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ばあちゃん

8/15の終戦の日が近いためか、お盆の時期になると戦争特集の番組が増える。

日曜日の昼間、帰省した俺はばあちゃんと一緒にテレビを見ていると徹子の部屋が放送されていた。

ゲストの櫻井翔と共に、戦争を体験した有名人が出演した過去の回のVTRを振り返り戦争の悲惨さをコメントしていた。

うちのばあちゃんは終戦当時小学生だったらしく、以前から戦時中の話を俺はよく聞かされていた。

そのため、ばあちゃんはこういった番組が大好物なのである。

そして現在、目の前の愉快な婆さんは当時の状況を解説者の如く事細かに、そして矢継ぎ早に不足情報をお届けしてくる。

過去に何十回と聞いた話を繰り返すため、聞いていられなくなった俺は早々と席を外そうと腰を上げた。

その瞬間、ばあちゃんは俺に見えるように胸元から一万円札をコンニチハ。

この話に付き合えば1万円もらえるんだぞ?

言葉にはしないが、ばあちゃんはそんな目で俺を見つめてきた。

俺は覚悟を決め、過去に腐るほど聞いたばあちゃんの戦争体験を聞き続けた。

できるだけばあちゃんを気持ち良くさせるように、相槌は大きく、時には感動したそぶりを見せ、辛い話には同情して見せた。

小一時間経過し番組が終了した。
戦争の話題から一変、CMの愉快なBGMが二人を和ませる。

気持ち良く話し終えたばあちゃん。
一万円が貰えるとホクホク顔の俺。

此処にとても素敵なwinwinの関係が成立した。

と思った束の間、熱いお茶を一啜りしたばあちゃんは俺に向かってこう言った。

「一万円貰えると思ったか?
そう簡単にこの一万円はやれんよ、かかったな」

御年88歳とは思えない強気なセリフである。

普通に悔しくなった俺は何も言わずにその場を離れた。

そしてもう一生、ばあちゃんの戦争の話は聞いてやらないと心に誓ったのである。

おわり。


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