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6594 ニデック 決算と企業価値についての考察(2024/7/23 発表)

7/23に、ニデックがQ1決算を発表しました。また同時に、2025/3通期計画を上方修正しました。2025/3通期の会社計画は、以下の通りです。売上高は、前年比+6.5%増加の2兆5000億円です。営業利益は2400億円を予想、営業利益率は9.6%となります。4/23に発表された期初の通期計画と合わせて御確認下さい。
 
2024/3 通期:実績
売上高:23482 億円 +4.7%
営業利:  1631 億円
利益率:     6.9 %
純利益:  1253 億円
 
2025/3 通期:会予(4/23、期初計画)
売上高:24000 億円 +2.2%
営業利:  2300 億円
利益率:     9.6 %
純利益:  1650 億円
 
2025/3 通期:会予(7/23、今決算での上方修正)
売上高:25000 億円 +6.5%
営業利:  2400 億円
利益率:     9.6 %
純利益:  1850 億円

資料:Gold River

 上方修正の理由(ニデック業績予想修正のお知らせより)

当社は2024年4月1日より新たな経営体制をスタートし、各事業分野での収益性向上に注力しています。精密小型モータ事業はHDD用モータの需要が回復傾向にあるほか、AIサーバ向け水冷システムの需要が急激に拡大しています。車載事業はBEV市場の拡大鈍化と価格競争の激化をいち早く察知し、昨年度に他社に先駆けて収益性最優先へと戦略転換を行いましたが、今後は合弁先との連携を一層強化してリスクを最小化すると同時に、これまで厳しい市場で培った技術・コスト競争力を活かした部品供給の推進にも注力していきます。また、ニデックPSAイーモーターズの連結子会社化に伴い、段階取得に係る差益を計上しました。家電・商業・産業用事業においては、データセンターに必要不可欠な発電機等の需要が急拡大しているほか、グリーンイノベーション関連需要の拡大に伴いバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の大幅成長も見込まれています。なお、為替レートが米ドル、ユーロともに想定以上の円安水準で推移した結果、増収・増益効果に加えて、為替差益約150億円を計上しました。このような結果、当期第1四半期連結業績は前回(2024年4月23日)に公表した業績予想の想定を上回る実績となりましたので、上記のとおり第2四半期連結累計期間および通期の業績予想の見直しを行います。なお、想定平均為替レートについては従来どおり、対米ドルでは145円、対ユーロでは155円として変更していません。
 
以下に四半期(Q)ベースの業績チャートを添付しました。右端の3本は、会社計画の半期分と通期分から当方で「推定した数値」をベースに作成したものです。Q3とQ4は、前年比の売上高伸び率が+1%前後を会社側は計画している模様です。

資料:Gold River

 今回のニデックQ1決算からのテイクアウェイ(留意したいポイント)は以下の4点です。これら4点についての「深掘り」と「ニデックの企業価値についての考察」(ニデックが企業価値を永続的に拡大して行く企業なのかどうか)について、以下に添付した「ニデック決算短信からの抜粋」より更に下の文章で触れてみたいと思います。
 
①     Q1決算の時点で既に上方修正してきた:産業用モータなどが好調で、ステランティス社と設立したEV用駆動装置の合弁企業を子会社化したことによる一時的な利益も寄与します。ニデックPSAイーモーターズを4月に子会社化し、企業価値を見直したことで100億円ほどの差益を計上することも利益を押し上げます。

②     EV用駆動装置(eアクスル)一辺倒からの脱却:データセンター向け水冷モジュール、データセンターの非常用電源の発電機、再生可能エネルギー分野で使う「バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS、battery energy storage system)」等の成長領域へ展開しています。

③     株式分割(10/1付けで1株を2株へ):10月1日を効力発生日として1株を2株に分割することも発表しました。最低投資金額を引き下げ、個人投資家の裾野を広げたい考えだ。23日終値(6787円)をもとに試算すると、分割後の最低投資額は34万円程度となり、東京証券取引所が望ましいとする「50万円未満」になる。

④     中長期のビジョン:中長期のビジョンも改めて示した。創業者の永守重信グローバルグループ代表がかねて掲げてきた31年3月期に連結売上高を10兆円にするという目標を維持しつつ、既存事業の成長で7兆円の売上高を確保し、M&A(合併・買収)で3兆円を上乗せするという内訳を示した。23日時点で4兆469億円の時価総額を10兆円以上に高める。売上高は今期見通しの4倍を目指す。
 
当第1四半期:連結累計期間の概況(ニデック決算短信より)

2024年4月1日付けで岸田光哉が社長に就任し新経営体制がスタートしました。One Nidecをキーワードにグループ間でシナジーを創出しながら成長していく全体最適の経営、すなわちグループ一体化経営の実現を目指して、技術や人材のグローバルベースでの融合をはじめ、各種の施策を強力に推進しています。製品グループ別については、まず精密小型モータはニアライン用途を中心にHDD用モータの需要が回復したほか、AIデータセンター建設ラッシュに伴い急拡大しているAIサーバ向け水冷システムの需要に即応して、水冷モジュール量産体制を垂直立上げする等、収益性の高い事業ポートフォリオへの転換を加速しています。車載は、BEV市場の拡大鈍化と価格競争の激化をいち早く察知し昨年度に他社に先駆けて収益性最優先へ戦略転換を行い、合弁先との連携を一層強化し、これまで厳しい市場で培った技術・コスト競争力を活かした部品供給の推進にも注力しています。また、世界各国の先進安全装備や自動運転に向けた高度な電動化、HEV需要の高まりを見越した製品開発等に注力しています。家電・商業・産業用においても、データセンターに必要不可欠な発電機等の需要が急拡大しており、それに対応した生産能力の増強を鋭意進めています。またグリーンイノベーション関連需要の拡大に伴いバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の大幅成長も見込まれています。機器装置は、景気変動サイクルにおける低迷期の最終局面に差し掛かっており、回復局面へ転換するタイミングに即応できるよう、グループ各社の経営体制や生産体制の集約一元化等、事業推進体制の強化を鋭意進めています。このように新経営体制の下、グループ一丸となってスリー新(新市場、新製品、新顧客)活動を強化した結果、四半期連結会計期間の売上高・営業利益において過去最高を更新しました。このような状況下、当社は「中長期の方向性」を明確化することにより、100年を超えて成長し続けるグローバルな“超一流企業”を目指し、当社ならではの強みを継承しながら“第2の創業”として、“質”を伴った成長により企業価値を高めていきます。当第1四半期連結累計期間の継続事業からの連結売上高は、前年同期比14.8%増収の6,481億66百万円となり四半期連結会計期間において過去最高を更新しました。各事業分野・市場において需要の浮き沈みがあったものの、精密小型モータではニアライン用途を中心にHDD用モータが回復したこと、急成長しているAIデータセンター向け水冷モジュールをはじめとする新分野での売上高が増加したほか、車載におけるニデックPSAイーモーターズ(Stellantis社との合弁会社)の連結子会社化等により売上高が拡大しました。営業利益は、家電・商業・産業用および機器装置において、更なる収益性の改善を目指し、分散拠点の合理化や生産体制の集約等を進めた結果、先行してコスト負担が発生した影響はありましたが、一方で精密小型モータでは収益性の高い事業ポートフォリオへの転換が進んだこと、ニデックPSAイーモーターズの連結子会社化に伴う段階取得に係る差益の計上もあり、前年同期比0.1%増益の602億59百万円となり過去最高を更新しました。税引き前四半期利益は、為替差益約150億円を計上した影響も含め、前年同期比8.7%減益の786億3百万円、継続事業からの四半期利益は前年同期比15.3%減益の545億50百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期比12.5%減益の560億44百万円となりました。なお、当第1四半期連結累計期間の対米ドル平均為替レート(1ドル当たり155.88円)は前年同期比約14%の円安、対ユーロ平均為替レート(1ユーロ当たり167.88円)は前年同期比約12%の円安となりました。なお、当第1四半期連結累計期間の売上高、営業利益への為替影響は下記のとおりです。
 
売上高:前年同期比約595億円の増収
営業利益:前年同期比約65億円の増益
 
連結業績予想などの将来予測情報に関する説明(ニデック決算短信より)

IMFは2024年、2025年の世界の経済成長率を3.2%とし、2023年とほぼ横ばいで推移すると予想しています。このような状況下、当社は2024年4月1日より新経営体制をスタートし、One Nidecをキーワードにグループ間でシナジーを創出しながら成長していく全体最適の経営、すなわちグループ一体化経営の実現を目指して、技術や人材のグローバルベースでの融合をはじめ、各種の施策を強力に推進しています。製品グループ別については、まず精密小型モータではニアライン用途を中心にHDD用モータの需要が回復傾向にあるほか、AIデータセンター建設ラッシュに伴うAIサーバ向け水冷システムの需要が急激に拡大しており、売上高並びに収益の両面で大きな柱に成長する可能性の追求等、収益性の高い事業ポートフォリオへの転換を加速しています。車載は、BEV市場の拡大鈍化と価格競争の激化をいち早く察知し昨年度に他社に先駆けて収益性最優先へと戦略転換を行いましたが、今後は合弁先との連携を一層強化してリスクを最小化すると同時に、これまで厳しい市場で培った技術・コスト競争力を活かした部品供給の推進にも注力していきます。また、世界各国の先進安全装備や自動運転に向けた高度な電動化、HEV需要の高まりを見越した製品開発等により確実な受注獲得・売上増加に繋げています。家電・商業・産業用においては、データセンターに必要不可欠な発電機等の需要が急拡大しているほか、インフラ関連の根強い更新需要が長期に亘って継続することも期待されています。これらのビジネスチャンスを的確に捉え、売上・利益の大幅な拡大に繋げます。機器装置は、景気変動サイクルにおける低迷期の最終局面に差し掛かっており、回復局面へ転換するタイミングに即応できるよう、グループ各社の経営体制や生産体制の集約一元化等、事業推進体制の強化を鋭意進めています。このような取り組みのもと、当期第1四半期業績は前回(2024年4月23日)に公表した業績予想の想定を上回る実績となりましたので、次のとおり通期および第2四半期連結累計期間の業績見通しを修正します。現時点の2024年度の業績見通しは、為替水準を1US$=145円、1ユーロ=155円を前提に次のとおりです。
 
*2024年度連結通期業績見通し
売上高 2,500,000 百万円 (対前期比 106.5%)
営業利益 240,000 百万円 (対前期比 147.6%)
税引き前当期利益 250,000 百万円 (対前期比 123.5%)
親会社の所有者に帰属する当期利益 185,000 百万円 (対前期比 148.1%)
 
(第2四半期連結累計期間業績見通し)
売上高 1,300,000 百万円 (対前年同四半期比 112.3%)
営業利益 115,000 百万円 (対前年同四半期比 99.7%)
税引き前四半期利益 130,000 百万円 (対前年同四半期比 89.7%)
親会社の所有者に帰属する四半期利益 97,000 百万円 (対前年同四半期比 91.8%)
 
(注)業績見通しについて
①連結決算業績は国際会計基準(IFRS)によります。
②為替水準の設定はアジア通貨も1US$=145円、1ユーロ=155円に連動して設定しています。
 
ニデックQ1決算からの「テイクアウェイ(4点)についての深掘り」と「ニデックの企業価値についての考察」(ニデックが企業価値を永続的に拡大して行く企業なのかどうか)について:企業価値の根幹にかかわる極めて重要なポイントですので、パブリックに述べるよりむしろ有料とさせて頂きました。御了承頂ければ幸いです。
 
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