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国産コロナワクチンへの期待と不安

 塩野義製薬が新型コロナのワクチンと服用薬を出すらしい。現在、国内で治験が開始されており、早ければ6月に世に出るということのようである。その昔、日本はワクチン開発では世界のトップクラスにあったが、どうやら今では後塵を拝しているのが現実のようだ。一時期「武漢肺炎」と呼ばれて未知のウィルスと恐れられた今回の新型コロナウィルス、初期のアルファ株と呼ばれていたものは感染すると致死率も高く、瞬く間に世界中に広がって多くの命が失われた。

 そんな中でこのウィルスが発祥したと言われる中国でいち早く従来型のワクチンが開発され、ロシアと英国が続いた。これらとほぼ同時期だったと記憶しているが、米国からmRNAという遺伝子工学を使った新しいタイプのものが開発された。プラットフォームさえあれば、未知のウィルスが登場してもその遺伝子配列を解明すればワクチンを作ることができるらしい。私にはもう「どこがわからないのかがわからない」レベルの世界だが、日本ではこのタイプを導入し、政府主導で集団接種が行われている。世界中でワクチンは取り合いとなり、日本にはなかなか届かなかったのも記憶に新しい。しかし、流行が始まって3年めの今、やっと国産ワクチンが世に出ると聞き、喜ばしいことと思いながら、更なる技術の向上を望んでいる。聞きかじりだが、塩野義のワクチンは遺伝子組み換えタンパクという技術を使ったタイプらしいが、これもたとえ私が専門家とお会いできる機会があったとしても、何から尋ねていいのかもわからないという世界からやってきたワクチンである。いずれにせよ、これで外国へお金を払ってワクチンを買い続けることは回避できるし、将来自費で接種することになっても外国製より安価だと思うし為替相場に左右されることもなく、何より国内で製造できるのだから安全保障の面でも安心だし、諸外国への支援も可能となった。以上が期待する側面である。

 対して、不安の部分であるが、それは効果や副反応および服用薬の副作用の問副作用なく、それらが起こったことによる訴訟でボコボコにされはしないかということだ。以前から私は日本の新薬開発や基礎研究を邪魔しているのはそういった訴訟も一因ではないかと感じている。ワクチンの場合は必ず副反応が起こる。それを承知したうえでの接種は任意であり、接種時には同意書も書く。なのに、子宮頸がんワクチンでは副反応や後遺症で、製造した製薬会社と承認した国を相手に損害賠償請求の訴訟が起こされ、今も係争中だ。コロナのワクチンに関しては賛否両論に加えて陰謀論のようなことも言われていて、マイクロチップを体内へ注入すると主張している人もいる。いずれにせよ、こういった今まで見られなかったような論調も生まれて賛否両論が存在している状況でひどい副反応や長期に及ぶ後遺症に悩むケースが発生した場合、おそらく訴訟が起こされるだろう。
 ただ、今回日本で使われた新型コロナのワクチンの多くは米国製のファイザーとモデルナである。これらのワクチンの副反応は私の経験でも今までにはなかった強いものであった。私は38℃を超える発熱に見舞われたが、幸いにも1日程度で回復し、後遺症はな。しかし、ワクチン接種後に体調に異変を感じた人も、それが長期にわたっている人もいると聞くが、訴訟については耳にしない。これは私にとっては不思議と言うか、意外な現象だった。
 塩野義製薬のワクチンと内服薬には期待しているが、国内メーカーであれば訴訟が起こるかも知れない。今回、国が補助金を出したのかどうか詳しく調べてはいないが、もし出していたとすれば、補助金を出した成果で訴訟が起こり、敗訴すれば損害賠償に応じるということになる。医薬品の開発はリスクが非常に高いということである。もちろん、ワクチンは必ず副反応を伴うことを理解し、承諾書を書き、おそらく大丈夫だろうと思って自ら希望して接種を受けるのだが、その時には結果はわからない。重い後遺症になった人に訴訟せずに泣き寝入りしなさいと言うつもりはないが、せっかく国産ワクチンができたのに訴訟が相次ぐ事態にならないだろうかというのが私の不安である。
 意思を目指す若者たちの間で、産婦人科は訴訟が多いから避ける傾向にあるという話を聞いたことがある。出産できる病院がない地方の自治体が増えているのはそういった背景があるのだろうかと思うこともある。今回の国産ワクチンには期待しているが、先に書いたようなことになって、国内の製薬会社がワクチン開発を忌避することになれば、日本の自然科学は更に衰退の一途をたどってしまう。

 非常に難しい問題だが、片方ではモデルナのワクチンが使用期限を迎えて大量に廃棄されようとしている。これらの問題に対する解決策はないように思え、それもまた私の不安を増長する原因となっているのだが、やっと国産ワクチンができて世に出るのは実にうれしく喜ばしいことには変わりないので、今は期待だけしておくことにしよう。

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