発を発砲し、3発が石橋容疑者に命中しました。
発砲後、車は20m先の交差点の信号機に激突して停止。石橋容疑者は公務執行妨害容疑で現行犯逮捕されましたが、右脇腹を撃たれたことが致命傷となり、搬送された病院で失血死が確認されました」(事件担当記者)
石橋容疑者は2022年9月、神戸市内で警察官を車ではねようとした殺人未遂容疑で逮捕されたが、持病の治療を理由に釈放されていた。同年12月、今度は窃盗容疑などで指名手配された。
発砲事件が起きたとき、石橋容疑者は無免許運転で、車内からは他人名義のクレジットカードなど十数枚や、白い粉が入った小袋、注射器などが押収されている。
「健太とは10代のころからのつき合いです。正直、かなりヤンチャでしたし、暴力団に所属していたこともあります。僕を含めて、ほかの人間が足を洗ったあとも、健太のヤンチャは収まらなかった」こう話すのは、石橋容疑者の旧知の友人・Xさんだ。
Xさんと石橋容疑者は2021年12月、5年ぶりに再会を果たした。それは、覚醒剤取締法違反で、石橋容疑者が5年の刑期を務めていたからだ。服役していた徳島刑務所から出所した石橋容疑者を見て、Xさんはその様子に驚いたという。「見た瞬間、健太の体に異常が起きているのがわかりました。
首や脇、股関節のリンパがパンパンに腫れた状態だったんです。健太自身は『刑務所内で寝汗をかくし、微熱が続くし、体にしこりもあった。つらくて所内での作業ができなくなり、刑務官と一緒に病院に行って検査してもらった。その検査結果をもとに刑務所内の医師に診てもらったら、がんではないと診断された』と話していました。でも、そんなわけがない。我々はすぐに大阪府内の病院に連れていったんです」下された診断は「悪性リンパ腫」。血液がんの一種だ。すでに病状はかなり進行しており、出所直後に石橋容疑者は末期がんとされる「ステージ4」の診断を受けた。
「大阪に戻ってから、仲間うちで治療費を集めて抗がん剤治療を進めていたんです。仲間で集まったときも、健太は『これからは地に足つけて頑張ります』と言っていたんですが……」地元に住む祖母に、お土産を買って頻繁に会いに行くなど、真面目な一面を見せていた石橋容疑者。
しかし、「地に足つけて頑張ります」と話していたものの、出所から1年も経たないうちに、神戸で殺人未遂容疑で逮捕される。
「そのとき警察は、末期がんの容疑者を入院させるには、手続きが煩雑すぎると思って、すぐに釈放したのでしょう。ただ、僕としてもあそこで釈放しないでもらいたかった。
徳島刑務所からの出所後、いっそう激しく悪さをおこなっていたように感じましたが、それは病気のことで自暴自棄になっていた部分もあったのでしょうか。検査を受けた病院に紹介状を書いてもらって、入院先を探しましたが、新型コロナを理由に何度も断られたと聞いていました。
『抗がん剤治療は怖い』とも言っていて、本人は死を待つのを本当に恐れていたんだと思います」(Xさん)現在、Xさんは徳島刑務所に対し、石橋容疑者が受けた検査カルテを提出するよう求めることにしている。
「刑務所内でがんの治療をしてもらっていたら、健太は自暴自棄になることもなかったはず。なぜ、がんじゃないという診断だったのかを聞きたい」(Xさん)1月13日の発砲事件で死亡した石橋容疑者の遺体は、司法解剖に回されることになった。Xさんはその後に、石橋容疑者の亡骸と対面している。「頭は割られて、体は全部開かれて……。でも、顔だけは静かに寝ているようでした。
発砲当時、健太が運転する車の前には信号待ちしていたトラックがあり、前後どちらにも車を動かせない状態だったそうです。そこに警察官2人が降りて、車の両側から拳銃を構えて発砲した。僕には最初から『健太を殺してもいい』というつもりで撃ったとしか思えません。本来なら、1発めは威嚇射撃で、それでも従わない場合に2発めを発射するといいます。でも、健太は1発めから4発めまで連続で撃たれている。何のためらいもなく撃たれています」健太の母親は『殺すことはないやろ。何発も撃つ必要があったんか』と言って、泣き崩れていました。
目の前の警察官にもそう訴えていました」(Xさん)
大阪府警はこの発砲について「車を停車しないと撃つ、と警告したうえでの発砲だった」と発表している。だが、Xさんたちは弁護士と相談し、発砲事件の検証を大阪府警に求めることを検討している。