夜想曲

照射台に打ち鳴らした冷や水

冷水の温度はうらほのぼのとして

自己の大した犠牲も差し出すことも出来まい

照射台には孤高のガンナーが

野草の茂みで俯く猫を射殺そうとしている

照準を合わせ、留め金を引いて、

ぶるぶると、凍り付くように震える

時を遅らすほどの寒気が背筋を撫で

垂れ落ちる汗はアメジスト

歪曲した自愛を愛し憎み愛し哀悼歌を添える

指先の哀訴、弾丸のささやかな衝撃

たったひとりの、

ひとりのための夜想曲

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