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生い立ち(引退編)

これは今は無きDiscordチャンネル「外交官やめたい」(だっけ?)で公開した、私の生い立ちを書いたものです。真に受けずにお読みください。


きっかけはInstagramの広告だった。

たしか、監獄にハゲがいて、スカーレットと横に移動しながらパズルを組み合わせて銃を入手して途中でゾンビに倒されるやつ。 何十回も見させられて、なんとなく根負けして「パズルならやってみるか」と思ってインストールしたのが終わりの始まり。
最初は小さな避難所だけの世界でパズルをやるだけだった。
3日目ぐらいに、ログインすると避難所が燃えていた。 突然起きたトラブルに心臓がバクバクしながら鎮火のやり方を見つけて、このゲームってなんなの?と思い攻略サイトを調べると、パズルはおまけだった。 他の人とチャットしながらやるゲームなんて、いつぶりだろう。 数日前まで数独とツムツムをやっていたのに。

ひたすらギルドに入ろう、作ろう、と出てくるポップアップを「運営うぜーwどうせ課金の罠だろ」と無視し続けるのも限界にきて、念入りに攻略情報を調べてギルドに入ることを決めた。 私が生まれた国は、当然生まれたての国だった。 上位のギルドが良いらしい、とか、日本人ギルドがいい、とか漫然と考えていたのと、TOP3までのギルドは満員だったので、なんとなく選んだギルドが最初の居場所。
そこはギルマスが初心者、役職がサブ垢で経験者としてサポートしている場所だった。 ギルマスは血気溢れる面倒見の良いアンチャン、で、「俺はマフィアシティをさんざんやってきた」と、 リーダーシップを遺憾なく発揮しそうな雰囲気と言動で、私は「なんか楽しそうだな」と毎日ヘルプをし続けた。 たぶん、現実の世界では絶対に交わらないような人なんだろうな、ってちょっとだけ思った。
その国は一言で言うと内紛が続くアフリカのような国だった。
毎日TOPギルド(海外)がどこかを燃やして、隣のベトナムギルドはタイキル当たり前、文句を言おうものなら燃やすぞって言ってくるような。
それを他人事のように見る日本ギルドの面々。
「戦争ゲームってこんな感じなんだ」 何も知らない私は、ヘルプボタンを押し続け、人のギャザーにオートで乗り、☆5英雄を+1でも部隊に投入した。 ギルマスはマフィアシティだと当たり前だったのだろう、何かあるとすぐに燃やしに行こうとした。
「NAPなんか関係ない、やられたらやり返すのが当たり前だろ!」
私がまずやったことは、Googleで「パズサバ NAP」と検索することだった。
どうもゲームのシステムではない、人同士の約束や運用ルールがあるんだな、と理解した私は「大変だなー」と思いながら、ピリピリした世界で、でも賑やかなギルド生活を過ごし始めた。
その時ギルマスは 「タイル重ねられたら絶対に引くな」 「隣のギルドメンバーが半歩でも領地に入ってきたら燃やせ」 「リアルで会ったらボコボコにしてやるよ」と絶好調で肩を回す毎日で、それをなだめるのが私達の日常だった。
2週間ほど過ぎ、タクシーで乗ることや特化を知り、パズサバの世界(沼)に片足突っ込みはじめた頃、いよいよ隣のベトナムギルドとの仲が険悪になってきた。 彼らは私達がNAPを結べなかったTOPギルドと同盟を結んでいたので、彼らを攻撃するとTOPギルドから燃やされるんじゃないかと恐々としていた。クレームの連絡をしても、ベトナム語の翻訳が全く機能していなく、コミュニケーションが正常に取れるはずもなかった。
今考えるとこちらの日本語も正しく伝わっていなかったんだと思う。

そんなときに起きた些細なトラブル。タイル重ねだったか、忘れてしまったけど、ついにギルマスがキレた。 いつものように、燃やしに行こうとするギルマスをなだめていると、 「仲間もかばわないようなギルドなんてもう沢山だ!じゃあな!」 ギルマスはなぜか私をギルマスに譲り、ギルドを抜けた。

長い夜が始まった。

幹部は全員サブ垢で、ギルマスなんかできないと言う。 そして残りのメンバーはみんな初心者かサブ垢。 早朝まで結論がでないけど、空気が「おまえがギルマスやれ」と語っており、経験者の助けを得ながらやれば、なんとかなるだろうと私はギルマスを引き受けた。
一方で抜けたギルマスは野良になり、名前を変えてベトナムギルド(自由加入)に入り、 TOPギルドの最強達を偵察したりメールで煽ったりとにかく挑発しまくった。
私のギルマスとしての最初の仕事は、抜けたギルマスはもはや関係ない人ですよ、と説明・説得することだった。

ギルドは多少の混乱はあったものの、内部的には日常を取り戻したかのように見えた。 引き継いだ瞬間のギルドは、ギルド戦力ランクが10位前後で、各ギルドがひしめき合っているような状況だった。
ゼニスって何?NAPって誰が決めるの?って所から、経験者に色々と話を聞いて自分たちが極めて厳しい状況にあることがようやく理解できた。
ここにいるのはお喋り好きと、ゆるいサブ垢の人が多く、ギルド戦力が全然上がらない。
このままだとTOP10から落ちて、荒野が始まったら燃やされるんじゃないかという恐怖心。
私は、①人を集める(勧誘・合併) ②上位ギルドとNAPを結ぶ ③自身の強化 ④ギルドの運営 の4つをほぼ一人でやることにした(なった)。
ギルド内でキャッキャしているメンバーを横目にひたすら外に向けて活動を開始した。
その間に元ギルマスはベトナムギルドを道連れにすることに成功したようで、早朝に隣が燃えさかっていた。TOPギルドが総攻撃をしたようだ。
相変わらず隣の外交官とは意思疎通ができない。なんだこの翻訳機能。

不幸中の幸いなのか、この国は廃課金・重課金がいなかった。 最初の課金は右上にドカーンと出てくる英雄達だった。AoEダメージ!とか今でもよくわからないけど。
フィールドマップにした時に右上でドカーンとなると、誰かが燃えていると勘違いしてビクっとすることにうんざりして買った。
GameWithを見ながらコツコツと自身の強化を進めていき、ある程度の戦力を持つようになったある日、相変わらず続く隣のギルドのタイルトラブルと領地問題にけりを付けるべく、ギルド要塞を破壊することを決めた。
というのも、調べるうちににギルマスと外交官はメイン垢が忙しいらしくほぼ不在、残りは初期ネームや謎の初心者ばかりで誰もルールを教えない無法地帯になっていたからであった。そりゃ連絡しても3日4日放置されるわ。
破壊を決めたものの、問題になるのはそのギルドとTOPギルドとのNAP。 TOPギルドへは全くコミュニケーションができておらず、どのような考えを持っているのかも分からない中で、避難所を燃やしながら国チャで成長TIPSを沢山話すフィネスの外交官にコンタクトを取った。
結論としては解体しても問題ない、ということだが、これがこの国を疑心暗鬼と混乱に陥れる元凶、外交官Sとの最初の出会いだった。
心臓バクバクしながら隣の要塞を解体することに成功し、領地の区画整理をすぐにやらなければならず、その日も遅くまで働いた。ゲームなのに働いた。
GameWithにもTwitter(X)にもギルマスの仕事や外交についての情報はなく、ギルド間NAPの結び方について頭を悩ませた。
その時期、官職としての外交官は国チャで半角AAで「ギルメン募集中ズンズン」みたいな投稿を続けていた。
ポイ活ギルドの有望そうな人や、弱小ギルドへ片っ端に声を掛け、とにかく人を集めて戦力を上げて上位から落ちないようにしようと活動しながら、他の上位ギルドとのNAP交渉をはじめた。 日本ギルドは平和愛好家が多く、すぐに締結ができた。海外ギルド、英語圏とドイツ語圏だったが、とにかくDeepLをフル活用して褒めたり尊敬したり、NAPと同盟の違いもよく分からなかったけど(国によっても違うみたいですね)NAP乞食としてNAPをさまよい求めた。
その結果TOP以外の上位10ギルドと締結することができた。 その間、ギルメン達は他のギルドや国の状況など興味が無いように、毎日ギルチャでキャッキャしていたり、たまにタイキルされたけどどうしましょう、という報告を上げてきた。おまえ絶対後出しだろ。
いよいよゼニスが始まり、ギルド戦力上位10のNAPが導入されると、相変わらず10位前後をうろついていた当ギルドは11位になった瞬間にTOPギルドから狙われる可能性があった。TOPギルドと仲良くなるしかない。ゼニスホストをやるTOPギルドに参加して率先して日本ギルドへの連絡係をやったり、初代知事になった全く知らない外国人にお祝いのメールを送ったりしてとにかくコミュニケーションを図った。
このとき、週40時間がパズサバ(パズル2%)、20時間が翻訳とDiscordやら外部でのコミュニケーションに費やされていた。
その甲斐もあって、TOPギルドと良好な関係を作れたんじゃないかという自信を持ったのも束の間、TOPギルドに異変が起きた。
知事になる→少したつとその人が移民する、というのを繰り返した。
TOPギルドの内輪もめかー、なんてみんな考えていたが、この時暗躍していたのは外交官Sだった。 彼は日本ギルドに対しては優しい一方で、自分のギルドを含めて海外勢に対して難癖を付けて最終的に燃やしていた。 私はその時はそんなことは知らず、ただただ仲良くしとこう、というスタンスで接していた。
荒野が始まると、私を含めた初心者に対して多くの経験者は、戦略的にもギルド的にもいかに荒れ地を埋めることが大切か、を教えてくれた。
こうして、荒れ地を埋めることが荒野の最優先課題である、という文化がこの国に誕生した。私は必死に週末に向けて荒れ地埋めをするメンバーを募り、他のギルドも我先にと荒れ地を埋めた。
荒れ地椅子取りゲームの始まりだ。
隙間なくピッタピタに埋まる荒れ地。 シールドが外れようものなら罵られ、燃やされ、誰に対してでもなく国チャで謝る文化。 一方で他国を占領できる戦力も戦略もなく、ホストの知事候補者の仕事は開幕でNAPの条件を叫ぶことだった。 TOPギルドも圧倒的なTOPではなくなった頃、荒野ホストギルドは上位ギルドで持ち回りになるというなんとなくの雰囲気ができ、別の海外ギルドがホストをすることになった。
荒野前日にそのギルドが燃えた。 またあるときは、次の知事に立候補した人が、承認された次の日に燃やされて移民した。 日本ギルドから知事が出た時もあった。国バフは出なかった。または違う日に出た。
あるとき、国をまとめるにはどうやら評議会というやり方があるらしい、と聞いた。 私は評議会を作ろう、と外交官Sを含めて仲良くなった国に影響のある人に声を掛けた。 外交官Sは上位ギルドから日本ギルド2人、海外ギルド2人、知事、の5人で構成し、メンバーは知事以外を固定にするのがこの国にとって良いだろうと言い、その通りに作られることになった。
評議会になる人選を、上位ギルドのR5の投票で行う事になり、私がとりまとめて連絡、集計を行い外交官Sに伝えた。 外交官Sは票が集まっていた、とある海外の女性を見て、「こいつはダメだ。我欲が強すぎる」と言って落選させた。
彼女はEOSになった。
彼女は微妙に強く、誰も反撃をしなかった。日本の姫は愛と平和を説いて説得していた。ある時の荒野ではDiplomat(外交官)、という名前に変え、戦闘チャットで「私が代表だ。NAPはいらない」といって他国のハブを攻撃した。誰も、そういうときの対応を知らなかった。ホストは「すみません、違うんです」みたいな事しか言ってなかった。植民地になった。
何回か荒野が行われる頃には、私はある程度の戦力を持ち、砲台リーダーも任されるようになった。誰も来ない砲台で8時間(精神力)耐久レースをするのが荒野の日課だった。 デスもキルもなく、占領ポイントだけが私の報酬だった。 「ポイント取れました。ありがとうございます!」みたいな事を言ってさっさと抜けていく人を見ては、即座に代替人員を探して部隊を埋める係。 4回連続8時間耐久レースをしたときに、アホな私でもなにか違うんじゃないかと思いはじめた。その時SWP持ちは荒れ地を埋めていた。
外交官Sは語尾に「….」を毎回つけたスラングまじりのメールをチャットばりに連射してくるが、その内容のほどんどは「あいつは傲慢になった」とか「このままだとこの国は破滅する」とかだった。
私はルールを大事にする人なのか、単なる愉快犯なのか決めあぐねていた。 そんなある日、彼と同じギルドにいるリアル彼女の嫉妬がすごい、という話が出てきた。
R4で、荒野ホストの時に、外交官Sと仲良くしている風に見える女性プレイヤーを受け入れなかったり、インしたらキックしていた。
外交官Sは彼女と同棲しているらしく、彼女の家で彼女の端末(多分PC)を借りてパズサバをやっているようだった。 二人の仲はよくわからなかったが、彼女が嫉妬深いのか、それとも外交官Sがゲームをやりすぎて構わなかったのか、多分どっちもあると思うけれども、ある日外交官Sが海外ギルドを燃やしまくった。
国中が騒然となる中で、国チャに「外交官Sサブ」というアカウントが言った。
「彼女に端末取られた、あれは彼女だ」
その後すぐに国のDiscordで公開痴話喧嘩が始まった。 「弁護士を呼ぶぞ」とか「私の家から出ていって!」みたいな、もはやゲームの世界とかけ離れた生々しい争いを見させられて、私のメンタルが削られる一方で、海外勢は「ヒューヒュー!」「どうせこの後やるんだろ!」みたいなエンターテイメントを楽しんでいた。
2日目ぐらいだろうか。外交官Sのアカウント(端末)が元に戻ったらしく、「私は大丈夫だ」と国チャに戻ってきた。
乗っ取られている間も「私は大丈夫だ」と言っていたので、誰も信じていなかった。 彼は本当にEOSになった。
本当に取り戻したのだろう、しばらくすると外交官Sからは 「GOLGOL、お前なんか育てなければよかった」とか 「何が尊敬してるだコラ、助けてくれなったくせに」みたいなラブレターが長文で届くようになった。 私は限界を突破した。
そのタイミングを境に、ゲームが楽しくなくなった。好きでもない相手に食事をご馳走するような感覚。 毎朝のデイリー補給を買う手が止まった。 「もう、潮時かな」 パズサバを始めて3ヶ月目だった。
私は信頼するごく少数の人に引退することを告げ、末期に外交官Sと対立してくれた海外のオッサンにアカウントを渡すことにした。
「GOLGOL、いつでも戻ってこいよ!」 おっさんは優しく言ってくれた。
たぶん、最後まで私のことを女性だと思っていたんだろう。
こうして、激動の3ヶ月が幕を閉じた。
最後に国のみんなに感謝の気持ちを込めて、サブの資材を全部解放して8時間シールドを貼って 「宝探しだよ!みんなありがとう!」って英語で国チャで告げた。
8時間後には、「ゴルさーん!」とか言いながら避難所を燃やすギルメンだけがいた。
−終−


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