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【PANCRASE】田村一聖「常に周囲に感謝しています。でも、勝ったときじゃないと返せないものもある」=3月11日「PANCRASE294」

3月11日、新木場スタジオコーストで開催された「PANCRASE294」で6連勝中だった若手のホープ・堀江圭功に2R KO勝利した田村一聖(KRAZY BEE)。

修斗環太平洋王者、UFCを経て、PANCRASEで再び頂を目指す34歳の田村は、いまなお成長を遂げている、その源泉について語ってくれた。

◆田村一聖「途切れずに空手をやる必要がある」

——登り調子だった堀江圭功選手を見事、2R KOに下した田村一聖選手です。試合前段階では若手のホープである堀江選手に注目が集まっていたことをどのように感じていましたか。

「そうだったみたいですね。僕、本当に知らなくて。聞いて悲しいなと(笑)」

——すみません、こちらも事前取材が堀江選手だけでした。相手の堀江選手は6連勝中のストライカーでしたが、どう戦おうと考えていましたか。

「もうグラウンドで寝る気なかったですね。前回(11月の鈴木琢仁戦)ははっきり言って内容的には圧倒したと思うんですけど、自分としてはふがいない試合で、空手の先生(二瓶弘宇氏)にボロクソ言われたので(苦笑)今回、何があっても寝る気はなかったです」

——試合ぶりからもそれが伺えました。でも、前戦は仰った通りの圧勝で、鈴木選手のハーフからの仕掛けを見事に完封したと言えると思います。

「前戦はあまり勝ち方にこだわりがなくて、打撃の攻防でも良かったんですけど、とりあえずしっかり勝とうと思ったんです。それで、相手の得意な寝技に引き込まれたときに、自分が全然通用したので、勝ちに行くとなったらそれが一番かなと思って一番簡単な勝ち方をしてしまった。基本的に総合って立ちから始まるじゃないですか。相手が寝るか、自分が寝るか、自分が相手を寝かさないと寝技の攻防にならない。そういうなかでの展開でした。今回も勝つためには寝ても良かったのですが、寝なくても勝てると思っていたんです。相手がストライカーであろうとしっかり立ちでも勝負できるという気持ちもあって、もう絶対寝る気なかったですね」

——堀江選手は伝統派とフルコンタクト、両方の空手経験者です。対して、田村選手は一期倶楽部で空手の練習を続けていますが、リーチでは7cmほど短かった。それでも圧力は田村選手がかけていました。

「堀江選手が打撃をやっていたことは分かっていたのですが、もっとガンガン入ってくると思ってました。入りづらそうでしたね。彼の入り方もよく見ていたので、たぶん合わせられちゃうなと感じたんじゃないでしょうか。実際に(打撃を)合わせる練習もしていたし、向こうの打撃に合わせてタックルなんて思っていなかった。入って来られてもガードして、返しまで入れる。そのまま合わせてストレートでぶち当てるぐらいの感じでやっていました。こっちのほうが速いと思っていたので」

——「ぶち当てる」という言い方が二瓶先生のようです。スピードも田村選手の方が速いと感じていたのですね。

「そうですね。入りだけじゃなく、返しもたぶん僕のほうが単純に速かったです」

——踏み込みの速さだけではなく、返しの速さで優位に立っていたと。前手の動きでご自身の間合いは掴んでいたのでしょうか。

「そうですね。リズムがガチャガチャしていたので、前手で触って、フェイントも反応してくれたのが分かっていたので、やることは変わらなかった。徹底してイメージはしてきたつもりです」

——田村選手のフェイントに堀江選手が反応する動きで、田村選手のやるべきことも決まって来ると。ただ1R、距離を詰めてきた堀江選手はボクシング的な動きで得意のボディ打ちまで繋げてきました。

「あれは自分の悪い癖なんです。腹はあまり効かないので打たせちゃうみたいなところもあって。印象的にはちょっと良くなかったですね。1R終わった後に自分が手上げてたのは、今思えば情けないなと(笑)」

——ということは、1R終了時には攻防で手応えをつかんでいたんですね。

「1Rの途中で、返しのフックを当てたときに効いていたと感じたので、もう倒そうと思ったんです。けっこうスロースターターだったりするんですけど、見た目的にも(笑)、瞬発的な動きも自分にはあるんで、最終的に倒ぜばいい、当たれば倒れるっていう自信もありました」

——右ローを効かせた田村選手は最後、右を当てた後、テイクダウンを切って、堀江選手が打ち返しに来たところに右を当てました。

「覚えています。右当てて、そこからプレッシャーかけて。あそこでは一発で行こうというより、詰めて詰めて、相手が嫌な詰め方をしようと思っていました。その距離が短くても、“距離に入ったら”こういうふうに詰められると嫌なものだし、経験は僕のほうがあるので、その感覚は僕のほうが分かっているんです」

——「相手が嫌な詰め方」に練習の成果が出ているのでしょうね。試合後、「くそ強いチームメイトとトレーニングしているんで、これぐらい当たり前にしないと」とマイクで語りました。勝ち名乗りの前にセコンドの朴光哲選手、横山恭典選手らのもとへ駆け寄ってハグしていましたね。

「チームメイトとかスタッフがいなきゃこういう状況にはなれないので。常に感謝はしているんです。だけど、こういうふうに勝ったときじゃないとなかなか返せないものもあるじゃないですか。それに、奥さんは今日来ていないんですけど、お腹がもう大きくて来れなかったんです。『絶対に勝ってきて』と言われていたので……勝てて良かったです」

——そんな大事な時期だったのですね。奥様と二瓶先生にも勝利の報告ができますね。

一期倶楽部には恭司というスーパースターがいるんで、自分もこのくらいやらないと話にならないですから。僕の体型でリーチとかを考えると、足を使うしかない。それを得るためには、足利で途切れず空手をやる必要があるんです」

——フェザー級で次の目標は?

「1試合1試合、頑張ります。それしかないです。それとISAOさんが来月(4月15日PANCRASEスタジオコースト)暫定のタイトルマッチ(vs松嶋こよみ)あるじゃないですか。いつも練習してるんで、ぜひ頑張ってほしいです」

——KRAZY BEEに出稽古に来ているISAO選手へのエールでコメントの締めとは、田村選手らしいです。今日は、試合直後にありがとうございました。

「こちらこそ、ありがとうございました」

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