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【空道】目黒雄太が世界王者・中村知大に勝った19歳・菊地逸人を破りV4を達成。王者が次々とU25世代に敗れる大波乱! 世界選手権日本代表の行方は?=5.13 全日本空道連盟「2018 北斗旗全日本空道体力別選手権」

5月13日、宮城県・仙台市青葉体育館にて全日本空道連盟「2018 北斗旗全日本空道体力別選手権」が行われた。

2018年11月30日~12月2日、4年に一度の世界選手権(愛知県体育館)を控える空道。今大会はその日本代表選手を決める最終選考大会でもある。

「2018 北斗旗全日本空道体力別選手権」は、世界王者やアジア王者、日本王者らがこれまで全日本クラスの大会で優勝したことがない新鋭たちに敗れる大波乱の展開となった。新世代の台頭もあり、世界選手権日本代表の行方が気になる空道の激闘は、以下の通り。(記事・写真提供=全日本空道連盟)

■一般社団法人全日本空道連盟 大道塾
「2018北斗旗全日本空道体力別選手権大会」
2018年5月13日(日)宮城県・仙台市青葉体育館

▼230以下クラス決勝戦
○目黒雄太(大道塾長岡支部/2015~2017全日本体力別230以下優勝)
本戦 効果優勢勝ち ※上段膝蹴りで効果1、パンチ連打で効果2
×菊地逸人(大道塾横浜支部/2015全日本U19=240以下優勝)

230以下クラス準決勝。右フックで中村(青)のアゴを打ち抜く菊地(白)

230以下クラス決勝戦。19歳の菊地逸人は準決勝で、前回世界選手権唯一人の日本人王者である中村知大から本戦で3本、延長でフルマークの旗を得て勝利。菊地は19歳にしてキャリア12年、ジュニア戦線で輝かしい戦績を残したのち、昨年春から一般カテゴリーに昇格したホープだ。昨年の全日本・アジア選手権ではベテラン選手にキャリアの差をみせつけられていたが、今大会では中村得意の組み技にも臆することなく対応していた。

(写真)道衣を掴むこと、掴まれることがさまざまな投げ技や打撃に繋がるのも着衣総合格闘技・空道の醍醐味だ。

もう一方の準決では、目黒雄太がプロのリングでも活躍する末廣智明につけいる隙を与えず。両者が完全なる世代交代(末廣は37歳、中村は29歳、目黒は25歳)をアピールしての決勝は、右ミドルをキャッチさせてからの右ヒジ(写真)を皮切りに、右膝、パンチ連打と、顔面への猛襲で効果2つを連取した目黒が本戦で勝敗を決めた。

北斗旗(最優秀勝利者賞)を獲得し、V4をアピールする目黒。年齢から考えて、小川英樹のもつV7の記録を更新することも十分に考えられよう。

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神代(白)の左ハイキックが服部(青)を捕らえる

▼240以下クラス決勝戦
○神代雄太(大道塾吉祥寺支部/2017全日本体力別240以下優勝)
延長 旗判定4-0
×服部晶洸(大道塾横浜支部)

25歳の神代と27歳の服部の対戦。服部はここ数年、常にこの階級のトップ選手たちと互角の闘いを演じながら、肝心なところで競り負けてきた選手で、念願の決勝進出。試合は、神代が支釣込足からのマウントパンチ、服部のパンチをスウェイしてからの右ストレート、服部はパンチを散らしてからの右ローと、一進一退となるが、左ハイ、掴んでのヒジ、頭突き……と先手で多彩な取り組みをみせるのは神代の方。本戦延長とも双方に効果以上のポイントはなく、旗判定で4人が神代の優勢を支持した。

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安富(青)の技が流れ、死に体となった瞬間を逃さず放たれる藤田(白)の右ストレート


▼250以下クラス決勝戦
○藤田隆(大道塾秋田支部/2015全日本体力別250以下準優勝)
延長 有効優勢勝ち ※本戦で安富が投げからのキメで効果1、延長で藤田が右ストレートで効果1、ニーインからのキメで効果2を奪う
×安富北斗(大道塾札幌南支部)

過去2戦し2度とも苦杯を舐めさせられている相手、加藤智亮のテンプルを打ち抜き、決勝に進出した藤田。対するは、ハイキックと投げ技の切れる20歳、安富。安富は本戦開始直後から猛攻を浴びせ、大外刈りからのキメで効果1を奪ったうえで、右ローを相当数ヒットし、転倒させられても下からの蹴りで藤田の顔面を捕らえ、ワンサイドゲームを展開する。本戦終了のブザーが鳴った時点で、藤田は足を引き摺る状態。「決勝は効果2以上のポイントがないかぎり自動的に延長戦に入る」という規定が不要なのではないかと思われるほどの情景であったが、延長に入ると、日本拳法、自衛隊徒手格闘術仕込みの右に望みを託した藤田が、右ストレート一閃。効果を奪い返したこの一発が試合の流れを変えた。やや勢いを落とした安富がバランスを崩した隙を見逃さず、藤田はニーインからのキメで効果ポイントを追加。そのまま右ストレートを主体とした攻撃を続け、33歳にしての全日本初優勝を、延長逆転勝利で決めた。

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伊藤(白)が腕十字を辻野(青)に極め、完勝。

▼260以下クラス決勝戦
○伊藤新太(大道塾日進支部/2017全日本体力別260以下準優勝、2018アジア同級準優勝)
延長 一本勝ち ※腕十字。本戦では、投げからのキメで伊藤に効果1あり。
×辻野浩平(大道塾岸和田支部/2014世界選手権270以下4位)

本戦、重い右ストレートを主体に前に出る辻野に対し、伊藤はオーソにサウスに構えをスイッチしながら、ボディワークを交え、攻撃を凌いで組みつき、大外刈からのキメ。効果を奪う。延長でも、ポイントを奪い返すべく襲い掛かる辻野に対し、下がりながらの展開でジャブやハイキックを的打。このままポイントを守って逃げ切るのかと思いきや、延長の残り30秒になって、フルスイングのパンチの連打→組んで頭突き→反り投げ→腕十字でタップアウト。過去、センスのよさを評価されつつ、勝負弱さを指摘されていた伊藤だが、リードしていてもなお攻め切る闘争心と、試合の組み立ての巧さに、成長を感じさせた。


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組み技に持ち込もうとする野村(白)のレバーに三日月蹴りを刺す岩﨑(青)。

▼260超クラス決勝戦
○岩﨑大河(大道塾総本部/2017全日本体力別260超優勝)
延長 判定5-0
×野村幸汰(大道塾札幌西支部/2015・2016全日本体力別260超優勝)

本戦、岩﨑がフットワークを駆使して周りながら、ジャブ、左ミドル、左インロー、左ハイ、右ロー、右クロス、上段前蹴り…と次々にヒットさせてはヒット&アウェイ、野村は組みついて支釣込足で前方へ、小外で後方へと投げ分ける……これまで同様、双方のテリトリーがはっきりとした展開。本戦・延長を通じて、効果以上のポイントはなく、旗判定5-0で岩﨑が対戦成績を2勝1敗とした。世界選手権では、岩﨑が270以下クラス、野村が270超クラスで、ロシアをはじめとする世界のパワーファイターたちを迎え撃つことになるだろう。加藤久輝がより幅広くプロ活動を行うために、大道塾から籍を抜いた今、重量級では、この二人だけが日本の砦。半年後、果たして日の丸ははためくのか?

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内藤(白)の左の蹴りに左の突きを合せる今野(青)

▼女子 220超クラス決勝戦
○今野杏夏(大道塾多賀城支部/2015春季全日本女子優勝)
延長旗判定 4‐1
×内藤雅子(大道塾横浜北支部)

全日本4大会連続優勝、ワールドカップ、アジア選手権優勝、サンボでも、アマチュアボクシングでも全日本優勝と、盤石の強さをみせてきた大谷美結が、警察学校入校直後の時期ゆえ、出場できず。大谷を常に追走してきた今野が、順当に優勝を果たした。柔道出身の内藤も、左上段前蹴りやタイミングのよい小外刈を決めるなど健闘するが、ワンツーフック、右ローなどでいなす今野を追い詰めるには及ばなかった。

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ジュニアクラス出身者は、蹴り主体の攻めとなりがちだが、小柳(白)は作田(青)とのパンチにもたじろがず

▼女子 220以下クラス
優勝 小柳茉生(大道塾新潟支部)

4人による総当たりリーグ戦で争われた女子軽量級。同世代の大倉萌がジュニアクラスから一般カテゴリーに昇格後、すぐに頭角を現したのに対し、2016年の春から一般カテゴリーに出場しながらなかなか優勝戦線に絡めなかった小柳が、遂に優勝を果たした。2016全日本女子215以下クラス優勝の渡邊富紀恵、2017アジア女子220以下クラス優勝の作田千代美らのパンチ、組み技に対応し、得意の上段蹴りを決めての完勝。今大会、ケガのため欠場した大倉萌との決着戦が待たれる。

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左から野村、岩﨑、辻野、伊藤、安富、藤田、服部、神代、菊地、目黒、今野、小柳

■RESULT
女子220以下 【優勝】 小柳茉生(大道塾新潟支部)
女子220超 【優勝】 今野杏夏(大道塾多賀城支部)
230以下 【優勝】 目黒雄太 (大道塾長岡支部) 【準優勝】 菊地逸斗 (大道塾横浜北支部)
240以下 【優勝】 神代雄太 (大道塾吉祥寺支部) 【準優勝】 服部晶洸 (大道塾横浜北支部)
250以下 【優勝】 藤田隆 (大道塾秋田支部) 【準優勝】 安富北斗 (大道塾札幌南支部)
260以下 【優勝】 伊藤新太 (大道塾日進支部) 【準優勝】 辻野浩平 (大道塾岸和田支部)
260超 【優勝】 岩﨑大河 (大道塾総本部) 【準優勝】 野村幸汰 (大道塾札幌西支部)

◆最優秀勝利者(北斗旗獲得):目黒雄太 (大道塾長岡支部)
◆優秀道場賞(勝利数ポイントによる団体戦) 1位:大道塾岸和田支部、大道塾横浜北支部、大道塾行徳・東中野支部(同率)

※以下、併催の大会結果(○○支部とあるのは、すべて大道塾○○支部の略)
2018 全日本空道シニア選抜選手権大会
シニア軽軽量級 【優勝】 桐田淳利 (仙南支部) 【準優勝】 佐藤嘉紘( 新潟支部)
シニア軽量級 【優勝】 岡田季之 (仙台東支部)
シニア軽中量級 【優勝】 平石哲也 (行徳支部)
シニア中量級 【優勝】 平田祐二 (浦和支部) 【準優勝】 吉永直樹 (高尾支部)
シニア軽重量級 【優勝】 新出勝治 (行徳支部) 【準優勝】 戸谷誠 (練馬支部)
シニア重量級 【優勝】 飯塚 進 (岸和田支部)
シニア超重量級 【優勝】 寺門勝利 (草加支部) 【準優勝】 諏訪一郎 (広島中央支部)

2018 全日本空道ジュニア選抜選手権大会    
U13女子 42kg以下 【優勝】 相内春花 (青森支部) 【準優勝】 佐藤日和 (登米支部)
U13女子 52kg以下【優勝】 神 舞優 (青森支部)
U13男子 42kg以下 【優勝】 鈴木 廉 (四日市支部)
U13男子 52kg以下 【優勝】 酒井晃希 (塩釜支部) 【準優勝】 本田亮太 (紋別支部)
U16女子 43kg以下 【優勝】 稲垣琴愛 (四日市支部)
U16女子 53kg以下 【優勝】 小野寺玲奈 (帯広支部) 【準優勝】 高橋真綾( 三沢支部)
U16女子 63kg以下 ワンマッチ 【勝利者】 小泉穂乃華 (帯広支部)
U16男子 48kg以下 【優勝】 今井健太郎 (四日市支部) 【準優勝】 坂本琥珀 (塩釜支部)
U16男子 58kg以下 【優勝】 吉田優太 (大広支部) 【準優勝】 齋藤聖覇 (仙南支部)
U16男子 68kg以下 【優勝】 鶴田 陸 (朝倉支部) 【準優勝】 末藤海瑳( 岸和田支部)
U19女子 215以下 【優勝】 中村粋里花 (帯広支部)
U19女子 225以下 ワンマッチ 【勝利者】 末永あゆ (石巻支部)
U19男子 230以下 【優勝】 遠藤春翔 (塩釜支部)
U19男子 240以下 【優勝】 酒井優太 (塩釜支部) 【準優勝】 小野寺稜太 (帯広支部)
U19男子 250以下 ワンマッチ 【勝利者】 曽山智輝 (岸和田支部)
U19男子 270超 ワンマッチ 【勝利者】 江上遼太郎 (三沢支部)

※空道の試合は「身長+体重=体力(身体)指数」という独自の階級制を採用している。一般的に格闘技の階級分けで使用される「体重別」はレスリング、相撲、柔道といった、まず相手と組合って相手を動かし、バランスを崩し転倒させることを最終目的とする競技の場合、安定性につながる「体重」がその勝敗を左右する最も大きな要素となる。打撃系の格闘競技の場合も、その衝撃力は「体重」に左右される。しかし離れて戦うことも多い打撃系の場合は、「体重」と同じかそれ以上に、その打撃が相手に届くためには「リーチ」が大きく影響してくる。そして「リーチ」は概ね「身長」に関係する。そう考えたとき、「突き」・「蹴り」といった打撃系の要素と、「投げ」・「絞め」・「関節」といった組技系の要素を併せ持つ武道である「空道」においては、安全かつ平等である(かなり互いのハンディを解消できる)「身長+体重」(体力指数)による階級分けを行うことが、「スポーツ性」の確立という点でも重要と考え、体力別制度を採用している。


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