フリー台本『ターニング・ポイント』

声劇用の台本です。ショートストーリー。二人芝居です。練習用にどうぞ。配信等で使われる場合はご一報ください。

登場人物
・進藤晃一 →サラリーマン。日々の残業に追い詰められている
・ジョン →タイから出稼ぎに来ている外国人労働者



       公園(夜中)

   晃一、鞄を持ち、ふらふらになりながらベンチに座る

晃一「もう限界だ……これ以上、あの会社にいたら身も心もダメになってしまう。あんな会社、もう辞めてやる」

   ワンカップ酒を片手に若い外国人がふらふらと歩いてくる

ジョン「オー?誰デスカー。オトナリ、ヨロシイデス?」
晃一「深夜の公園に……外国人の酔っ払いか。絡まれるなんて最悪だ」
ジョン「お兄サン、お酒イル?もう一本、あるよ」
晃一「いえ、いいです」
ジョン「イイ?じゃドウゾー」
晃一「いや、いいっていうのは……まあいいや、せっかくだし、頂きます」
ジョン「オ兄さん名前ハ?」
晃一「…進藤晃一」
ジョン「こーいち!覚えマシタ!ワタシ、ジョン」
晃一「昔飼ってた犬の名前がジョンだったな…」
ジョン「ナニ?ジョンダッタ?」
晃一「いや、何でもない。……ああ、胃が痛い」
ジョン「こーいち具合ワルイ?ハラキリ?」
晃一「ハラ…キリ…?…ああ、もしかしてハライタのこと?」
ジョン「そうそれ。ハライタならびよういん行くといいよ」
晃一「……ああ、もうほっといて欲しいなあ!腹も痛くないし美容院はいかないよ!」
ジョン「ゴメンね。ワタシニホンゴ覚えワルイだから、イツモ職場のみんなに殴られるヨ。そんな時は、コウやってヤケザケ」
晃一「いや……それって大丈夫なのか……?」
ジョン「ハハハいつものコトヨ。それよりもオカネ稼ぐの大事。タイにいるアタマイイ妹、ニホンの大学に行かせる為に働く。兄ノ仕事」
晃一「そうか。あんたはすごいな。……俺は何のために働いてるんだろう」
ジョン「コーイチカゾクイル?そのために働く?」
晃一「ああ。嫁と子供がいるよ。家族の為に毎日会社でボロボロになりながら働いてる。残業ばっかりで、帰ってもみんな寝てるよ……あーあ、俺の居場所はどこなんだろうなー」
ジョン「コーイチ家族イル、仕事アル、全部もってるヨ」
晃一「…そうかもしれないな。全部持ってる……そう考えたらそうだよな」
ジョン「…アア、モシカシテ、こーいちヤリタイコトがアル?」
晃一「やりたいことは……ある。俺の夢は……いや、恥ずかしいな」
ジョン「ハズカシイ?悪い夢?」
晃一「いや。悪い夢じゃない。叶わない夢だけどな。俺は動物が大好きなんだ。だから動物園で働くのがずっと夢だったんだ……いつも動物達の為に働けたら本望だよ……でも、現実を考えたら資格もいるだろうし、ここら辺は求人も少ないし……」
ジョン「なんだ、イイワケやめて、働いたらいいじゃナイ…ウェエ、目がマワル…」
晃一「おい、大丈夫か?随分酒の臭いが……顔色も悪そうだな……待ってろ、そこのコンビニで水買ってきてやる」

   晃一、コンビニで色々買って帰ってくる

ジョン「うー、気持ち悪い…」
晃一「ほら、しじみの味噌汁だ、ゆっくり飲めよ。日本じゃ飲み過ぎたらこれなんだ。水とオレンジジュースもあるから」
ジョン「こーいち優しい、ありがたき幸せ」
晃一「どこで覚えたんだそんな言葉……」
ジョン「こーいち世話じょーず。動物園向いてる。そうダ、ワタシこーいちにお礼する」
晃一「いや、いいってこれくらい」
ジョン「ちょっとマッテ、メールする。……OK。社員ですぐ働けるヨ。最初研修あるケドネ大丈夫ヨネ?」
晃一「へ?何が?」
ジョン「知り合いの動物園、来月カラ来てって言う」
晃一「へぇー。すごい。その動物園って、何処なの?通えるくらい近いといいんだけど」
ジョン「ナニ言ってる?タイの動物園よ」
晃一「タイ?む、無理無理無理だ!家族もいるし」
ジョン「家族ミンナで住める家あるヨ」
晃一「いやいや待ってくれ!家族が賛成するかどうかも分からないんだよ……色々してくれたのに悪いけど、この話は無しに…」
ジョン「コウイチ夢捨てる?また辛い仕事モドル?マタボロボロ?夢のチャンスイマココよ!逃げるコト違う!」
晃一「そう…だな…チャンスだよな…この歳になってチャンスがやってきたのか……嫁には怒られるかもしれないけど……いや、もう言い訳はやめる!ジョン、俺、そこで頑張ってみる!チャンスをくれてありがとう!」
ジョン「イイってモンよ〜。一宿一飯の礼よ〜」
晃一「……泊めないからな」




・短いシーンですが、ジョンと関わる中で、晃一の心の変化が見られると嬉しいなと思います。
・今回SEは書いてありませんが、入れてもいいと思います。




日々陰で働く方々と、家族の為に日本に出稼ぎにきて奮闘していた青年へ、似たような境遇で奮闘している皆さんへ感謝と応援を込めて


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