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人工透析を遅らせる食事療法 実践編

1.デンプン食への取組

私にとって、デンプン食は前回お話ししました食事療法(「人工透析を遅らせる食事療法」)の最大の難問でした。1日の主食全てをデンプンにするというのは実践してみるとそう簡単ではありませんでした。


(1)主食をデンプンにする理由

まずデンプン食にしなければならない理由ですが。1日の総タンパク質を体重kg当たり0.5gとすると体重60kgなら30gが1日に摂取できるタンパク質の上限になります。さらに動物性タンパク質を最低限度以上(総タンパク質の60%以上)摂取するためには、主食のタンパク質を減らさなければなりません。
そのために主食を白米のご飯や小麦粉のパンから、「デンプン」に変える必要があります。
白米や小麦粉にはタンパク質が含まれています。1日3食ご飯だとそれだけで15g位になります。大事な動物性タンパク質が摂れなくなってしまうからです。

さらにI先生は「米や小麦粉のタンパク質はエネルギーに変わることもなく、燃えカスのように残ってしまい、腎臓病にとって良くない」と言われていました。


(2)デンプン食への最初の挑戦と失敗

12年前にI先生に教えていただき、主食を全部デンプンに変えました。
当時は「デンプン米」、「デンプンパスタ」を食べることにしました。
ところが、このデンプン米はお米の形をしたデンプンなのですが、それを炊飯器でお米のように炊きます。私も妻に炊いてもらって、これは薬なんだと思って3カ月ほど頑張って食べてみました。少しでも食べやすいように、グラタンのようにしてみたり、いろいろ工夫して挑戦してみましたが、当時あまりにも食感がゴムのようで、とてもそれ以上続けて食べられませんでした。食べられる方もいらっしゃるとは思いますが、私には我慢の限界でした。食感がどうにも苦手でした。
この最初のデンプン食は3カ月ほどで挫折しました。

(3)タンパク質調整食へ

その後何年かはタンパク質調整食のお世話になりました。
このご飯はパックに入っていて、レンジで温めて食べることができますから簡便です。タンパク質も白米の1/25とか、かなり低く抑えてありました。
私はこの頃このタンパク質調整のパックのご飯を良く食べていました。

普通の白米からタンパク質を抜いた物で、食感は白米に近いものがあり、デンプン米と比べてかなり食べやすい、と感じました。
それから当時は会社に勤めていましたので、お弁当にも使えました。
これはとても助かりました。それ以外も同じくタンパク質調整の麺類等を食べていました。


(4)デンプン食への再挑戦

しかし、I先生からは「タンパク質調整食もわずかながらタンパク質が残るので、デンプンとは違う。できればデンプンを食べなさい」と何度も言い続けられました。

I先生は「わずかでも、米や小麦粉のタンパク質は腎臓病にとっては良くない。エネルギーになる時、その成分のタンパク質が燃えカスのように残ってしまうからだ。だから、なんのカスも出さず全てエネルギーに変わるデンプンが腎臓病にとっては最も良い食品だ」と力説されていました。

そして、タンパク質調整食に切り替えてから何年か後、管理栄養士の先生から「オトコーポレーションという会社の『デンプンご飯』が食べやすいと言ってた患者さんがいる」というお話を伺い、私も早速同社の商品を取り寄せて食べてみましたところ、昔とは違い、これなら食べられると思って、それ以降は同社の「おいしいデンプンご飯」を主食にしています。

丸いパックに入っていて、レンジで温めて食べます。もちろん、普通の白米とは違います。初めて食べる人は抵抗あるかもしれませんが、私はそれ以前に自分としてはどうしても食べられなかったデンプン米を経験していましたから、これはデンプン米にしては美味しいと思いました。もちろん、ふりかけ(低タンパク質のふりかけです)をかけたりした方がより美味しく食べられると思います。
このデンプンご飯の他に、後述します同社のデンプンパンミックスで作ったパンやデンプンの麺類を食べることによって、1日3食全てデンプン食にすることが出来ました。

※実際にデンプン食にするとこれはおまけのようですが、血糖値が上がりにくくなります。デンプンは食べた後に急激に血糖値を上げませんので、私のような糖尿病の持病を持つ人にはにとても良いと実感しました。
これは私の実体験の話しです。


2.実際の食事の内容

毎日の食事は、長く続けて行くためにも、タンパク質等を考えてご自分の好きな物が良いと思いますが、参考までに私の食事内容をご紹介します。

(1)「朝食」

朝食は前述した会社の「デンプンパンミックス」を使って、妻に「パン」を作ってもらい、それを毎朝食べていました。パンはバターやジャムでもいいですし、私はキュウリやキャベツを細く切ってもらいマヨネーズであえてサンドイッチにして食べることもあります。パンは量的には、7センチ×10センチくらいの2~3枚です。

それに副菜として、小さな小鉢の果物とか野菜です。果物は旬の物、今なら梨とかぶどうですか、野菜はジャガイモやとうもろこし、ブロッコリーなんかをレンジで温めていました。

パンを作るホームベーカリーはどこの会社でも良いと思いますが、参考までにうちではツインバードという会社の7000円位のものを使っています。
そんなに高価なものでなくても工夫で美味しくなると思います。
また実際にパンを作るにはいろいろとご自分で試行錯誤してみるしかないと思います。
例えばドライイーストは袋にも付いていますが、うちでは、いろいろ試してみて最終的に付属のドライイーストを1/3、残りを日清フーズのスーパーカメリヤドライイーストを使っています。ここら辺はご自分で好きな味を探されると良いと思います。

また、パンを作る時にもオリーブオイルや水を使いますが、うちでは水にお湯を入れて温度を35.6°c~36°cにしているようです。これは気温や湿度で変えるらしいです。

※参考までに見本の写真を載せておきます。以下の写真は最近撮ったものです。

食事見本1


食事見本9


(2)「昼食」

昼食につきましては、同社のデンプンラーメンかパスタを使って、スープやソースだけ市販のタンパク質、塩分のそれほど高くないもの(スーパーとかで販売しているものです)を使って食べていました。

ただし、ラーメンならばこれも市販のスープですと塩分高いですから、そのまま食べるのではなく、つけ麺のようにして、麺をスープにつけて食べていました。
こうするとそんなに塩分を摂りすぎる心配はありません。このやり方も専属の管理栄養士の先生に教えていただきました。もちろん、スープを飲むことはありません。もったいないと思わず残しましょう。それから、食べやすいようにネギとか海苔、ゴマをかけていました。

パスタは辛いのが大丈夫ならタバスコとかも良いでしょう。粉チーズをかけてもいいですね。パスタも市販のレトルトソースでタンパク質、塩分の少ないものをかけていました。
ペペロンチーノとかなら、単に七味とパセリ、ニンニクとオリーブオイルで炒めるだけですから、パスタをゆでて自分で炒めて作れます。

それに小さな野菜等を加えて昼食としていました。例えばサイコロ状に切ったピリ辛コンニャクとか、千切りの長いも、きくらげ等です。


食事見本3

食事見本2


(3)「夕食」

夕食は、前述しましたデンプンご飯のパックを主食にしていました。食べやすいように低タンパク質のふりかけをかけています。これにおかずとしてタンパク質10g位の動物性タンパク質、それに野菜、キノコ類、イモ類、豆類、海藻類、果物を少しずつという感じです。

「できる限り食事の品目を多くしてください。1日20品目以上を目指してがんばってください」と言われていましたので、細かく品目を増やしていました。


食事見本6


食事見本7

食事見本8


(4)食事記録表の記入見本

前回(「人工透析を遅らせる食事療法」)でもお話ししましたが、食事記録表の実際の記入見本を載せておきます。
これは2019年4月5日のものです。食事療法を始めてからすでに10年以上経っていた頃です。

実記録写真


記入してある数値につきましては「日常食品成分表」から書き取ってます。
調べても分からないところは空欄にしてあります。
また、買ってきた食品の袋の成分表示から写したものもあります。
実際には成分表の数値は「生」に対して、煮たり焼いたりしいますから、リン、カリウム等はこの数値よりも少なくなると思います。
キャベツ、トマト、キュウリ、果物は全て「生」です。
品目は20種以上ですが、動物性タンパク質の60%はできていません。
1日で達成できなくとも、この頃には1週間ベースの平均でできればいいと思ってやっていました。動物性タンパク質が少ない日があれば次の日に多めにするとかしていました。
もちろん初めの頃は覚えるためにも厳格にやった方がいいと思います。
ただ、あまり神経質になりすぎると続きません。
何よりも長く続けることが大事です


3.毎日の食事の注意点

(1)外食

管理栄養士の先生からは「毎日同じデンプンだと大変でしょう。月に2回位なら外食しても良いですよ」と言われていました。ここは気を付けないと月2回が、3回になり、4回になり、段々増えて行きます。(私は自分に甘いです)
それが行き過ぎると必ず検査結果に正直に現れます。
そこでまた反省するということを繰り返しました。(こんなに甘いのは私だけかもしれませんが)


(2)会食等

会社に勤めていると、会食というものもあります。これは避けて通れないので仕方ありませんが、前述しましたように、そういう時は1週間の間になんとか取り戻せるようにするしかありません。
親戚の集まりの等場合は、前述したデンプンご飯のパックを持参して、その場で自部の分だけ温めてもらい、それを食べると少しはタンパク質過多を防げました。


(3)間食

さらに、間食にも注意が必要です。小さなお菓子などをついついひと口と思って食べると、それが積み重なります。小さくてもタンパク質が1gとか2ℊある場合があります。実際私はここも陥りやすい点でした。
ここら辺は強い自制心が必要です。


〈最後に〉

この食事療法は慢性腎不全の方には、人工透析を遅らせる効果がありますが、I先生に良く言われましたのは
「たとえ人工透析になったとしても、その後もこの食事療法はみなさんの役に立ちます。その後の身体を保つのに役立つので身につけた方が良い」ということでした。

現実に普通のクレアチニンが高い方に比べて私は尿素窒素の数値が低かったと思います。クレアチニンが5.0を超えても尿素窒素は30以内でした。
「普通尿素窒素はクレアチニンの10倍位になるから、クレアチニンが5.0を超えても尿素窒素が30以内を続けるのはなかなかのことだよ」と管理栄養士の先生に教えていただくました。

もちろんこれだけで判断できるものではありませんが、この食事療法を11年以上続けてきた自分としては慢性腎不全にも、糖尿病にも効果的だったと思っています。
そして、振り返ってみると、もっと早い時期に始められたら良かったなと思っているのが正直な気持ちです。
実践するのは大変困難ですが、すぐに慣れますし、前回お話しした1~10まで全て実践できれば、2カ月か3カ月で何らかの効果は表れると思います。
慢性腎不全、特に糖尿病性腎症の方に参考にしていただければと思います。




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