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中原中也の生前発表評論「宮沢賢治全集刊行に際して」を現代新聞表記で読む


中原中也が宮沢賢治に関して
生前に発表した評論は
「宮沢賢治の詩」のほかに
「宮沢賢治全集刊行に際して」
「宮沢賢治全集」があります。

いずれも
昭和9年(1934年)10月に
文圃堂書店から刊行が始まった「宮沢賢治全集」(全3巻)を紹介したものでした。

「宮沢賢治の詩」に続いて
「宮沢賢治全集刊行に際して」
「宮沢賢治全集」も
現代新聞表記で読みましょう。

今回は、「宮沢賢治全集刊行に際して」を読みます。

昭和10年(1935年)1月発行の文芸誌「作品」に発表されました。

原作は、青空文庫で読めます。

【現代新聞表記】
※読み易くするために、洋数字に変換したり、原作にはない改行(行空き)を加えてあります。

宮沢賢治全集刊行に際して

 宮沢賢治全集の、第1回配本が出ました。僕は彼の詩集、「春と修羅」を10年来愛読していますが、自分が無名のために、この地方で印刷された驚くべき詩集を、皆さんにお知らせする術を持ちませんでした。

今年、「宮沢が死んだ」と聞いた時には、大変気の毒に思いました。すると間もなく、彼の全集が出ると聞いて、喜んだことはもちろんですが、かえって忌々しい気もしました。例えば、2か月も気持が腐って、湯にも入らない後で、たまたまお湯に入ってごらんなさい! 脳貧血を起こさないまでも、一層がっかりしますから。それと同じようなことです。

 この我々の感性に近いもの、むしろ民謡でさえある殉情詩が、この殉情的な国で、今まで読まれなかったなぞということは不思議だと、今度この全集の第1巻が出た後では、諸君も必ずやそうお思いになることと思います。

 今は多くを申しません。いづれ「明治・大正詩人論」という書が近々出るわけですから、その中で宮沢賢治のことは、詳しく論じたいと思っています。

 全集が広く読まれることを希望しつつ、広告の一助にもとちょっと一言申し述べます。

真ん中あたりに、

この我々の感性に近いもの、むしろ民謡でさえある殉情詩が、この殉情的な国で、今まで読まれなかったなぞということは不思議だ
――とある下りに
賢治の詩への言及があります。

我々の感性に近い
むしろ民謡でさえある殉情詩

この短い文の中にも
中原中也が存在しますね。

今回はここまでです。



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