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キネコ国際映画祭2024

10月31日(木)から11月5日(火)にかけて第31回キネコ国際映画祭が開催され、今年も参加してきた。
今回は週末に雨が降り、野外上映会や熱気球体験など屋外の企画が幾つか見送られたりしたが、期間中に連休を挟んで満席も相次ぎ家族連れなどで賑わった。
会場は例年通り二子玉川のライズスタジオ&ホール、109シネマズ二子玉川が中心。
今回はカナダ、ケベック映画特集や新設のドキュメンタリー部門を目玉に、過去最多本数の長短編映画が上映された。
声のキャストがその場で吹替を行なうライブシネマでの上映も多く、臨場感あふれる映画体験となった。
他の映画祭とスケジュールが重なったために私はアニメーションを中心に6プログラムの鑑賞となったが、観客のお子さんたちの集中度も高く、今回もキネコならではの気持ちのいい体験となった。

鑑賞したのは以下のプログラム。
A「1歳から楽しめるドタバタ短編集」


B「思いやりを伝える短編集」


D「世界について学べる短編集」


E「勇気を出して成長する短編集」


G長編映画『カタック~シロイルカの物語~』


H長編映画『バターフライ・テイル』

中でも印象的だったのはEプロの一編『あめだま』。
韓国のペク・ヒナ氏の絵本『Magic Candies』を原作に東映アニメーションが製作した21分の3DCG短編。


監督は西尾大介氏。同社の『ふたりはプリキュア』『ドラゴンボール』等も手がけたベテランだ。
いつも一人遊びしている少年ドンドンはある日、不思議なあめだまを見つける。それは舐めると近くにいる飼い犬や父親の心の声が聴こえるのだった。
『プリキュア』シリーズのエンディングダンスでもわかるように3DCGにも定評のある同社だけに画面の仕上がりは見事。
実写的なリアルな背景とディフォルメが利いたキャラクターがよく噛み合って絵的なクオリティも高く不思議な雰囲気。抑えた色彩も落ち着きがある。
あめだまがもたらした体験が引っ込み思案な少年が一歩を踏み出す心の成長に繋がる展開も好感度が高く、手堅い演出で素直に受け取れる。
東映アニメーションは旧名・東映動画の昔から将来を見越したチャレンジャブルな企画をものしてきた会社。その先に『THE FIRST SLAM DUNK』などの成功がある。
『あめだま』の挑戦もやがて大きな実りとなるだろう。
もちろん、これ単体で優れた作品なので、この先多くの鑑賞機会が期待される。今回、観ておけて本当に良かった。

2本の長編アニメはどちらもケベック・カナダの作品。
取り分けシロイルカ(ベルーガ)の冒険物語『カタック~シロイルカの物語~』は心に残った。


仲間よりも成長が遅いが元気なシロイルカの男の子カタックを主人公に家族の絆や勇気、冒険の途中で出会うシャチの女の子との種族を越えた友情などを描く良質な作品。
画面作りに映画的なカメラの視点を感じさせる点も好感。
カタックの冒険の旅が同時にケベック州で取り組むシロイルカの保護と環境浄化運動とも繋がって感心した。
監督はクリスティーン・ダレール=デュポン&ニコラ・ルメイ。
上映はライブシネマの生吹替で行われ迫力満点。
内容的にこの先Eテレなどで放送されることもあるかもしれないが、ライブシネマでの鑑賞は今この時だけのもので貴重な体験となった。
来日中の監督たちを会場に迎えての感想ではシャチの女の子が人気を集め、映画がお子さんにもしっかり伝わっている様子がうかがえて、これも感動的だった。
キネコでしか味わえない映画祭の醍醐味を今年もしっかりと受け取ったのだった。

志高い映画祭が末永く続いていくことを心から願う。関係者の方々、今年もありがとうございました。

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