犬神博士-夢野久作の言葉の力

演劇をしてきて、いくつかの
驚き!
な出来事があった。

その「驚き」というのは、言葉を出したりすることに関することです。
つまりは、○○は○○である。と、認識していく段階で、子どもが大人に少しずつ大きくなっていく途中に世界を認識していく様と全くそのまま一緒のことです。

今回の犬神博士は、その驚きを大いに感じさせてくれる体験が詰まっている。
言葉を声に出すことを通して、頭の中が汗をかくような体験をする。
つまりは、物語の登場人物と同じ景色を見て、同じ行動をすることです。
主人公の犬神博士は、街にいるルンペン。乞食として登場する。その人のもとに新聞記者がお話を聞きにきた、、、という内容。
全て犬神博士の視点からの物語になっており、5歳〜7歳ころの子供時代にわからないことは、そこから時間を経た現在の犬神博士が「その当時の〜」と、説明を捕捉する。
文字で読んでいると、すなわち殆どが犬神博士の言葉、なのだけど、声に出すと、これは子どもの頃の自分が頭で考えている、これは子どもの頃の自分が○○に向かって話している、これは大人の自分が子どもの頃の自分に向かって話している、これは新聞記者に話している、これは大人の自分と子どもの自分がぴったり合致している、、、、などなどと、
さまざまな声が複数に聞こえ始めてくる。
もちろん芸どころで旅芸人として過ごしてきた犬神博士であるから、記者に話すときも表現豊かに行ったであろうから、
登場するさまざまな人々も、声色を駆使して記者に語ったことでしょう。

小説家の言葉というのは、こんなにも複数の人物の声を含ませているものか!
と、驚き続けています。

景色が浮かんでくるというのは、
たくさんの人の声が含まれているから。
たくさんの人の声が含まれているのは。、たくさんの自分が自分の中に生きていることだろう。
景色を増やしていくことは、たくさんの自分を眠りから覚まさせていくことなんだろうと思う。

犬神博士の公演は、まさしく眠っている自分に出会う旅です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?