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私の腎移植体験記  2

〈手術前検査について〉


手術の日程が決まると次々と検査を受けます。
人によってその検査の内容も少し違うところもあるかと思いますが、私の場合の話をします。検査は「ドナー」(提供する側)と「レシピエント」(受ける側)で違うところがあります。
病院の説明に従って以下に記しましたが、実際は私たちは予定まで1年近くありましたので、内容は前後しているものもあります。

1.ドナーの条件

最初に誰でもドナーにはなれません。
その条件についてお話します。
第一に「健康である」こと。
第二に、「腎機能が良好である」ことが最低条件です。
移植後にドナーは腎臓が一つになり、腎機能がそれまでの70%~60%程度に落ちますから、それでも大丈夫な機能が必要です。
他にも、糖尿病や悪性腫瘍がある場合はドナーとして提供できません。現在感染症に罹患している場合も同様です。
第三に「姻戚関係など倫理的に問題ない」相手であること。当たり前ですが、ドナーの寿命を縮めることになりますので、それを本人が納得し、かつ倫理的に問題ないことが前提です。ドナーである妻は「戸籍」の提出もしました。


2.がん検診

手術を受ける本人あるいはドナーに悪性腫瘍があれば手術はできません。
術後にレシピエントは免疫抑制剤を服用しますから、がん細胞があればすぐに悪化してしまいます。移植された腎臓に悪性腫瘍がある場合も同様です。
ということで「レシピエント」も「ドナー」もこの検査を受けます。

(1)レシピエントの検査
胃カメラ 
→これは麻酔をかけますので寝てる間に終わります。
大腸カメラ 
→これも麻酔なので、普通は問題ありません。
私は最初に上手くカメラが中へ入らず結局二回やることになりました。
しかもカメラを入れる前に腸の中を空にしないといけませんから、下剤を飲んで排泄を何度も繰り返します。
私もそうでしたが、他の人を見ているとやはり年配者は全部排泄が終わるのに時間がかかるようです。私は二回とも午前8時頃から始めてお昼までかかりました。
子宮がん 
→女性の場合
乳がん 
→女性の場合


(2)ドナー

ドナーも同様に、①胃カメラ、大腸カメラ、③子宮がん、④乳がん
の検査を受けます。


3.合併症の検査

現状の身体の状態を調べます。


(1)レシピエント

体重 
→太っている場合は手術までに目標何キロにするようにと具体的に指導されます。
喫煙 
→私は吸いませんが、当然喫煙者は辞めるように厳しく指導されます。
血糖管理 
→私は元々糖尿病でしたので術前に通院していた病院で管理してもらっていました。
④心疾患 
→手術の時に最も負荷がかかるのが心臓ですから、これについては、主治医がかなり厳密に精査をされました。
脳梗塞 
→CTやMRIで検査します。
⑥原疾患 
→私の場合は、糖尿病、高血圧、高脂血症、甲状腺機能障害等がありました。
⑦その他合併症


(2)ドナー

ドナーも次の検査を受けます。
血圧、②喫煙、③体重
④血糖値、OGTT検査
 →血糖値について、精密に手間をかけて測ります。
心電図、⑥胸部レントゲン
⑦トレッドミル検査 →心臓に負荷をかけて測ります。こについては、「8.検査入院」のレシピエントのところで述べます。


4.感染症の検査

血液検査やX線等により現状の感染症の有無を検査します。

(1)レレシピエント

①HIV 
→エイズの検査です。
②HTLV-1 
→ヒト細胞白血病ウィルスの検査です。
B型肝炎ウィルス 
B型肝炎ウィルスの検査です。
④C型肝炎ウィルス 
C型肝炎ウィルスの検査です。
サイトメガロウィルス 
→サイトメガロウィルスというのは、子供の時に感染しているもので、普段はおとなしくても、術後の免疫抑制剤で再活性化する恐れがあるため受けるのだそうです。
結核 
その他 

(2)ドナー

ドナーも同様の検査を受けます。


5.他科受診


(1)レシピエント

①歯科 
→病院内にもありましたが私は定期的に通院している歯科がありましたのでそちらへ治療を受けに行きました。
主治医からは、「虫歯が一本でもあると術後の免疫抑制剤服用で大変なことになるので、術前に完治するように。術後も定期的に受診するように」と、これは何度もきつく言われました。実際に虫歯が残っていて大変になった患者さんがいたそうです。

眼科 
→ここは病院内の眼科で術前、術後に定期的に検査してもらっています。
それ以外にも人によって、耳鼻咽喉科等いろいろなところを受診することになると思います。
私は糖尿病性腎症で別の病院に通院していましたので、手術までそちらで糖尿病や腎不全等の治療及び検査を受けていました。


(2)ドナー

ドナーの場合は特に指示がある場合以外はありません。


6.予防接種

(1)レシピエント

術後に免疫抑制剤の服用が始まりますので、もし術前にウイルスが体内にあると大変なことになります。そこで事前に予防接種について必要なワクチンを全て接種しておく必要があります。もちろん「おたふく」や「はしか」は一度かかると抗体はあるのでしょうが、先に抗体の検査をしていますから、抗体がないもの、判然としないものはとにかく全部受けることになりました。

また、術後に免疫抑制剤の服用が始まりますので、「生ワクチン」については、術後は打てなくなります。
「生ワクチン」とは、風疹、はしか、水痘
などです。

①B型肝炎 
初回、1か月後、6か月後と間隔をあけて3回接種が基本です。
したがって、これを受ける人は手術まで余裕のあるスケジュールが必要だと思います。
肺炎球菌
③おたふく
④麻疹(はしか)
⑤風疹
⑥水ぼうそう
⑦インフルエンザ
 
→注射によるインフルエンザワクチンは「不活化」ですから術後も受けられます。なお、現在のコロナワクチンも不活化ですから術後でも受けられます。しかし、免疫抑制剤を服用していますから、受けても抗体のある人は15%ほどだそうです。私も術後に自費でコロナの抗体検査を受けましたが、ほとんどありませんでした。


(2)ドナー

ドナーについてはここは必要ありません。


7.組織適合性(HLA)検査


リンパ球クロスマッチ陽性検査です。
実際にドナーの腎臓がレシピエントに適合するのかという検査です。
この検査ができるところは限られています。
私は当該病院の提携先の大学病院で、二人同時採血にて、受けました。
この検査の時もそうですが、手術を受ける病院でも1、2度同じ質問を受けました。
「本当の夫婦、婚姻関係ありますよね」「ご自分の意志で手術を受けるのですよね」と言ったことです。(手術を受ける病院ではドナーの戸籍提出もありました)
やはり、移植手術というのは倫理的に厳格なんだと思いました。


さて、この検査は、ドナーとレレシピエントが同時に受ける必要があります。
できれば最初にやって欲しいものですが、これは費用がかります。
病院の同意書では二人で89,400円でした。実際に支払ったのは二人で62,000円でした。
自治体によって助成もあるようです。

この検査は遺伝子検査だそうです。
この遺伝子の配列によっては不適合な場合もあるようですが、血液型同様に、ここも今はほとんど事前の処置で対応可能なようです。
私たちは幸いこの遺伝子検査は問題なしとのことでした。
なお、血液型につきましても、今は血液型が違っても事前に抗体除去等で手術は可能らしいです。
私たちはたまたま血液型も同じでした。


8.検査入院

ここまで問題なければ、手術前にさらに精密検査のため検査入院して検査を行います。私の場合は時間的に余裕がありましたので、一部は事前に行っているものもあのます。また中には二回行ったものもありました。

(1)レシピエント

①CT検査 
→X線を使って身体の断面等を見ます
②24時間血圧測定検査 
→24時間装着して血圧を測ります。
③呼吸機能検査 
→息を強く吐いて検査します。
④副甲状腺超音波検査 
→超音波で甲状腺を診ます。
⑤頸動脈超音波検査 
→超音波で頸動脈を診ます。
⑥骨塩定量検査 
→X線を当てて骨の成分を診ます。
⑦腫瘍マーカー検査 
→採血によって悪性腫瘍の有無を診ます。
⑧トレッドミル負荷心電図検査

手術に対して心臓が持ちこたえられるか、ということを観るために、心臓に負荷をかけて測定します。具体的には、ウォーキングマシンを大きくしたような機械に乗って段階的に歩く速度を上げていきます。この機械が段階的に傾斜がついて坂道を歩くような形になります。しかも最後は速度が小走りの形になりますから、個人的には相当つらかったです。倒れないように支援してくれる方はついてくれますが。

私は検査入院の前に心電図で異状が診られたために(実は健康診断で常に心電図の波形が人と違うために異常を指摘されていた
のですが、本人としては心臓が痛くなったりした経験は一度もありませんでした)、この検査は入院前と入院後と、二回受けることになりました。

心臓については、主治医が最も懸念されていたので、これ以外のCT等も使って、最後は心臓内科医の先生に診てもらいました。結果的に分かったことは私の心臓は人より少し左にねじれているので、心電図の波形に異常が見られるが心臓そのものは大丈夫で、手術は問題ないとのことでした。

⑨心臓超音波検査 
→超音波で心臓を診ます。
➉腹部超音波検査 
→超音波で腹部を診ます
糖負荷検査
→糖尿病以外の方が受けます。私は元々糖尿病ですから、これは受けていません。
CT(造影剤)
→CTを使って診ます。
MRI 
→磁気の力で身体の内部を見ます。私の場合は、造影剤を使って、動脈を細部まで診られました。手術時にどの動脈につなぐか目安をつけるためだそうです。


(2)ドナー
①造影CT検査
②MRI →CT不可の場合に行います。
24時間血圧検査
④畜尿検査 
⑤呼吸機能検査
⑥心臓超音波検査
イヌリンクリアランス検査 →水分を摂取して点滴を受けて、採血と排尿を繰り返し、測ります。


私たちの場合は検査入院して、そのまま手術前の説明、手術となりましたが、時間的に余裕がありましたので、この中のいくつかは入院前にすでに終わっていました。
次回は入院、手術のために必要なその他の役所関係の手続きについてお話します。

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