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私の腎移植体験記  1

〈腎移植手術に至るまで〉


1.それまでの経緯


私は約1年前に腎移植の手術を受けました。
手術を受ける前、受けた後、いろいろな手続きがあり、初めてのことで分からないことだらけでした。
これから腎移植を考えられる方の参考になればと思い、私の腎移植手術の体験をお話しさせていただきます。


まず、初めに腎移植手術の決断に至るまでの話です。
それまでの私は腎不全と指摘されて15年、その前に糖尿病の治療が始まっていますので、そこからはすでに18年以上経過して、血管も内臓もボロボロの状態でした。本来ならもっと早くに人工透析なり、移植なりに移るところでしょうが、腎不全が悪化して最初に人工透析の話が出た13年前には、ネットで調べると糖尿病性腎症の透析後の余命は5年と出ていました。
そこで、透析を遅らせるために、当時東京でただお一人、人工透析を遅らせる治療をされていた先生(その先生は6年まえにお亡くなりになりました)を訪ねて、特別な食事療法を始めました。詳しくは、「人工透析を遅らせるための食事療法」をご覧ください。

そして、食事療法を始めて11年が経過し、クレアチニンが5を超える頃から、上昇スピードが上がり、他の数値も悪化し、体調的にも悪化してきた自覚がありましたので、主治医に相談しました。
それ以前にも、主治医には「最終的にどうするか」何度かお話しさせていただいていました。その頃は、最終的には「人工透析」か「腹膜透析」かということで、主治医からは「できれば『腹膜透析』にして欲しい」というお話でした。
ところが、いよいよとなり、私が再び透析の話を始めたところ、主治医からは「透析よりは移植を考えてはどうですか?」と初めて腎移植の話が出て来ました。


2.腎移植手術を受ける悩み


それまで、私も何度か腎移植のことを考えたことはありますが、やはり、人から(私の場合は移植してもらうとすれば妻から)腎臓をもらうというのは、その相手のことを考えると自分からはなかなか言い出せませんし、気が進みませんでした。何しろ自分は移植で助かるかもしれませんが、相手の寿命を縮める話です。そのうえ腎臓を提供する妻は健康なのに、手術して危険と痛みを伴いますからから、互いに簡単には納得できませんし、妻にも申し訳なさすぎて話せませんでした。


しかし、主治医は「あなたの場合は、元々糖尿病がかなり進んでいますから、このまま透析に行くとかなりの確率で一気にダメになる可能性が高い。これまでも同じような人で、透析へ行って一気にガクンと腎機能が落ちてダメになった人がいる。残った腎機能が透析で一気に悪くなる場合があります。あなたもそうなる可能性が高いので、私としては奥さんが納得してもらえるなら『腎移植』をお勧めするし、考えてほしい」というお話でした。

当然移植はドナーが誰でもできるわけではありません。
ドナーに持病がある場合など、移植できない場合もあります(別途検査のところでまたお話します)。

その病院では私は、年1回、CTも撮ってもらっていましたから、私の動脈は「動脈硬化」がかなり進んでいて、ほとんど石灰化していることが分かっていました。

そこで妻とも話し合い、他に手段がないのであれば、腎移植を考えても良いという話になりました。

腎移植手術については、多分私の腎不全の治療を開始した頃に比べると、その手術件数も桁違いに多くなっていますし、免疫抑制剤等の薬も改善されているようです。
腎移植後の5年生存率も昔と比べてかなり上がっているようでした。



3.腎移植後の問題


もちろん、腎移植された方の話を読むと、いい事ばかりではなく、例えば、術後は、一生涯免疫抑制剤を飲み続けることになります。
自分以外の人の臓器が身体に入りますから、そのままだと自分の免疫力が一斉にその臓器を攻撃して死なせてしまいます。その免疫力を弱めるために「免疫抑制剤」を飲み続けることになるわけです。

当時は、ちょうどコロナが流行し始めていましたから、手術担当の先生からは、この免疫抑制剤の影響により、当然コロナウィルスをはじめ感染症にはかかりやすくなるので気を付けることになると注意を受けました。
腎移植手術予定の方の中には、コロナのこともあって中止や延期を考えた方もいらっしゃったようです。


また、コロナが急拡大した時にはベッドを開けるために、腎移植手術やがんの手術もしばらく延期させられたようです。
なお、コロナとは関係なく、元々移植後のレシピエント(腎臓の提供を受ける人)の死因の一位は感染症だそうです。


さらに、免疫抑制剤は強力ですからその副反応もあります。
手術を受けた人の中には副反応やあるいは適合が上手くいかずに苦しんでいる人もいるとのことでした。
この副反応については術後のところで詳しくお話します。

それらも考慮したうえで、なお自分が生き残るためには、他にもう選択肢は残っていないと考え、手術について前向きに考えることにしました。

妻とも話し合い、了解してもらって、主治医に腎移植について積極的に考えたいと話して、二つほどお勧めの病院を紹介されました。


4.腎移植手術の専門の病院探し


主治医の話では、
「腎移植は手術も大変だけど、むしろ一番大切なのは術後の治療です。したがって、病院の中のチームワークが良くて多方面に渡って、細かく面倒を見てくれるところが良い。できれば大学病院のような縦割りのところは避けた方が良い」とのお話でした。

そこで、まず一つ目の病院へ紹介状を書いてもらい、お話しを聞きに行きました。そこは腎移植の手術件数も多く、丁寧な対応で、申し分なかったのですが、実際にその病院を訪ねてみて、私の家からあまりにも距離が遠すぎたため、あきらめました。
主治医の話にもありましたが、術後が大変とのことでしたので、術後頻繁に病院へ通うのであれば、家から近い方が良いと判断し、もう一つの病院へ行くことになりました。
結果的に、この判断は正しかったと手術後に思いました。

家から距離の近い病院では、腎内科の先生、そして移植外科の先生とお会いして、いろいろなお話を伺い、移植するのであればまず手術の予定を決めておかなければと言われ、最初そこで手術の予定をまず立てたのですが、こちらの都合とその後のコロナの蔓延もあり結局1年後の予定となりました。
手術の予定が立ったことで、ここから手術に向けて様々な検査と手続きが必要になって来ます。次回はそのお話をさせていただきます。
なお、手術費用については、すでに人工透析を受けている方はほとんど問題ないと思いますが、私のように透析をせずに手術を受ける場合、手続きがいろいろと必要です。これについては、手続きのところでお話します。

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