見出し画像

【QUINTET】エディ・ブラボー「俺が思うにジョアオ・アシスとサトシ・イシイ。この二人こそ乗り越えなくてはならない山なんだ」

7月16日(月・祝)、大田区体育館で『QUINTET.2』が開催される。1チーム5人による団体勝ち抜き戦で、エディ・ブラボー率いる注目の「TEAM 10th Planet」は、1回戦で石井慧率いる「TEAM VAGABOND」と対戦する。米国で独自のグラップリング大会「EBI」を主催するエディは「QUINTET」をどうとらえているか。そして今大会の勝算は? 『ゴング格闘技』エディ番でお馴染みの堀内勇氏が訊いた。

【TEAM 10th Planet】
先鋒:PJバーチ
次鋒:リッチー・マルティネス
中堅:ジオ・マルティネス
副将:アミール・アラム
大将:アダム・サックノフ

【TEAM VAGABOND 石井慧インタビュー】

【そして試合はどうなったのか? 今大会も名勝負が続出! 試合動画】

──7月16日のQUINTET.2 大会にて注目の「チーム10th Planet」を率いるエディ・ブラボー総帥です。どうです、久しぶりの日本は?

「いやあ、暑いな!! 俺は2000年に初めて日本に来て、PRIDE 10の英語放送の解説をしたんだけど、あの時もメチャクチャ暑くてさ。スーツを着ていたんだけど、プールに飛び込んだみたいに汗だくになっちまったんだ。あれは忘れられねえよ」

──それを思い出す暑さだと。

「ああ。あの大会のメインはサクラバとヘンゾの試合だったんだ」

──おおっ! 伝説の一戦ですね!

「実はその試合で、俺は自分史上最低の解説をしちまったんだよ(笑)。ヘンゾがサクラバのバックに付いて、サクラバがアームロックを狙った時、俺は言ったんだ。『これは無理だ。サクラバは、道場で(格下相手)ならここから極めているかもしれないが、ヘンゾ相手には効かないはずだ!』ってな。でもその2秒後に、サクラバはヘンゾの腕をへし折っていたわけだ! ハハハ! ネットでは未だにそのことを言われるんだ。やらかしちまったぜ」

──サクラバロックの切れ味は、エディの目を欺くほどだったということですね。そんな桜庭選手が、今回あなたのチームを招聘した。二人の間には不思議な縁があるということですね。

「ああ。まったくクレイジーだし、嬉しいことだ。サクラバが作り出したQUINTETのチーム・コンセプトは、マジで最高だぜ。これまでうちの選手が戦う場合、例えばジオ(マルティネス)はいつもチームのために戦ってくれるけど、マットでは一人で戦うだけだった。でもこの大会では他のメンバーと一緒に戦うんだ。こういう感覚ははじめてだし、ヤバいぜ」

──あなたはQUINTET.1 大会が終わった後すぐにツイートで『QUINTETは最高だったぜ!』とツイートしていましたね。

「I loved it!! 最初は大会の仕組みをあまり分かってなかったんだけど、(決着方式が)サブミッション・オンリーだと知ってこれはいいなと思ったんだ。加えて、極められなかったら両者失格というルールが最高だ。グレイシー・ナショナルズもそういうルールでやっていて、選手たちがどんどん極めに行ってすごく見応えがあったんだよ」

──通常のポイントシステムとは違うと。

「そうだ。特に試合の終盤が違う。ポイントシステムの試合では、勝っている方のコーチが選手に『そのまま抑えとけ! 何もするなよ!』って指示を出したりして、必死になっているのは負けている側だけだったりするよな。でも両者失格ルールだと、両方のコーチが『行け!! 極めろ!!』って叫ぶからな。そういう試合がアメージングなものになるんだよ。EBI(エディ・ブラボー・インビテーショナル:ブラボーが主催しているグラップリングトーナメント)も両者失格を採用したかったけど、次々と両者が失格しちまったらトーナメントが成立しないから別のルールにしたんだ。でもQUINTETみたいなチーム戦なら両者失格でも次の試合があるからな。まったくビューティフルだぜ!」

──現在、世界のグラップリングシーンで重要な地位を占めるEBIとQUINTETは、非常に似た思想を共有しているということですね。

「ああ、だから俺たちは今回の大会に招聘された後も、まったく練習方法を変えてないんだよ。普段からひたすらサブミッションを狙った練習をしてるからな。完全にいつもと同じだぜ。俺たちは毎日極めを磨いているんだ。そしてそこに至るまでの動きもな。サブミッションに至るための、ありとあらゆる道を探っているんだよ。そんな俺たちにとって、この大会はまさにパーフェクトだってことだ!」

──もうひとつ、QUINTETのチームコンセプトが面白いのは、引き分け狙いの戦略を見応えあるものに変えることですよね。

「そうだ。そうやって小さい選手はでかい選手を道連れにできるし、逆にビッグガイの方は極めようと必死になるってわけだ! 本当に面白いぜ!」

──これまで2回とも大成功を収めたQUINTETですが、今回チーム10th Planetは、どんな新しい要素を持ち込んでくれますか?

「まずは何よりもラバーガード(ブラボーが開発した、柔軟な体を利用したガードからの仕掛けや極め技の総称。自らの足を腕で掴むミッション・コントロールを起点として、そこから無数の複雑なパターンを誇る)だな。5人のうち4人は超一流のラバーガードの使い手だ。そしてもちろんツイスター(いわゆるグラウンド・コブラツイスト。ラバーガードと並ぶブラボーの代名詞的な技術)、トラックポジション(ツイスターを仕掛ける前の、相手の両足を自らの両手両足でコントロールするポジション。かつてブラボーは、このポジションへのさまざまな入り方を開発した。近年のグラップリング界では、ベリンボロと並んでバック取りのための有効なポジションとして再脚光を浴びている)、スパイダーウェブ(腕十字に入る前のコントロールのポジション。ラバーガード等からの極めにつなぐ体勢としてブラボーの10th Planetシステムでは特に重視されている)もだ」

──すべてあなたが作り上げた10th planet柔術を大きく特徴付ける技術ですね。

「それから俺たちは足関節、キムラ等ありとあらゆるサブミッションも磨いているし、もちろんバック取りも、それから通常のパスガードも極めて強力だぜ」 

──全てが必見だと。今回のチームの精鋭5人のなかで、特にマニアが注目するのはジオ・マルティネス選手ですよね。EBI大会の軽量級で何度も優勝し、ADCC世界大会でも4位に入賞しています。極めて柔軟な体を持ち、ガードワークも足関節もトラックポジションからのバック取りも全てハイレベルです。

「間違いないな。ジオこそがこの10th planet のパウンド・フォー・パウンド、ナンバーワンの男だ」

──そしてその兄が「ブギーマン」の仇名を持つリッチー・マルティネス選手です。

「リッチーのラバーガードは凄えぞ。一度捕まったら逃れるのは困難だ。そしてジャパニーズ・ネクタイやダース・チョーク等の絞め技の威力も抜群だ」

──このマルティネス兄弟は、ともにもともとブレイクダンサーなんですよね。

「ああ」

──ブレイクダンスは、強い柔術家を作るのに向いているのでしょうか? 特にあなたのようなスタイルの柔術において。

「そのとおりだぜ。ブレイクダンスで必要なバランス、ベース、敏捷性、運動能力ってのは、柔術におけるそれよりはるかにでかいからな。ブレイクダンスの方がはるかにハードなんだよ。だから奴らには柔術はイージーってわけだ。奴らは首を支点にスローモーションで回転できるんだぜ。だからジオなんて柔術をはじめて1カ月で、もう周りのパートナーを圧倒してたんだよ。俺も仰天したぜ。こいつはなんだ、ってな」

──ジオは記念すべきEBI第1回大会で強豪ジェフ・グローバーを、EBI 10では新足関節王の異名を取るエディ・カミングスを倒した、まさにEBIを象徴する選手ですね。待望の初来日です。

「そしてな、ジオに続く新しいトップがPJバーチなんだ。EBI 13では初戦を勝った後、(昨年のADCC世界大会3位の)ワグナー・ホシャに延長で惜敗したが、あの時は怪我でほとんど練習できなかったんだ。今回のようにしっかり練習できれば間違いなくこの世界のトップに食い込めるよ」

──さらに重量級選手が二人います。

「そうだ。一人はアダム・サックノフだ。膝の怪我を抱えていたけど、ついに全快しつつあるんだ。重量級なのにラバーガードも絞め技も、アームドラッグも見事に使いこなす。みんなを驚かせると思うぜ。そして最後の一人はアミール・アラムだ。こいつもラバーガードの使い手で、ゴゴプラッタで誰でも極めちまう。そんな奴は今回、体重を絞って生涯におけるベスト・シェイプで臨むんだ。凄いことになるぜ!」

──そんな楽しみなチーム10th Planet ですが、相手の石井慧選手が率いるチーム VAGABONDもきわめて強力です。

「そうだな! イシイはモンスターだし、ジョアオ・アシスもだ。まったく手強い相手だぜ! 」

──アシスは柔術の世界的強豪なので、まだ手の内は想像できるでしょうが、柔道ベースの石井選手のグラップリングは、あなたたちには未知数な面もあるのでは

「ああ。イシイをフィニッシュするのは困難だ。そこは俺たちも十分分かってるぜ。全ての試合がハードなものになるってな」

──本日選手の出場オーダーも発表され、初戦はPJバーチ選手とクリシェック・スチョラスキー選手の対戦になりました。

「ポーランドの選手だな。これまたタフな相手だよ。簡単じゃないがPJなら勝てると思うぜ。そうすると次に向こうから出てくるのが次鋒のジョアオ・アシスだ。ここで引き分けに持ち込みたいところだな」

──アシスはADCC重量級世界王者ですから、それはかなり大変な仕事ですね。

「まあな。だがPJは手強いぞ。ずっとレスリングをやってきたし、簡単にはタップを取られねえんだよ。同時にアシスからタップを奪うのがどんでもなく困難だってのも分かっているさ。だからここは引き分けでいい。そうすれば、次はうちの次鋒のブギー(リッチー・マルティネス)と向こうの中堅のイシイの対戦となる。これも引き分けになるだろう」

──前回ミドル級世界レベルの柔術家であるマルコス・ソウザ選手をパスガードして追い詰めた石井選手相手に、引き分けを狙うと。

「いや。ブギーはラバーガードからイシイ相手に攻め込もうとするはずさ。でもイシイはあんなジャイアントだし、簡単にはいかんだろうな」

──なるほど。そうなると次はとうとうエースのジオ・マルティネス選手の出番となります。相手は副将のアンドレイ・カズショナク選手。柔道オリンピアンにして、サンボの世界王者という凄まじい実績の選手のようです。

「まあジオなら残りの二人は難なく片付けるだろうな」

──おおっ!!

「万が一そうならなくても、こちらにも重量級がまだ二人残っているってわけだ。だから俺らにとってはこれはビューティフルな組み合わせになったと思ってるぜ!」

──勝算は十分と。トーナメントのもう一つの山についてはいかがですか。

「正直、今回の大会の一番の難敵はチームVAGABONDだと思っているんだ。もちろんサクラバはレジェンドで、彼からタップを取るのは大変だ。何てったってホイスもホイラーもヘンゾも、あらゆるグレイシーがサクラバからタップを取れなかったんだからな。スチュアート・クーパーのところにもいい選手がいる。でも俺が思うに、ジョアオ・アシスとサトシ・イシイ。この二人こそ乗り越えなくてはならない山なんだよ」

──よく分かりました。では試合を期待しています!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?