Syrup16g -1- 『Free Throw』

日本のロックバンド・Syrup16gが、Tour 2019 【SCAM : SPAM】を開催する。また、ツアー発表と同時に、デモテープを除く全作品がサブスク解禁された。

チケットの倍率はかなり高かったようだが、運良く10月5日の恵比寿ザ・ガーデンホールが当選。友人と行けることとなった。 Syrup16g(以降、シロップと呼称)のライブを観るのは初めてだ。

好きなバンドだし好きな曲もたくさんあるが、自分の人生を狂わせるほど思い入れを強く持っているかーー例えばMr.Childrenやaiko、Coccoあたりはその域にえぐり込むレベルで達しているのだがーーというとそこまでではない。

ちなみに、ライブに同行する友人(以降、Mと呼称)は大ファン。2008年の解散ライブにも行っている。 そもそも私は学生時代にMがシロップを好きだったことで、初めてこのバンドの存在を知ったのだ。Mから貸してもらった『COPY』や『coup d'Etat』のCDを自宅で聴いたとき、あまりの衝撃に「おぉ・・・」となったのをよく覚えている。

そんなわけでシロップを聴き始めてからそれなりに月日は経っているのだけれど、イントロを聴いただけで曲名を言い当てられるほど聴き込めていないし、未聴の曲もたくさんある、いわゆる「にわか」ファンである。貴重なライブに行けることになりサブスクも解禁されたのだから、作品と1枚ずつじっくりと向き合って、感想を記していきたいと思う。


前置きが長くなってしまったが、今回は『Free Throw』について書いていきたいと思う。

『Free Throw』は1999年12月25日にリリースされた、インディーズ時代の1作目となるアルバムである。レーベルはTiNSTAR RECORDS。収録曲数は元々5曲だったが、2010年10月27日にUK PROJECTから再発された際に、3曲のボーナストラックが追加された。

本作は今までちゃんと聴いたことがなかった。MからCDを借りた記憶もないので、恐らくサブスク解禁されて初めて聴いたんだと思う。

聴いてみて、びっくりした。もうこの時点でSyrup16gが完成されてしまっている。 優れたアーティストは処女作の時点で一貫したオリジナリティを持っているものだが、シロップもその中の1バンドであったのか。現在までに通じる陰鬱さと美しさと儚さ激しさは積み重ねたブランディングで成立されたものではなく、五十嵐の感性から滲み出たものなのだとわかる。 音質はそんな良くないはずなのに、バンドアンサンブルはパワフルで、迫力満点だ。

曲調は以降の作品よりも増し増しで「ニュー・ウェイヴ」してる。The Police、The Smithsからの影響は有名だが、恐らくThe CureやSuzanne Vegaあたりにも影響受けていたのではないだろうか。上記アーティストが好きな人に向けて露骨に、しっかりとツボをつく内容となっている。また、BARBEE BOYSなどの影響から、歌謡的な要素があることでシロップのオリジナリティだが、その要素も本作の時点でバッチリ完成されている。

以下、特に気に入った曲について記していきたいと思う。

代表曲。音質は悪く、リハスタで1発録りか?と思わせるが、そこが良い。ボーカルの音量が小さいのが言霊のようで、よりいっそう、この曲に悲しさをもたらしている。名曲です。

最初「なんじゃこりゃ?」と思ったんだけど、妙にクセになる。曲名にしてもカントリー調なアレンジにしても、以降の作品にはあまり見られない雰囲気。曲調は明るいはずなのに、シロップが演奏するとなぜか暗くなってしまう笑 これ、ライブで聴いてみたいな。

ボーナストラックの曲はどれも良いが、これはダントツで好きかな。『OK Computer』以降のRadioheadを感じさせるアレンジが見事にマッチしている。ベースだけでご飯3杯はいける。

歌詞についてはもう少し読み込んでから追記できればしていきたい。

とにかく、1作目とは思えないその完成度の高さに驚く。どうやらライブで定番の曲も多く収録されているようなので、これからシロップを聴く方は、このアルバムから時系列順に聴いていくことをオススメしたい。