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私の腎移植体験記  4

〈入院及び腎移植手術〉


この話の核心です。
検査入院、手術、術後の入院治療、退院と続きます。
実際には手術の1週間前から入院して、手術を受け、その後2週間位で退院になります。
入院している期間は全部で3週間くらいでした。
ドナーの方は検査入院から退院まで4~5日くらいくらいです。

1.入院

(1)入院前説明

病院で入院、手術についての説明があります。
なお、私はこれだけ長く糖尿病、高血圧、腎不全と戦っていますが、幸いに今まで一度も入院も、手術もしたことがなく、今回の入院と手術は私にとっては、全てが初めての経験でした。

(2)入院

そして、入院です。
手術の1週間前です。
最初にPCR検査を受けました。
入院しても、この時点では身体は自由に動きます。
ただ、いろいろな検査を毎日行わなければなりませんし、なかでも次に話します「透析」は、私には大変な経験でした。


2.透析


(1)手術前透析の準備

身体の毒素を全部抜くために透析を受けますが、私はそれまで透析の導入をしていませんでしたから、シャントもありません。
この場合、シャントの手術をすることはなく、首にステントを挿し込んで透析を受けることになりました。

ある意味今回の一連の手術や治療の中で、一番痛くて、怖かったのは、このステントを首へ挿し込むときでした。局所麻酔は打っていたと思いますが、自分の首に長いステントがぐいぐいと挿し込まるのは、相当に怖かったです。ベッドに横たわり後ろからステントを挿し込まれるのですが、自分から見えませんので、首の中へ、それが入って行く感覚はとても嫌なものでした。

(2)透析

合計で4回の透析を受けました。
1回につき3~4時間程度で。ほぼ毎日でした。
私は透析そのものは初めての経験でしたが、なるほど3~4時間ベッドに横たわったままというのは、なかなか大変だと思いました。
本当は眠れるなら、それが一番いいのいいのですが、この頃には、免疫抑制剤を大量に服用開始していますから、眠ることはできません、ただじっとしていただけです。


3.手術、集中治療室


(1)手術

手術そのものは麻酔で全く覚えていません。
術後はもっと手術跡が痛いのかと思っていましたが、そんなことはありませんでした。それ以上に後述するあれやこれやで痛みどころではなかったのかもしれません。
手術痕は、後になって見た時は25センチ位の長さ、おへその下あたりから、右へ大きくカープして恥骨のあたりまででした。
それを見た第一印象は、手術痕って随分と大きいな、と思いました。
じっとしている分には平気ですが、笑ったりすると、かなり痛いです。
そして、知りませんでしたが、今は抜糸等はありません。糸は自然に溶けるものを使っているのだそうです。


(2)集中治療室

手術は6~7時間くらいでした。
ドナーはそれより早く終わります。
私は全身麻酔で次に目が覚めた時にはもう終わっていたという感じです。

集中治療室で目が覚めたのですが、その時に首には相変わらずステントが刺さっていて、点滴がそこから入れられていました。
それとは別に腕からも点滴が入れられていました。
お腹には廃液を出すためのドレーンが刺さり、その先に袋がつながっています。
あと尿管にもカテーテルが刺さっていて、そこから排尿の袋がつながっています。
胸の周りには心電図を測る丸いものが4つほどつけられています。
さらに、指には脈拍と酸素濃度を計るものが付けられていました。
身体中にいろんなものがつけられていますから、意識はあるのですが。全く身動きのできない状態でした。
脈拍や血圧は相当に高いらしく、つながれている機械が一日中、夜中も常に注意音を鳴らし続けていました。

最初の二日間は、ステロイドの影響か、全く一睡もできませんでした。
さすがに二日間眠れないのは辛いので、医師に頼んで睡眠薬を処方してもらいました。
そのおかげで、三日目と四日目は1~2時間くらいは眠れたと思います。
三日目にベッドの脇に立って体重計に乗ったのですが、この時は、立つのが結構大変でした。寝ている間にどんどん筋力が無くなっています。

集中治療室の4日間はかなりつらいものでした。
4日も身動きができない状態で寝ていると、だんだん背中や腰のあたりも痛くなってきます。
そこで少しでもやわらげようと、身体をひねって、できる範囲で横を向いたりしていました。
不眠、血圧の高さや脈拍の早さ等、やはりある程度の体力がないと耐えられないと思いました。年齢的には私はここら辺が限界だったな、と思います。

なお、集中治療室でも、食事は出されますが、三日目にデザートの果物を少し食べ、四日目に主食とおかずを少し口にしたくらいです。水は最初は看護師に飲ませてもらいましたが、途中からは自分で枕もとに置いて、手を伸ばして飲んでいました。



4.一般病棟

5日目に一般病棟へ移ります。

(1)免疫抑制剤


免疫抑制剤は3種類を服用していました。
最初は大量に服用していますから、その副反応もかなりきつかったと思います。薬はそれ以外にも前から常用している薬が5種類ほどありました。

(2)副反応


副反応は人により違うと思いますが、私の場合は、何よりも不眠症でした。
これについては睡眠薬を処方してもらって服用していましたが、それでも入院中の睡眠時間は1~2時間くらいでした。

人によっては手が震えたりするとのことでしたが、それはありませんでした。

それから、私は免疫抑制剤の影響で血糖値が異常に高くなっていましたので、一日2回から3回インシュリンを打ってもらっていました。
元々私は糖尿病で以前はインシュリンを打っていた時期もありましたが、腎不全のための食事療法を続けたことにより、この11年間はインシュリンを打たずに血糖値はほぼ正常値に近いところに収まっていました。
ここで免疫抑制剤の影響により再度インシュリンの生活に戻りました。

血圧は一般病棟に戻ったあたりから少しずつ下がり始めましたが、脈拍は依然として90以上と高い状態でした。
体重はあっと言う間に手術前より10キロ近く減りました。

(3)他の症状


一般病棟に戻って主治医からは水をたくさん飲むように、と指示されていましたので、ペットボトルを大量に買い込みました。

ここで、主治医からは事前に注意されていましたが、集中治療室にいる間に膀胱も小さくなっており、それに反して、今まで機能していなかった腎機能が、新しい腎臓で働き始めていますので、水を飲んだすぐ後からトイレに駆け込むことになります。全く身体の中に尿を貯めておけません。
さらに、この尿については、コップに出して、ビニールの袋に溜めていかなけばなりません。どれくらい水を飲んで、どれくらい尿が出てるか測るためです。
合わせて飲んでいる水の量も午前、お昼、午後、夕方と紙に記入して行きます。

今まで腎機能が働いていないときは、昼間は水を飲んでもあまりトイレに行くことはなく、ほとんどは夜寝て、身体が横になってから、やっと出てくるという感じでした。

このお小水の回数というのが、半端ではありません。一日に2リットルの水を飲んでいることもありますが、だいたい一日に50回くらいは行っていたと思います。嫌になるほどトイレに行かないといけません。
身体はほとんどざるみたいなもので、飲んだ水は全く留まりません。
ここで病室を個室にしておいて良かったと思いました。
歩いて外のトイレまで、毎回行くのは私は大変だと思います。

一般病棟へ移ってから、4~5日で、首のステントや腹部のドレーン、尿管のカテーテル等を一つずつ抜いていきます。
一番痛かったのは、私は尿管のカテーテルを抜くときでした。

5.退院


入院して、3週間経ち、退院となります。
相変わらず、不眠症は続き、血糖値も高いですが、徐々に歩ける距離も長くなりました。
ここまでで一番驚いたのは、20年以上続いていた高血圧が、嘘のように正常値になったことです。限度一杯まで飲んでいた降圧剤もほとんど飲んでいません。
これは本当に驚きでした。
ちゃんと移植した腎臓が動いているんだな、と実感できます。
頻尿についてはまだ治っていませんでしたが、医師の話では、徐々に元に戻るとのことでした。

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