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週末チャート点検(2024/7/21)

92個のチャートを用意しました。政治の季節が色濃くなる中、各種チャートを見ながら要点を整理して行きます。個別企業の決算シーズンが始まりました。また、半導体セクターで株価が大きく動きだしました。必ずチェックしておくべきチャート、見ておいた方が良いチャート、興味を引くチャート、等を含んでいます。今「自分がどこにいるのか」(どんなマーケット環境におかれているのか)を押さえておく事は、投資家にとって最重要です。長期投資家にとっても、短期投資家にとっても重要です。
 
投資にあたり必ず押さえておく最重要ポイントを、「毎週」の投資戦略会議のディスカッションの中から「Investment Outlook」としてまとめています。今マーケット/投資家自身がどこにいるのかの「Big Picture」を俯瞰し、実践者/実践経験者がグローバルマネーの視点で分かり易く解説します。株式投資でうまくやって行くための情報をドンドン書いていきます。マーケットやメディアで表面的に語られている内容はこうだけど、「本当はこういう話ですので、こう考えるべきです」という話をたくさん盛り込んでいきます。多少言い難いけど「本質的にはこうです」という話にもできる限り触れていきます。
 
 
新しく投資を始める方へ(既に御覧の方は、本編へお進み下さい)
 
※このパラグラフはInvestment Outlook創刊号(2023/12/29発刊)からのもので、創刊号の6%の分量です
※導入の説明として必要と考え再掲したもので、御了承頂ければ幸いです
※Investment Outlook創刊号を既にお読みの方は、直ぐ下に続く「投資戦略会議サマリー」へお進み下さいませ
 
投資を始めるにあたり、重要な3つのステップは以下の通りです。
①     正しい投資の基礎を学ぶ(同時並行で過去の成功/失敗ケース実例をドンドン学んでいくと、学びが最も速く効果的)
②     幾つかの個別企業の株式銘柄を候補としてリストアップし調査分析を開始する(時間は十分ある、今飛びつき買いをしない)
③     今マーケットがどこにいるかをよく知っておく(株式や投信など金融商品を買うのに適した好機を判断するために最も重要なので、マクロ環境について常に情報をアップデートしておく)
 
株価を形成する要素として、マクロ要因、ミクロ要因、その他の要因があります。そして、それらのウエイトはおおまかに、マクロ要因=6割、ミクロ要因=3割、その他=1割くらいであると覚えておけば良いでしょう。マクロ要因には、(金融政策を含む)金利や流動性など、そしてそれらの水準/規模と方向性などが含まれます。ミクロ要因には、企業業績の将来的な見通しをはじめ競争優位性を含む企業が内包する力などが含まれます。その他の要因では、株式や債券などの需給や地政学的要素などを考慮しています。
 
このうちウエイトで6割ほどを占めるマクロ要因は重要なのですが、各人がゼロから独自で研究するとなれば、途方もない時間がかかりますし、ちゃんとした理解に辿り着ける様になるのかも不明です。このたび創刊する「Investment Outlook」は、毎週末に開催される投資戦略会議から重要な部分を分かり易くサマリーとしてお伝えしていくものです。主要な視点は「グローバルマネーはマーケットをどう見ているか」となります(加えて、その時々の興味を引く業界や個別企業についても触れていきます)。これにより上述の「③今マーケットがどこにいるかを知っておく」にかかる(投資をはじめる方にとって大きな負担となる)時間と労力を大幅に低減できる事を目指します。マーケットの未来を予想してそれにベットする(賭ける)よりも、ハワードマークスがたびたび言及する様に、「今マーケットがどこにいるかをよくよく知ってから」「貴方が今どういう環境にいるか」を理解してから投資の判断に進む方が何倍も重要です。この投資レターは、主に中長期目線で投資する方を想定していますが、その時々のマーケット/マクロ環境を熟知しておく事は、実際は短期目線のトレーダーにもかなり重要であると思っています。
 
「取り敢えずは投資してみて勉強はそれからです」とか、「最初は誰でも損はするものですし、損をすると必死に勉強するものです」とかの声が聞こえてくるケースがありますが、お金と時価の無駄です。精神衛生上も宜しくありませんし、投資の最初に大損を経験し、「株式投資なんてもう嫌」になってしまうのは人生の大損です。素晴らしい会社(銘柄)を見つける事はもちろん重要ですが、それと同等に重要な「投資で成功する要件」は買い値に拘る事(割安な株価で買う)です。従って、足元は素晴らしい会社の株価は(極一部を除いて)どれもだいたいは割高なのは明らかですので、新NISAを契機に投資を始めようという方にとり非常にラッキーな事に、実際に投資に踏み切る前にお勉強する時間は十分に有ります。
 
ここから「本編」です→ =================================

週末チャート点検

まずは、最も重要な「S&P 500」のチャートです。今週(終わった週)は、1週間で1.97%下落しました。

資料:Gold River

S&P 500をより短い期間(2023/11~)で見ておきます。7/16(火)には、オールタイムハイ更新となりました。

資料:Stock Charts

S&P 500「イコールウエイト」を見ておきます。7/18(木)に上髭にて、オールタイムハイを更新しました。上述の「S&P 500」は時価総額の大きい銘柄の寄与が大きいですが、「イコールウエイト」の方は銘柄1つ1つの影響度は時価総額サイズには関係ありません。

資料:Stock Charts

通常の「S&P 500」を「S&P 500 イコールウエイト(1枚柄1銘柄を同じウエイトとしている株価指標)」で割ったレシオが赤線です。今週は、同レシオは急上昇して7/10(CPIの前日)にピークをつけた後に、急低下しています。限られた数銘柄(要するにエヌビデアや兆㌦銘柄等)に依存した「S&P 500」が顕著に強い上昇を見せてきましたが、それら上位銘柄「以外」のアンワインドが起きている模様です。

資料:Gold River

VIX「日足」です。7/19(金)SQの日に超長い下髭が形成されました。

資料:Stock Charts

こちらはVIX「週足」です。コロナ以降で12以下をつけたのは、2023/12、2024/5~2024/7です。終わった週は、長い下髭付きの大きな陽線となりました。

資料:Stock Charts

VVIX(VIX of VIX)の日足です。7/19(金)までの3日間連続で陽線となりました。6/12(FOMCとCPI)と7/12に、類似の「長い下髭の付いた小さな陰線」が形成された事が目に付きます。

資料:Stock Charts

VVIX(VIX of VIX)の週足も見ておきます。長い下髭を伴った陽線(5週間前と2週間前の2回)が目を引きます。そして、終わった週に大きな陽線が形成されました。

資料:Stock Charts

エヌビデア「日足」です。5/22発表の好決算と株式分割発表を経て上に飛び「三空」です。6/20にはオールタイムハイを更新し、同時に「大きめの陰線」を形成しました。7/11には、6/20同様の大きめの陰線となりました。7/17には、窓を開けて下に飛びました。足元ではCEOの株売りの情報が出ていました。

資料:Stock Charts

エヌビデアは「週足」も見ておきます。長めの上髭つき陽線に続いて、大きめの陰線が形成されました。

資料:Stock Charts

ハイイールド債(ジャンク債)の「日足」です。7/10と7/11の間に窓が空きました。7/18と7/19は2日連続の陰線となりました。

資料:Stock Charts

ハイイールド債(ジャンク債)は「週足」も見ておきます。上が長い十字線の形成になりました。

資料:Stock Charts

セールスフォースドットコム「週足」です。同社が、四半期の売上高予想をミスしたのは2006/2以来(73四半期ぶり)との事です。5~7月期の売上高の伸びが過去最も低調になる(最大8%増の92.5億㌦)との見通しを示しました。予想通りならば、売上高伸び率は四半期として上場後の20年間で初の1桁台となるとの事です。この1年間で売上高が伸び悩んでいることが市場で懸念されており、経営陣はAI指向のソフトウェアや機能が売上高を押し上げると説明してきましたが、業界がAIツールにシフトする中でセールスフォースが存在感を維持できるかに懸念が強まったとの解説がなされています。(コメントは6/2を再掲、チャートは7/19までを更新)

資料:Stock Charts

アップル「日足」です。7/15(月)にオールタイムハイを更新しましたが、7/16の日足ともども「上」にアイランドとして取り残された様に見えます。ダウンサイドに警戒しています。

資料:Stock Charts

アップルは「週足」も見ておきます。オールタイムハイ更新こそしたものの、大きな陰線を形成しました。

資料:Stock Charts

大型テックETF指数「MAGS(Roundhill Magnificent Seven ETF)」日足です。6/21にヤルデニは「メルトアップの初期段階にあるという、明らかな兆候があります」と発言しています。7/10(水)にオールタイムハイ後、7/11(木)に大きな陰線を形成、その後は下落傾向です。

資料:Stock Charts

原油価格(WTI)日足です。7/19(金)に大きな陰線が形成されました。

資料:Stock Charts

原油価格を長期(2000年~)で見ておきます。

資料:Gold River

銅「日足」です。5/20のオールタイムハイ「5.20㌦」から調整中です。終わった週は、5日連続の陰線となりました。5.20㌦から4.24㌦までの下落率は18.5%となりました。

資料:Stock Charts

銅「週足」です。大きな陰線が形成されました。

資料:Stock Charts

銅価格を2000年から見ます。2024/5/20の「5.20㌦」まで急上昇してオールタイムハイ更新し、その後に急落しています。

資料:Gold River

銅については、以前から新規の鉱山(や鉱脈)の発見が乏しい事が指摘されていました。生産キャパシティを機敏に拡大するのは簡単ではない状況であるとの認識です。(再掲)

資料:S&P Market Intelligence、Gold River「X」

銅については、銅鉱石の品質の低下を指摘する意見もあります。低コストの銅はすでに全て採掘されており、今後残りの銅を抽出するには、より多くのエネルギー、時間、費用が必要になるとの指摘です。世界最大の生産者は、成長どころか生産を維持するのにも苦労していると以下の筆者は述べています。

資料:Brandon「X」

銅の使用用途について、2025~2050年の需要予測を示しています。送配電向けの需要が大きく拡大する予想になっています。

資料:Visual Capitalist「X」

NASDAQ 100「日足」です。7/10にオールタイムハイをつけましたが、それ以降には急落しています。

資料:Stock Charts

NASDAQ 100「週足」です。終わった週は、大きめの陰線を形成しました。

資料:Stock Charts

NASDAQ 100(青)は、2021/11の高値を100%とすると、7/10(水)に124.75%を記録しました。その後のアンワインド(巨大テック銘柄への集中からのアンワインド)で急落しました。

資料:Gold River

SOX(半導体株価指数)日足を見ます。オールタイムハイは、7/11(木)でした。終わった週では、窓を開けての急落となりました。

資料:Stock Charts

SOX「週足」です。オールタイムハイを記録した週の後、終わった週は大きな陰線となりました。

資料:Stock Charts

ラッセル2000と「日経平均ドル建て」の相関を見ておきます。

資料:Gold River

ここで「米国債利回り」(青線)を見ておきます。10年債利回りは4/25に4.702%で今年の利回り高値をつけ、7/19(金)は4.239%で週を終えました。赤線は、債券ボラ(MOVE)です。

資料:Gold River

米国の2年債利回り「日足」です。

資料:Gold River

10年債利回りと2年債利回りの「スプレッド」(緑)です。同スプレッドは、2023年にはマイナス1%超えまで大きく「逆イールド」が進みました。7/19(金)は -0.272%となりました。

資料:Gold River

実質金利とS&P 500です。ここでは「10年債利回り」から「BEI(Break Even Inflation、市場が予想する期待インフレ率)」を差し引いたものを「実質金利」(青線)としています。実質金利は、4/10(3月のCPI発表)以降は基本的に2%以上で推移してきましたが、7/11(6月のCPI発表)以降は2%以下で推移しています。

資料:Gold River

ドル円の日足です。160円をつけてから介入で152円まで下落した後、162円まで円安が進行しました。7/11(CPI発表)と7/12(ミシガン大サーベイ発表)で、為替介入ワンツーが入った模様です。終わった週では、ドル円は揉み合いながらの下落となっています。

資料:minkab

「円相場」です。主要通貨に対して円安が進行しました。世界の資源価格が上昇し円安となれば、円建ての原材料価格は上昇します。賃金上昇の好循環がもたらす物価上昇基調とは違った「コストプッシュ型」の物価上昇になる可能性があります。インフレの高進は経済を疲弊させます。そうかと言ってドンドン利上げをした場合、耐えられる日本経済なのかという問題があります。日銀には「円安を止める有効な手段」がない印象です。為替介入の効果は「一時的」に限定されます。

資料:Gold River

1980年以降の「ドル円」です。1990年の160.20円を抜けて、162円まで行きました。足元では一旦は、ドル円の上昇が一休みに入った印象です。

資料:Gold River

S&P 500に戻ります。冒頭のシンプルな「S&P 500」チャートに、200日線からの乖離率を加えたものです。今年のうち乖離率が大きくなったのは、3/21(FOMCの翌日)の14.04%と7/16(小売売上高の発表日)の14.84%でした。7/19の乖離率は、11.12%へ急落して週を終えています。

資料:Gold River

S&P 500とSKEWの関係を見ておきます。青いタテ線は、SKEWが当面の高値をつけた時です。そのしばらく後に、S&P 500が高値をつけるケースが見られました。この様な環境下、6/13にSKEWは再度160超えを付けました。良いサインであるとは受け止めていません。

資料:Gold River

SKEWが150以上でピークをつけた後、S&P 500がピークをつけた事例を以下にまとめました。以下の事例の範囲では、28~49営業日で株価がピークをつけて、大きめの調整に至る傾向がある様に見えます。

資料:Gold River

VIX先物について、「Non-Commercial」資金のネットポジションの推移を赤線(左軸)で示しました。青線はVIX現物(右軸)です。シカゴボードオプション取引所 (CBOE)子会社のCBOE先物取引所のデータを基にしています。毎週火曜日付けで出てくるので、最新データは7/16ものです。7/16(火)のVIX先物の差引のショートポジション(赤線)は「-62305枚」でした。赤線が上に行くほど、ボラが高まり易くなる可能性があると見ています。

資料:Gold River

S&P 500に加えて、ナスダック100、ダウ工業株、ラッセル2000をプロットし、合計4本の株価を並べました。2021年秋冬の高値を100として指数化してあります。ラッセル2000(赤線)には、儲けを出していない会社が4割ほど有るとの事で、特に留意しています。アンワインドでラッセルが急騰しましたが、その継続性について観察して行きます。

資料:Gold River

S&P 500、ダウ工業株、ドイツDAX、日経平均、日経平均ドル建て、の5チャートを「2021年末=100」として指数化しました。赤点線の「日経平均ドル建て」を見ると、ダウ工業株(青点線)やS&P 500(青実線)の戻りに追いつこうとする「キャッチアップラリー」が起きましたが、一転して急落しています。

資料:Gold River

ダウ工業株、ドイツDAX、日経平均の1985年からの長期株価です。各月の月末終値データを掲載しています。「日足チャートのみ」を見ていると気が付かない事が見えて来ます。様々な好条件が重なって、現在は「株価の大きな上昇が起きた後」である点に留意して下さい。「ここから買って」または「保有継続」で、本当に儲かるのか要検討です。仮に「下落したら〇〇%」と、仮に「上昇ならば〇〇%」を見積もってみて、「リスク/リワード」レシオを知っておく事は重要です。

資料:Gold River

バフェットはキャッシュポジションを積み上げ中です。魅力的な投資先が見つからない時の動きです。(再掲)

資料:Gold River

2019年上期までは5000円/㌔ほどでしたが、足元では14000円に接近中です。

資料:Gold River

全92チャート中46チャートまで来ました。これ以降さらに有効な情報が、チャートと共に続きます。知恵(投資についての正しいロジック)と経験値(正しい基礎をベースにした実践とその検証の経験の累積)を持つ人間が集まって、時間と労力をかけて作成しています。これより先を有料とさせて頂きますが、御理解頂ければ幸いです。

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