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gohey's KPOPwatch #2(2016.02)

年度末の過密に吞まれ(なにせ筆者サラリーマンなもので/スンマセン!)ほとんど1ヶ月遅れの更新となりましたが、ようやく連載第2回、2月分のKPOP楽曲の個人的総括です。

さて2016年2月は、月のあたまから中旬までは大型リリースもさほどなく若干地味な前半でしたが、ちょうど2/15くらいから途端に大型アーティストの新曲Teaserが続々投下され、そのまま一気に1週間程度で今年の上半期を語るうえでも重要になる数曲を含む大型リリースがドドドッと一息に出揃うという濃密な月後半、で結果充実しとったなぁ、という1ヶ月でした。さぁそれでは順に振り返って参りましょう。

※本連載における「◯月」の判断は、基本的にはyoutubeに動画がアップされた日付(=必ずしも楽曲のリリース日ではない)をベースにしています。また、楽曲紹介順はなんとなく動画アップ日順ですが、厳密ではありません。メジャーもインディーもごっちゃ混ぜ。以上何卒ご容赦ご理解のうえ、どうぞ。

■「Think」Reddy feat. JayPark
(label: HI-LITE Records/composed: JayPark,Woogie)

韓国のインディHIPHOP界を見通す際に絶対に避けて通れない才能集団=HI-LITE Records(リリースは同レーベルを傘下におさめるC&M Entertainmentから)に所属し、デザイナー、スタイリスト、ファッションモデルとしても活躍するラッパーのReddy。彼、およびHI-LITE Recordsについては日本においてヴィヴィアンさんの記事を超える紹介は無いので是非ご一読いただくとして、今回Reddyがfeatに迎えたのは、もはや現代韓国R&B〜HIPHOP業界の最重要人物と言って良いのでは、なシンガー=Jay Parkことパク・ジェボム!この曲でJay Parkは作曲にも参加しており(もうひとりのプロデューサー=Woogieについては調べがつかず。誰か詳しい方教えてください!)、もう文句無しの良曲に仕上がってるのではと。だし、たとえばこの曲はUSオーバーグラウンドで昨年末リリースされたMyaのスマッシュヒット曲「Team You」と近似してたりして(まぁ定番進行な曲だからこれに限らず似てる曲はたくさんありゃするんですが)、それぞれ異なる経路から入りつつ世界のR&Bトレンドがなんとなく同期している様子はなかなか面白がれるポイントかと。あ、あとこの盤のジャケすげえ洒落てます


■「NFS(Not For Sale)」Nucksal
(label: Vismajor Company /composed:Deepfry)

Vismajor Company(VMC)の総統Deepflowによって2014年に同レーベルに迎え入れられたラッパー・Nucksalが待望のファーストアルバムをリリース。
彼自身が長らく自らのコンセプトのように掲げ続け、今回のアルバムのタイトルにもなっている「God of Small Thing(小さきものたちの神)」というキャッチフレーズは、インドの女流作家/批評家であるアルンダティ・ロイによる同名処女作(1997年ブッカー賞受賞)にインスパイアされているらしく、このあらすじ読んでも、またそれをNucksalが引用してるのも含め、是非一度読んでみたいなと思っておりますが。
リンクした楽曲動画では若干ボーカルのミックス強めで思わず聞き逃してしまいそうですが、実際の音源で聞くとコレDeepfryによるトラックがすげー超かっこ良いので、是非動画で一聴して「あ、良いかも、」と思ったらもう音源買っちゃった方が良いと思うよ。俺買った翌日ハマり過ぎて1日20回くらいリピートしたくらいですもん。大好きな1曲。


■「Pit a Pat」YU SEUNG WOO
(label: STARSHIP Ent.)
SISTERやMONSTAXらでお馴染みSTARSHIP ENTERTAINMENT所属のYU SEUNG WOO(ユ・スンウ)くんの3rdアルバム「Pit a Pat」。スンウ君のこと知らなかったので改めて調べてみると、もともと現地のTV局=M netで放送されていたオーディション番組「Superstar K4」に当時高校生として出演し、最終6位まで残る健闘を見せた天才少年だったご様子。
今回敢えてアルバム1枚として紹介するのは(※本当はyoutubeでアルバム全曲を束ねたリストをリンクしたかったのですがnoteの仕様上出来ないようなので、この曲聞いて良いと思ったら関連動画の欄から全曲聞いてみて)、これ、アルバムトータルとしてすげえ良いんですよ。彼自身はギター抱えて歌う、いわゆる”シンガーソングライタータイプ”のミュージシャンで、もちろんその音楽性は足場にしつつも、ちょっとR&B趣味なデュエットソング「45.7cm(めっちゃ好みです)」など風通し良い曲を挟みながら、染みったれてない絶妙に耳馴染みの良い清潔な「ポップソング集」としてなかなか水準の高い一枚だと。ジャケ写の“韓国アイドル坊や”感によってついスルーされそうですが、彼がこの盤でやれてることは、日本も含め多くのポップシンガーが案外やれてない洗練だと思います。おすすめ。


* * * *
以上が2月上半期。その後リリースの振るわない約1週間を経て、バレンタインデーを折り返すくらいのところからすごい勢いのリリースラッシュへ。怒濤の下半期へ突入です。
* * * *

■「Deepend」Brave Girls
(label: Brave Entertainment/composer: Brave Girls、Maboos、JS)

ラッパー兼KPOP界における超重要プロデューサーで、自らの名を冠したレーベル「Brave Entertainment」を持つBrave Brothers、が手がける同レーベル看板アーティスト、がこのBrave Girls。2011年のデビュー以来コンスタントに活動を続けるも2013年のリリースを最期に3年もの空白期間に入り、その間に当初5名いたメンバーのうち3名が脱退、残った2名のもとに5名の新規メンバーが加入し7名のユニットとしてカムバックを果たしたという激動の後の新曲がこの「Deepend」。でその結果は、といえば、お世辞でなく僕がこの月に聞いたあらゆるKPOP楽曲のなかでもっとも洗練された1曲、と言って良いほど素晴らしいものになっている。
鍵盤やビートの響かせ方は現行UKのPOPS/R&B寄りのアプローチで、一聴したときには思わずちょっと物足りなさを感じさせるほど音数を削った構成ですが、これこそがこの曲のうまいところ。思わずリピート再生を誘わせる絶妙なアレンジは、さながらMV中の彼女たちの姿そのままに「ミニマムに引き締まった」印象。まるでボディトレーニングのような振付けも洗練されているし、彼女たちの衣装も「アスレジャー(アスレチック+レジャーを組み合わせた新語)ルック」として、いずれも現地でトレンド化しているらしい。
Brave Brothersのプロデュース仕事から有名曲を列挙していくだけでももはやキリがない上にその音楽性の幅もかなり広いわけですが(それこそ先月のDalShabet「Someone Like U」も彼らの仕事!)、個人的には昨年のBoAの超傑作曲「KISS MY LIPS(本当にこの曲は最高だったなあ)」に通じる、ミニマムな洗練を湛えたながらなおポップ、というなかなか無いバランスを成立させているという点でもう問答無用に注目すべき1曲。ホントこれ素晴らしい。


■「Overcome」NU'EST
(label:LOEN Entertainment/composer: 계범주, Maxx Song, BUM)

2012年のデビュー前からAFTERSCHOOLの後輩として注目を集め、汎アジアでデビューを重ねて「その年一番の注目新人」に挙げられた過去を持つ、固い人気の5人組NU'EST(ニューイースト)。4th Album「Q is.」からのシングルトラックであるこの「Overcome」は、鶴山文化社(?どなたか詳しい方、ご教示ください!)の作家キム・カンウォンの著作「女王の騎士」にインスパイアされ、メンバーたちも「女王を守る騎士」という設定のもと手指先までを刀に見立てた振付けの群舞=カル群舞を披露するとか(いやコレなかなか見物だしMVもキレイなんですが)、さらにメンバーのレン君が少女漫画みたいな長髪キャラになってたりもして、30代男子にはなかなかオ、となる独創的なアプローチ含みでしたが、楽曲はといえばもうびっくりするほど良い曲。
ちなみに当楽曲を含むアルバム「Q is.」には他にもポップスポテンシャル高めのこれとか、シティポップ風のニュージャックスイングみたいなこれとか、聞き逃すべきでない佳曲も多数。是非ご興味ある方はご一聴を。

■「Drip Drop」TAEMIN
(label: SM Entertainment/composer: Jamil `Digi` Chammas, Jonathan Perkins, Michael Jiminez, Sara Forsberg, Tay Jasper, Leven Kali, Paul Thompson `MARZ`)

人気グループSHINeeの最若手でありながら美麗なルックスとダンススキルで人気を集めるTAEMIN(テミン)のソロ。大変印象的だった佳曲「Danger」を含む2014年のミニアルバムから1年6ヶ月を数えて待望のリリースとなった今回の1stフルアルバムだが、なんとあの(あの!)ブルーノ・マーズをプロデューサーに迎えた楽曲なども含む超豪華盤なうえに、楽曲、パフォーマンス、MVとも大変な水準のものをぶつけて来たSM Entertainmentの本気が伺える快作であり、実際現地でも大変なヒットとなっているようで嬉しい。
この「Drip Drop」は、サウンド的には(これまた)UK発のSnakehipsあたりに通じるR&B経由のネオハウス的なアプローチの、きわめて垢抜けた楽曲に仕上がっているのはもちろん、極めつけはやっぱりこのMVに尽きるでしょう。見事なダンスとそこに徹底フォーカスして魅せきるMV演出。紛れもなく上半期を代表する1曲の誕生かと。

■「Press Your Number」TAEMIN
(composer: The Stereotypes, Bruno Mars, Philip Lawrence)

でこちらが上述した、ブルーノマーズの参加曲。聞けばなるほどサビがばっちりブルーノ節だとわかるはず。上記の「Drip〜」も含めバックダンサーはすべて欧米人で揃え、楽曲制作にブルーノ起用と、SM Entertainmentがどれだけ本気で北米市場を意識した采配を積み上げているかがお分かりいただけるだろうし、実際リリース後1ヶ月かなんかで「北米で最も良く見られた韓国MV」の上位をこの2曲が独占したとも聞いている。が何よりきちんとそれに足る楽曲とパフォーマンスにまで昇華しきっている事実こそをやはり何より注目されたい。お見事。


■「Galaxy」Ladies' Code
(label: Polaris Entertainment/Composer:이주형 (MonoTree), 노파리(NOPARI))

2013年にデビューした5人組ガールズユニットだった彼女たちはそのわずか1年後、メンバー全員を乗せた車両の交通事故によって同乗していたメンバー2名が亡くなるという、アイドルユニットとしては想像を絶する悲劇に見舞われて以来 長らく沈黙を続けてきたが、この度新メンバーを加えることなく3名でカムバック。彼女たちの心中を察するだに、カムバックを果たしただけでももう十分胸を打つというのに、加えて本当に素晴らしい楽曲&パフォーマンスの1曲になっていて感動する。プロデュースは本連載1月号でも頻出した名プロデューサーユニットMonoTreeによるもので、喪失感漂う切ない楽曲に「宇宙の果てでの再会」という極めて含みのあるリリックを乗せることで、彼女たちが受け入れて乗り越えるしかなかった宿命の哀しさ、儚さ、美しさ、とあらゆる情感を内包化して、その悲劇を詩的に昇華してしまったこの楽曲は、まさしく今の彼女たちでしか歌いこなせない切実さが滲む。3人での新たなスタートを切る決意を表明する「3」のモチーフの反復も含め、「このときこの人たちでしか歌えない楽曲」ってやつが生まれる瞬間を目の当たりにしてしまえることこそ、こうしてリアルタイムでポップスを追うことの意義だよなあと痛感する。しかも何がうれしいって、現地でこの曲がきちんと売れてるってことで(更にこのあと2枚リリースが続く予定だとか)。本当に良かったね、おかえりなさい。


■「You're the Best」MAMAMOO
(label: Rainbow Bridge World,LOEN Ent./Composer: キム・ドフン, DUBLESIDEKICK)

まずはじめに言っておくと僕、彼女達についてはキャラクターまで含めてもう大好きなので、以下文中での評価はどれも3割増くらいとご理解ください笑。
2014年のデビュー以来、誰もが認める超絶歌唱力と、気の良いメンバー同士の仲良しぶりが愛すべき「歌ウマひょうきんおねえちゃん」ユニット=MAMAMOO。見てるこっちが多幸感を覚えるほどに愉快なねーちゃんたちでありながら同時に、これまでリリースされてきたミニアルバム群はいずれもラインを超えてくる上出来のものばかりで、昨年リリースの「UM OH AH YEH」なんかは良くリピートして聞かせて頂きました。
で今回待望の1st フルアルバムということで期待が集まるなか、まずプレシングルてことで同2月に「Pride of 1cm」がリリースされたわけですが、これまでの彼女らのシングル傾向からしたらへーこの曲でシングル切るのか、て僕には当時ちょい意外で(今となってはいかにも彼女達らしい、好きな1曲になってよく聞いてますが)さてアルバムどうなってんかなーと待つこと数週間。
でアルバムリリースと同時期にMVが発表されたのがこの「You're the best」だったわけですが、あーもうオールオッケー、やっぱいまMAMAMOOガゼン最高ですわねと相成った。プロデュースはKPOP作曲家としては大変有名なるキム・ドフン(MAMAMOO仕事もおなじみ、というか彼女たちのユニット名こそまさしくキム氏の楽曲に由来しております)に加え、ハイここでも来ましたDUBLESIDEKICK(イダン・ヨプチャギ)!そうでしたかダブルサイドキックなら楽曲も良いわけたい…!てことで。
やもうMV見てても、この突き抜けてポジティブな陽気さと、同じく突き抜けるように気持ち良い歌唱力は本当聞いてて&見ててつくづく痛快最高でしょう。もはや彼女たちのキャリアでもコレ一番好きな曲かもねですよ。やーもうお父さん、彼女にするならこんな子たちが絶対良いと思うな!すごい好きですMAMAMOO。

■「Feel Alright」TK feat. Hwaji , ODEE
(Label: VisMajorCompany /composer: TK)

今月2曲目に紹介したNucksalも所属するVisMajorCompanyのプロデューサー=TKによるニューシングルがさっくりリリースされてます。韓国ヒップホップシーンを日本語で紹介してくださる信頼のサイト=HIPHOP[K]ONVEYの記事によると、現在このシングル曲を含むTK名義のアルバムが絶賛製作中とのこと。やもうこれ是非とも心してチェックして待ちましょうですよ。良曲。


と、ここまでが個人的な2月の大注目曲。

上記以外にも、日本でもタレント的な人気もあるらしいKim Woo Jooの「Separate Ways」がなかなかのR&Bバラード良曲だったり、Jeong Seul Giの「U&I」はポップスとして愛好せずにいられない好曲。KIXSの「Please Come Back(Soul ver.)」は本文でも登場したDUBLESIDEKICKのメンバーChancellorも参加ってことでさすがの生っぽいR&Bナンバーで良いし、K-SHINの「m.E」は一聴したときマジで「アレ?origami productionsて韓国進出したの?」て思うくらいにovallなど日本の“あのあたり”のアレンジに近似しており、このへんの潮流は引き続き様子を観察していきたいと思う次第。
あといわゆる「日本のシティポップ(あえて括弧付き。聞いたらわかるはず)」的アレンジが耳を引くLUCID FALLのコレや、eddy kimがイケてるラッパーbeenzinoをfeat.に迎えた歯切れの良いコレとか、2月リリース以降いまも現地でスマッシュヒット勢い続いてる90s洋楽ポップスライクなB.A.Pのコレ、ほとんどアニソンみたいに頑強なアレンジで一瞬後ずさるけど妙に耳に残って嫌いになれない4TENのコレなど、相変わらず豊作ですKPOP。

て書いている今はすでに3月中旬、そして記事アップ出来たのは4月初旬。てことで実は早くも3月記事で取り上げるネタも概ね決まってるわけですが、どうぞご期待ください。3月には個人的“2016年上半期ベスト級”早くも確定か、なる超曲もリリースありました。てことでそちらはまた近日発刊予定の次月号にて。今月も長文お付き合いありがとうございました。

gohey


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