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「Sガストの思い出」好きなもの#1

食事をする。

仕事で疲れたとき、運動して活力不足のとき、休日に気持ちをリフレッシュさせるとき。

 

体を動かすための栄養に、お腹を突っ張らせてせてストレスを解消するため、暮らしの清涼剤に。

 

私はおいしいものを食べるのが好きで、自身もよく外食をするがあまり高い店には行かない。貧乏性なので、結局は栄養不足で死なないよう、とりあえず味がしてお腹が膨れればいいと思っている。高いがうまい、よりかは安くて量が多くてそこそこうまいほうがずっといい。食事は毎日必ずとるものだから毎食うまいものを求めて気苦労を増やすのは意味がない(もちろんおいしいほうがいいに決まっているが)。

だから必然的にチェーン店を利用する。深夜遅くまで空いているし、いつ行っても同じ味。変わらなさに安心するということがある。刺激を求める食事とそうでない食事があって、チェーン店は特別気にも留めないが生活に刺さっている後者だ。それにそこそこおいしい。

 

 すかいらーくグループが運営する「Sガスト」は安くて量が多く、自分の好みにあってかなり好きだったのでよく利用していた。

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通勤途中にあるので、残業終わって日が替わったころに夜ごはんを食べる、いわば飯場のような場所だったといえる。スーツを着た同じく残業明けのサラリーマンと肩を並べて。徹夜明けの朝ごはんにもお世話になった。朝ごはんのごはんの量が無料で選べるので、特盛にしておかずが足りず困ることがあった。そんな思い出がある。

だが、最近の情勢を鑑みてか、すかいらーくが持ち帰り業態に注力し、Sガストを大量に「から好し」に業態転換させている。

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もう都内にはなく、神奈川の日吉店しか残っていないようだ。Twitterの投稿によると日吉店も 7月5日で閉店してしまうらしい。悲しい。大資本がやってるチェーン店は変わらなさがいいところだなと思っていたが、やはりビジネスなので世相を反映したモデルに転向していく。というかそもそも変わりやすい・変えやすい業態なのでチェーン店のほうがよっぽど変わりやすいのだった。


Sガストが好きだったポイントは学食のような雑多さと安さだ。安くて量が多くゼイタク言えば多品目のおかずが食べられてそこそこうまい、その要求はSガストが満たしてくれていた。松屋や吉野家は牛丼チェーンなので比べるのはどうかという気がするが、まだSガストに比べればお利口さんだった。やよい軒や大戸屋もそれぞれのよさがあるが、Sガストに比べるとお高く止まっていた感は否めない。Sガストは健康志向なんて特に気にせず、塩辛くて味が濃く茶色のおかずばかり出していた。


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ハンバーグ、竜田揚げ、豚肉甘辛炒め、ソーセージがひと皿に乗ったオールスター定食なんてものを出している。すごすぎないか? 大学の学食でこういうのあったらしょっちゅう頼んでたな。

ほかにもでかいハンバーグだけの「大バーグ定食」なんてものもあった。600円くらいで安い。メニューが全体的に強くて、腹が減ってるやつをお腹いっぱいにさせてくれるものばかりだった。食べてないけど鶏の唐揚げが15個とキャベツだけの「からあげ定食GIGA」なんかもあったな。量を食わせておけという感じで強い。味も濃いし。

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中でも自分が好きだったのはこの「マヨガーリック若鶏竜田丼」だ。前はガリマヨ竜田丼だった気がするけど名前が変わったのか?

鶏の竜田揚げに、にんにくと黒胡椒が混ぜられたマヨネーズソースがたっぷりかかり、竜田揚げのパリパリした衣と粉っぽさにめちゃくちゃ合う。繊細な味の広がりとかそういうのはなくて、にんにくマヨネーズがガツンと単調にぶっ叩いてきて全部なし崩しにおいしくなってしまう魔法だった。味が濃い。Sガストに行ったらほぼ毎回これ食べていて、出てくるたび見た目がおいしくなさそうなのもよかったな。390円でかなり安い。

Sガストは鳥竜田揚げをなぜか推していて、テイクアウト限定で竜田揚げ丼が290円だった。破格の安さだ。揚げ物がこの値段で食べられるとは驚きだった。コンビニのホットスナックじゃなくてごはんといっしょに揚げ物を安く食べたいときにちょうどいい店がなかなかなかったのだ。

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定食や丼についてくるみそ汁もかなりよかった。

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Sガストはみそ汁を「お店でだしを取るから美味い!」と推しておりなるほど確かにうまかった。ガリマヨ竜田よりも複雑なだしの味がした。浮いてるわかめも歯ごたえがあり、なんとなくいいものだったのではないかと今になれば思う。松屋のみそ汁と比べるとSガストのみそ汁に軍配が上がるだろう。

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あと卓上のごましおもよかった。特盛ごはん頼んでおかずがなくなったときによく使っていた。これまでの食事を振り返るとSガスト以外でごましお食べたことないかも。そこまで馴染みがなかった。ごはんのお供としてふりかけが用意されているのがSガストの細やかさだった。味はそんなにしなかった気がするな。印象にない。フレンチドレッシングかけたりもしてたな。

お冷は夏になるとうっす〜く緑づいた緑茶になっていた気がするが記憶違いだろうか。藻のようなにおいと味がした。


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そんなSガスト、冒頭に記したようにどんどん閉店してなくなっている。ガストはファミレスで高いし席についてメニュー選んでというのが面倒だからほぼ行かないがSガストはタッチパネルで好きなの選んで3分ほどで配膳されるのでとてもよかった。SガストのSは「Speed.Smile」のSだったのだ。これすごくよかったな。これにならって松屋もスピード松屋を出店してお金を入れると牛丼アタマがボチャボチャと落ちる機械を店頭に置いたりしてほしい。

というのはさておいてSガストはとにかくすばらしい店だったのだ。腐しているわけでは全くなく、ただ来るお客をおなかいっぱいにしてやろうという思いが感じられてそこに共感していた。脂っこいハンバーグ、喉に張り付くほど濃いソース、衣が盛り上がり食べごたえある竜田揚げ、だしがおいしいみそ汁。そのすべてがとりどりに光っていた。雑多さ、飾らなさは悪いことではなくその店だけが持つ味だった。チェーン店は最近どこも整然として清潔すぎるが、Sガストはそういった気概が滲んでいる珍しいチェーン店だったように思う。東京に来て3年目、東京で初めて存在を知り、最も通ったチェーン店だった(たぶん)。地獄下りの日常の川底を突いて前に進める棹で、さりげなく寄り添ってくれたSガストはすばらしくありがたかった。ガリマヨ竜田揚げ丼が後の店で継承されることを願いたい。


近所のSガストが閉店後、からあげ専門店「から好し」にリニューアルオープンしたので先日行ってきた。


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