見出し画像

『アートカレッジ1994』

2023年、中国、リウ・ジエン監督、作画、119分、
10/31(火)、東京国際映画祭、ヒューマントラストシネマ有楽町にて。

1990年代初頭、中国の美術大学で学ぶ男女学生たちの生活。
芸術とは何か、人生とは、の悩み多い日々を、中国の政治的社会的変化の中に往年の楽曲を取り込みながらリアルなタッチで描く。
作画は平面的で影もなくシンプルで、ロトスコープ的な動き。
監督の前作で東京アニメアワード(TAAF)でも以前に上映された『ハブ ア ナイスデイ』(2017年)は同様のリアルなタッチが犯罪絡みのシリアスな内容とマッチして効果的だったが、本作ではそこまでの効果は感じられない。
登場人物それぞれもモデルとなった人物が想像できるほど似顔絵的で、その彼氏彼女の物語に留まってしまい、映画を越えて我々の物語と思えるほどの普遍性は感じられないのが惜しい。
と言ってもこれは私の感覚で、これこそ自分の物語と受け取る人がいるかもしれない。映画はあくまでも個々人のものだ。
『アメリカン・グラフィティ』の如くエンドロールで、それぞれの人物のその後の人生が語られるが、転落型かと思われた女性も含めいずれもが人生を誤ることもなく、多かれ少なかれ一定の社会的成功を収めているのは中国ならではなのだろうか。

本作の映画祭の一本としてのセレクトは他作品とのルックの違いを打ち出せて良い選択だったと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?