メリカ不動産投資開始:初手ハウスハック

年末年始にアメリカで家を買ったので備忘録として考えていたこと、実際に起こったことなど記録しておこうと思う。


なぜアメリカ不動産投資を始めようと考えたのか

自分は現在メリカのテック業界で働いており、同僚でも不動産投資している人たちがわんさかいるし、他の節税手段※はあらかた満額投資してたのでDiversificationの意味も込めて上記に加え他に節税+投資できるメリカ不動産を始めようと考えた。

※他の節税手段に関しては以下のツイートにまとまっている。

アメリカの不動産について色々と勉強したところ(この数ヶ月で20冊ほど読んだ)どうやら節税方法としては自分のパートナーがReal Estate Professional Status (REPS)になるかShort Term Rental (STR)で100時間以上従事できればパートナーと一緒にTax filingする際に一方のW2税に家の減価償却を適応できるらしい。メリカのテック業界で高い税金を払っている自分としてはこれはとても魅力的に思えた。ただ後ほど具体例を示すがこれは実際に自分でCPAやCostSeg会社と数字の裏を取ってみると思っていたほど利益は少ないということに気づいた。REPSのステータスを取るのも意外と難しく少なくとも不動産投資を始めたばかりの1−2件程度しか物件がない場合はステータスを取れないというのも新たな発見だった。

なぜハウスハックという戦略なのか

アメリカにおける不動産投資の戦略は思ったよりも多種多様で様々な方法でお金儲けが出来るという点は非常に面白い。全体像に関しては後ほど紹介する参考文献を見て欲しい。

自分たちの場合はマルチファミリーの「ハウスハック」という戦略を初手として選んだ。ハウスハックという手法自体は簡単に言えば家を買って自分(もしくは自分たち)が一つの部屋や階に住み、他の空いている部屋や階をテナントに貸し出してMortgageをRentで相殺するという方法だ。マルチファミリーにおけるハウスハックなら完全に生活空間が分かれた状態でハウスハックできる。なのでプライバシーを犠牲にする必要がない。ぜひマルチファミリーとかで検索してみて欲しい。入口が完全に分かれた2世帯住宅(壁のみ共有など)が見つかると思うが、これの1世帯に自分たちが住み、もう1世帯をテナントに貸し出すという感じだ。

ハウスハックの利点としては自分たちが住む場所の確保が出来るだけでなく、MortgageをRentで相殺できること(場所によってはいくらか担保してもらう状態から、Rentだけで利益をあげることも可能)、ローンを組む際にPrimary residenceローンを組めるのでダウンペイメントを少なくすることが出来るという点が挙げられる。アメリカ不動産においては比較的リスクをコントロールした上でレバレッジをかけられるという点は利点なので、投資家としてこのレバレッジを最大化したい自分にとってはこの戦略が最良だった。

物件を探す前の絞り込み条件の決定

マルチファミリーのハウスハックという戦略はあくまでどのような不動産投資方法をするかという自分たちの方針であり、他に外的要因である物件を買う地域や場所の決定、物件の値段のレンジ、物件の状態、どういう利益をあげる(あげる可能性がある)のか、などをあらかじめ設定しておく必要がある。

これらはなぜ重要なのかというと物件はたくさんあるので絞り込む必要があるからだ。実際にやってみて気づいたのだが不動産を購入するプロセスは非常に遅い上に労力を必要とする。条件をちゃんと設定して自分が狙う物件をピンポイントで狙っていかないとすぐに他の人たちに買われてしまうという機会的損失も大きい。

自分の場合

  • 2〜4世帯のマルチファミリー(これはResidentialと呼ばれ5世帯以上になるとローンのタイプが変わってしまうため)

  • 場所はシアトル近郊かつ週に3回出社しないといけないため出勤コースや時間の考慮

  • 物件のレンジは$600k〜$1.2M(ローンの査定の際にMAX額を教えてもらえるのでMAXあたりは決めやすいのだが、問題は下限。さっきも書いた通り物件を一件買う時間的・労力的コストは非常に高いのでこの下限を下げすぎて安い物件をたくさん買うというのはあまりお勧めされないらしい)

  • 物件の状態としては完全にフルリモデルが必要なFixer upperは厳しいが、手垢がついて汚い物件は他の人たちが欲しがらないので大歓迎。逆に誰もが欲しがるTurn keyみたいなちゃんとステージングされていて綺麗な物件はプレミアムがついて投資妙味がないのでパス

  • 学区に関しても学区が最高レベルに高い場所はプレミアムがついていて投資妙味が薄い。かといって学区が最低レベルな地域は治安も悪いのでパス。結果ミドルクラスの場所。

実際に物件を数字分析し始めた秋

夏の終わり頃にワシントン州に引っ越してきて最初はバタバタしていたので実際に物件を数字分析し始めたのは秋頃。この頃から本格的に不動産投資向けの本も読み漁り始めた。あとみんなにお勧めしたいのは自分のように大きな会社で働いている場合、社内に不動産投資コミュニティがあったりしてなんでも相談できるし不動産投資仲間を作れたりするのでお勧めしたい。実際自分のリアルターはうちの元社員でうちで数年ソフトウェアエンジニアをしていて不動産にのめり込みほぼFIREした人だった。

マルチファミリー向け物件においてはいろんな物件を比較する数字分析の手法としてNet Operating Income (NOI)やCap rateなどがあるので、現在のNOIやリノベーション後に到達できそうなNOI、その地域のCap rateなどから物件のFair valueなどを計算したりしながらリアルターとあれこれやりとりしながら物件の見方を学んで行った。この時点ではまだオファーを出すというより不動産投資としての物件の見方をDiscussionを通じて、また本やポッドキャストやセミナーやSNSや会社のコミュニティなどから学んでいた段階だった。

チャンスの冬:ホリデーシーズンは狙い目

どの本に書いてあったか忘れたがホリデーシーズンはオファーを出す時期としては狙い目らしい。これは他の投資家や家を買う人たちが休む時期で必然的に競合が減るからだ。年末に1日も休みを取らないくせに他の人たちが働いているシーズンにがっつり休みを取るようなあまのじゃくタイプの自分としてはピッタリの時期だ。またシアトルに限って言えばこのシーズンは天気も悪く、物件の最悪の状態を確認するのに非常に適していた。(例:雨漏りのチェックなど)

時はクリスマス。運良く自分の絞り込み条件に非常にマッチする物件に出会う。どんな物件に出会えるかはほんと運で、いくら自分の条件を完璧に設定してもこの運の要素だけは無視できない。ホリデーシーズンもあり、競合も数人しかいない状態でたった$5k想定金額に上乗せするだけで勝てると助言してくれたリアルターは本当にファインプレー。

この物件実はMotivated sellerという物件をどうしても売りたい売主の物件だったのだが、こういう売主の物件は投資妙味がある。基本的に不動産の売買は交渉の余地があるので売り手が非常に売りたいモチベーションがあると買い手としては良い値段や条件で買うことが出来るからだ。Motivated sellerの探し方はとある本に詳しく書いてあったので後ほど紹介しようと思う(忘れてなければ)。

あとは自分、普段結構アクティブに株取引をしているのだがFEDや経済の動向を追っていて金利のピークが見えた(ここからしばらくは下がっていくのみと判断)のもこの時期にオファーに踏み切った理由の一つ。

開けてびっくりパンドラの箱ことインスペクションレポート

売り手がいくつかあるオファーの中で一組の買い手のオファーをアクセプトすると晴れてUndercontractという状態になる。これは買い手と売り手が契約状態に入り、これから実際に物件の売買を終える(契約がなしにならない限り)まで色々交渉する良い機会でもある。

大抵買い手が最初に行うのがHome inspectionといって家の状態を実際
に観察して現状の家の状態を詳細に調べてレポートにまとめるというものだ。このレポートによって買い手が見ただけではわからなかった大きな問題が発見された場合は、Inspection contingencyをオファーに含めていた場合かつその期間中に限り、いつでも契約を破棄できる。

自分の場合、もともとまあまあ汚い物件を探していたのもあり、まだテナントも住んでいた(しかも結構、まあ・・・なんというか控えめに言ってゴミ屋敷)のもあっていろんな問題が見つかった。勉強していた本やコミュニティによるとたくさん問題が見つかるのはよくあることらしく身構えていたが、実際に具体的な問題が何十ページもつらなっていると手を引きたくなる気持ちもわかる。ただここで役に立ったのがまた先人の知恵で、例えば誰もが鼻を覆うような臭い匂いなどはむしろ競争相手がいなくなるし、物件の価値もその分のプレミアムがないので狙い目だとか、禿げたペンキや壊れたライトなど、他の人が嫌がるが投資家としては簡単に直せる金の匂いがする項目などはレポートに実際にあらわれて心が躍った。

ただそうは言ってもやはり大きな問題というものは見つかるもので、ここで不動産投資初心者としては問題の深刻さがわからないのである。この問題は直せる問題なのか。直せるとしたらどれぐらいの金額がかかるのか。リアルターはもちろんリアルターの意見をくれたのだが、基本的に人は誰しも間違えるしデータを集めたがるのは研究者の性格。ここで知り合いや社内のコミュニティや同僚、Bigger pocketsなどには本当にお世話になった。コントラクターたちにも来てもらいたくさん集まったデータで問題の深刻さや必要なコストを理解した。

さて、ここで手を引かなかった場合売り手と交渉に移ることが出来る。「なあなあ、こない大きな問題見つかってん。いくらかまからんか?」とインスペクションレポートやコントラクターのQuoteを元に物件の値段やSeller's creditと呼ばれる売り手がくれるお金みたいなものを交渉するのである。ここら辺で売り手がMotivated sellerか否かが非常に効いてくる。こういう売り手は多少の損は被っても早く売りたいので買い手としては強気に交渉できるのである。ただここで新たに知らなかったことが出てきた。自分の場合はレバレッジを最大限かけるためにダウンペイメント5%でオファーしていたのだが、Seller's creditにはダウンペイメントに対しての上限があり、5%のダウンペイメントの場合、物件の値段の3%までしかクレジットがもらえないのである。今回の交渉ではこのMAX3%をもらい、なおかつ物件の値段も下げてもらいさらに良い条件になった。

物件にすでにいるテナント問題

インスペクションも終わり、その交渉も終わり、ここからは基本的にクロージングするまでローンの審査や物件の価値を査定するAppraisalなどがあり、多少凪の状態になるのだが、自分たちの場合ハウスハックするために物件にいるテナントたちに出て行ってもらう必要があった。ここら辺はほんと千差万別で、完全に投資用物件として買う人はテナントを引き継ぐこともあるし、出ていくまでクロージングしないと契約に書く人もいる。いろんな人に話を聞けば聞くほど契約には驚くほど色んな条項があるんだなと学ぶ。

今回の自分たちのケースでも契約にテナントたちにみんな出て行ってもらわないとクローズしないという条件を含めたのでテナントたちが設定した期間までにちゃんと出て行ってもらえるかどうかは悩みの種だった。物件自体も結構傷んでいたので、ちゃんと誰もいない状態になってから全体をリノベーションする必要があった。幸い、テナントたちは時間通りにちゃんと出て行ってくれ、とあるテナントさんはフレンドリーに物件から近所から色んなことについて教えてくれた。

物件が綺麗になったところで再度細部を確認し、Final walkthroughと言われるクロージングする直前の最終確認を終え、クロージングだ。クロージングまで漕ぎつければ特にここで書くことはなく、大量の書類にサインして、Utility billのTransferとかロックを変えたりしてリノベーションを開始するだけだ。

結局いくらかかるのよ

仮に家の値段が$1Mだったとしよう。5%ダウンペイメント払うのでダウンペイメント自体が$50kでオファーを出す時のEarnest moneyと呼ばれる人質ならぬ金質がここら辺だとほぼこの5%と同じぐらい。ここら辺はほんと地域によってルールが違うらしい。契約破棄の際には返ってくるし、クロージングするならそのままダウンペイメントに使われる。ローンのクロージングコストはだいたい物件の1-2%を見積もっておけば良いらしい。これも地域性あり。自分は金利のピーク近くでローンを組んだのでMortgageは6%前半で固定。ここら辺はダウンペイメントをたくさん積んだりRate paydownとか言って余計にお金払えばかなり下げられるが、自分はもう金利のピークだと判断したのでレバレッジを最大限かけたかった、かつ金利下がった時にRefinanceする予定なのでこの状態でロックした。あとは貸し手によってはMortgageの月々の支払い(ここでの支払いはPITIとよってPrincipal + Interest + Tax + Insurance全部ひっくるめて)✖️数ヶ月から半年分の現金も確保して証明を見せる必要がある。ここまででだいたい物件の8-10%ぐらい必要。

ここからリノベーションに金がかかる。こればっかりは物件によってまちまちなので本を色々読んでも地域性もあって一概には言いづらいが、軽いリノベーション(ペンキ塗ったり、ちょっとHandymanになおしてもらったり)程度なら物件の5%以下。コントラクターを雇う必要がある中程度のリノベなら10%以下、Fixer upperみたいにコントラクターたち複数雇って一気に色々直してもらってStagingもして、みたいな感じだと20%かそれ以上かかることもあるらしい。だから物件を買う際には物件のコンディションによってBudgetを変えないといけない。

いくら儲かるのか。税金セーブできるのか。

メリカ不動産におけるお金の儲け方は大別して4つあり、以下のYoutubeで詳しく紹介されている。

シアトル近辺においてCash flowを最初から手に入れることは非常に難しく、自分たちも基本的には他の3つの儲け方を目指していずれCash flowを手に入れられればと考えている。

先ほどの具体例で言うと、仮に物件の値段が$1Mだとして、Mortgage(PITI)が金利6.5%でダウン5%で月々の支払いがざっくり$8kだ。これにはUtilityとかCapexとかは含まれていない。ざっくりそれらを含めて月々の支払いが$10kだと仮定しよう。シアトル、特にダウンタウンにおける2B1BのRentはだいたい$2.5kなので、これがDuplexなら自分たち以外には1ユニットしかないので収支は$2.5k-10k=-7.5kだし、自分たちが出て行った後は✖️2しても5kのマイナス。ただRentは毎年上昇していくのに対しMortgateは変わらないのでいずれはプラスになる。その年数が長すぎると微妙なので投資としては数年以内にプラスになるような物件を選んで良い値段で買えということである。ただマルチファミリーは掛け算が効くのでCash flowはしやすい。例えば物件の値段が1Mのままで4plexに住んでその後出て行ったあとは2.5k✖️4ユニットの収入が見込めるわけだ。

AppreciationやLoan paydownはここでは割愛。自分で色々趣味レーションしてみてほしい。Webで検索すれば大抵の検索ツールはある。

最後に税金の減らし方なのだが、これこそが自分たちの大きな目的の一つだった。ただCPAや色々な人に話して算出してみると物件1個ではあまり旨味はないというのが正直なところ。ましてやよくTiktokとかYoutubeで「税金ゼロ!不動産投資最高!」を謳っている人たちがいるが、それらのケースは特殊であるか、収入がそれほどないということに気づくだろう。

例えば自分たちW2ワーカーで大手テック業界に働いている場合、どういう計算になるかお見せしよう。物件の値段はさっきと同じ仮定で$1M、年収は$500kだと仮定しよう。まず大前提として物件の減価償却をW2の税金に適応するためにはパートナーと一緒にTax filingする際にREPSかSTRをやっている必要がある点については話した。この前提の元に最大限減価償却を得るためにCost segregationというものを行う必要がある。これは通常物件(土地の値段を除いたもの)を27.5年で減価償却するところを、物件のパーツごとに分けて5, 7, 15, 27.5年で減価償却するという方法だ。当然5年で減価償却できるパーツは27.5年で割るより分母が小さいので額が大きくなる。それらをすべて足し合わせて、これにBonus depreciationをかけあわせ初年度に大きく減価償却するのだが、実際にその額を計算するとわりとしょぼいというのは新たな発見だった。

1Mの物件がDuplexで簡単のために二つのユニットは同じSqftだと仮定するとまず減価償却に使えるのは50%になる。Rental propertyとして使っているユニットは1個だからだ。ここからさらに土地の値段を引く。シアトル周辺の土地の値段は結構高いのでここでさらに20%程度引かれる。この時点で400kだ。ここでCost segregationとBonus depreciation (2024年は60%)を適用すると(詳細は省く)だいたい保守的に見積もって初年度は100k減価償却できる。結果的にこの例での税金セーブでの儲けはだいたい$30k程度になる。

ただ色々シュミレーションしてどんどん物件の数が増えるともちろん効果は大きくなる。例えば上記の例ではDuplexで50%適用だったがこれがTriplexとかなら66%だし、SFHで完全に投資用物件なら100%だ。ここらへんはネットや本を漁ってもあまり具体的な数字が書かれていることがなく、どの程度の数字が見込めるのかを把握することが難しかった。上記の一例が読者の参考になれば幸いである。

最後に

メリカで不動産投資を始めるにあたって、ソーシャルネットワークの重要性を再度認識した。今回クリスマスも年末年始も返上して色々動いてくれたリアルターやローンオフィサーには本当に感謝してもしきれないし、ハンディマンやコントラクター達、すでに不動産投資をしている先輩方、知り合い、友人、社内のコミュニティや同僚、そして最初から最後まで一緒に走り切った最愛の妻。誰一人かけてもここまでたどり着くことはできなかった。成功報酬故、金銭的に報酬を対価として渡すことができなかった方も大勢いるし(特に色々現地に査定に来てもらった方々)それは心苦しいのだが、いずれ違う機会や形でちゃんと返していきたいと思う。

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