新千歳2021コンペ2(オンライン)メモ

新千歳空港国際アニメーション映画祭2021のオンラインでインターナショナルコンペ2を視聴(11月12日)。
3本と本数が少ないが、他の3本はリアル会場限定(それは尊重)。
観た限りでは土居さんが志向するアニメーション・ドキュメンタリー系。
新千歳の作品は運営側のキュレーションが反映されるので、観客としてその感性にシンクロ出来ると見応えあるプログラムになる。

●『Orders』2020、29:46、スペイン、Aleix Pitarch
2004年4月にアメリカで起こった実際の事件を元にした作品。30分近い長さな上、主にセリフによる進行だが、事実を元にした異様な緊迫感に目が離せない。
警察を名乗る電話の声に操られ、常識では考えられない事柄が進行する。警察という権力をまとう声に複数の男女が操られ、性犯罪まで犯してしまう危うさ。
犯人の、自分の言う通りに人が従い取り返しのつかない事態にまで至ってしまう事による歪んだ満足感以外に直接得るものが無いにも関わらず、こうした犯罪を繰り返す心理が理解しがたい。犯人は後に逮捕されたそうだが、巻き込まれた一般男性も性犯罪者として逮捕されたそうだ。

●『Love,Dad』2021、12:00、チェコ、Diana Cam Van Nguyen
刑務所に服役中の父から15年前に届いた愛に満ちた手紙。フォトコラージュ作品。アニメーション・ドキュメンタリー的。俳優が演じているが声は作者自身。一人の女性の家庭の問題から家系や世代、文化の違いなどによるジェンダー問題が浮かび上がる。

●『The Fourth Wall』2021、9:50、イラン(配信なし)
●『La prima cosa』2021、18:40、スペイン・イスラエル(配信なし)
●『Muerte Murcielago』2021、」3:10、スペイン(配信なし)

●『Flowing Home』2020、14:25、フランス・カナダ、sandra Desmazieres
NFB制作。ベトナム戦争で離ればなれになった姉妹、妹のタオ15歳と姉のサオマイ17歳。妹は脱出してマレーシアの島の難民キャンプに、姉は両親とベトナムに残る。姉妹の手紙の遣り取りを通した一種のアニメーション・ドキュメンタリー。ベトナム戦争を通した二人の女性の人生。絵画的画面と青みのある色彩が出来事の重さを語る。
作者によると、自分自身といとこの話にインスピレーションを受けての創作。作者は1978年生まれなので生まれる前の話で、実体験ではない。物語の背景に死者がいる。姉妹の人生の一部を切り取り、それぞれの孤独感を描いた。暗い背景はベトナムに行った時の印象や記憶から。ゆっくりとした動きで夢や記憶を表現しようとしたそうだ。

●『ミート・ザ・フィルムメーカーズ』
『Orders』作者の何故こんなことが起こりうるかを感じて欲しいとの言に同調。『Love,Dad』は1人の女性の人生から浮かび上がる世代差やジェンダーの問題、『Flowing Home』はベトナム戦争で離ればなれになった姉妹を繋ぐ手紙。
どれも事実に基づく創作だそうで作者のトークが鑑賞に役立つ。

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