見出し画像

夜更けのショートストーリー5 いつもそばに

夜更けに、部屋で一人女性が泣いている。

故郷の母親から電話があり、愛犬コロが亡くなったのを聞かされたのだ。

彼女はもっとコロの側にいてやりたかったと悔いていた。
実家を離れるとき精一杯泣いてくれたコロ。
遠くない未来にこの日が来ることは知っていたのに、、
彼女は自分を責めて泣いていた。

彼女は母親と仲のいい関係を築けず、いつしか疎遠になっていた。
帰りたくとも帰りずらい事情が彼女にはあった。

もっと自分に勇気が、力が、知恵があればと、自分の無力さに彼女は泣いた。

そして泣きつかれ、「ごめんね」と言って彼女はベッドに横たわり眠りに落ちていった。。

彼女は夢を見ていた。
姿ははっきりしないが、何かにやさしく抱かれていた。
彼女もやさしく抱きしめた。

彼女は眠りから覚め、まだやさしい温もりを感じていた。
「会いに来てくれたんだ。」

そう、たしかにコロは彼女の中で生きている。

窓の外は白々と明けようとしていた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?