平野啓一郎の文の研究2


平野啓一郎

高度な隠喩表現と精緻な人物描写に圧倒され続け、行きついた先で私たち(読者)は救われる

  1. 難文の多い「日蝕」と「一月物語」の読了経験に、私は自信と関心を持ち、この長編2冊を意気込んで読み進める。

  2. 途中、作者の「情緒に満ちたメッセージ」や「ブンジン主義的技法」を、どの程度、正確に解釈できているのか、不安になりながら慎重に読み進めることになる。(特に、隠喩表現≒メタファーは、作者の意図と齟齬がないように何度も読み返す必要があった!)

  3. 高度な隠喩表現と精緻な人物描写に圧倒され続けるが、結末で私たちは、今生きていること、ただひたすら、生き続けられていることの安堵とその意味を問われることとなる。

  4. この長編2冊は、心の最も深いところに沈殿していた「清濁」を攪拌し、スノードームの中で輝く仕掛けのような、流動的かつ反射的な「煌めく残像」を深層心理に閉じ込めてくれる。

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