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振袖販売は辛いよ

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本日のお題:振袖販売は辛いよ
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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本当に毎日暑いです…。季節はもう秋になっていてもいいのにいつまでも夏のままでして、そろそろ袷の季節?ほんまかいな、と言う感じです。来週から涼しくなるようなので期待してるんですがどうなることやら…。

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■振袖販売は辛いよ

今週のお題は「振袖販売は辛いよ…」です。このメルマガを長く購読されてる方はご存知だと思いますが、私は長年腰痛に悩まされております。姿勢の悪さからくる筋肉の痛みでして朝起きるときに「よっこいしょ…あいたたた」と言わないと起き上がれないぐらい、なかなかの痛みなんです。

で、最近知人の勧める整骨院に週2回通っておりまして、そこの先生が妙に気が合うというかなんというか、1時間治療してもらってる間、ゴニョゴニョとおっちゃん同士で色々お話をさせてもらってます。その先生も他の業界の話を聞くのが好きなようで結構話が盛り上がるんですよ。

先週も治療に行ってきたのですが、私もその先生も娘がおりまして、私が呉服を扱っているということで振袖の話になりました。今週はそんな振袖のお話をさせていただきます。

振袖販売ってどんなイメージでしょうか。単価が高くて19歳ぐらいになればみんな呉服店に買いに行くから商材として美味しいんちゃうーん!とか思います?一見うまく行って大々的に商売をしているように見えて実は中身は火の車、ということが有り得るのは数年前の某振袖販売店が成人式当日に破綻した騒動でなんとなく想像できると思いますが、振袖は呉服業界の中でもちょっと特殊な商品で、他の小紋や訪問着などと違ったノウハウが必要になるのです。

まず振袖販売についてお話しする前に昔ながらの呉服店の販売方法をお話ししておかなければ対比のしようがありません。というわけで昔ながらの呉服店を「JTG(ジャパントラディショナル呉服屋)」と名付けましょうか。いや、最近JTC(ジャパントラディショナルカンパニー=日本の昔ながらの企業)という言葉を知ったので使ってみたかっただけなので他で言っても伝わりませんよ笑。

JTGってほぼ昔からの固定客で支えられてるんです。おばあちゃんの時代からお母様、そして娘さんと親子3代で取引しているような方も珍しくなく、一度そこのお客様になるとずっとその店で購入し続けるという傾向があります。着物ってそこそこ高価なものですし、よくわからないものですから長いおつきあいの信用の置ける店じゃないと取引しづらいんですよね。おまけに最近はお客様が来られるとここぞとばかりに売り込む店も多いと聞きますし、昔から顔なじみの店でないと入りにくいです。

まあそんなわけでJTGはおそらく95%ぐらいは昔からの顔なじみの固定客に販売していると言っても過言ではないかもしれません。もちろん私も全国あちこちの呉服店を渡り歩いた訳ではありませんが、少なくとも私の勤務していた店、または同じ呉服店仲間も同じような状況でした。

固定客相手だと非常に商売がやりやすいんですよ。お客様の色、柄の好みは把握してるし、寸法も分かってる。生活水準や支払い状況、家族構成まで全て分かっているのでやりやすいのはもちろんなんですが、在庫を持たなくても商売ができるという点は非常に大きいです。

「固定客だと在庫を持たなくてもいい」と言われてもなんのこっちゃ、と思いますよね。固定客=馴染みの親しいお客様ですのでそういったお客様は着物が必要だったら事前に教えてもらえるのです。「今度留袖が必要だから用意しといて」なんて声をかけてくださるので「わかりました!じゃあ3日ほどお時間ください」と言えるのです。

馴染みの固定客ですから他の店に行くこともありませんし、お仕立てにどれだけ時間がかかるかもわかっているので必要であろう時期の半年ぐらい前に声をかけてくださるので商品を用意する時間も十分いただけます。もちろん家族構成も全て分かっておりますので呉服店側から「そろそろ娘さん結婚適齢期だから黒紋付でも用意しません?」という提案もできます。

ここでちょっと話は飛びますが、呉服業界には「浮き」というシステム(?)があります。呉服という商品は比較的高単価で、しかも色柄やアイテムを全て取り揃えるとものすごい商品数となってしまうので小資本の家業店が多い呉服店はそこまで商品を取り揃えるわけにはいきません。1枚の仕入れ値が5万だったとしたら1000枚在庫に置こうと思ったら5000万円が必要になります。また、在庫として揃えて年間100枚販売しても在庫が1回転するのに10年かかってしまうという商材です。これはなかなかハードルが高いため、必要な時に取引先から借りることができるのです。

借りるのは当然ある程度期間を区切ってという話になりますが、展示会期間の数日や先ほど例に出したようなお客様から依頼があった場合に30枚ほど、数日くらいなら卸問屋とちゃんと付き合っていて信用のある店なら拒否する卸問屋は少ないと思います。もちろんいつも借りるばかりで実績がなければ貸してもらえませんから、もし売れなくても1-2枚付き合って仕入れとくか、と余計な仕入れをしなければならないこともありますが、まあその辺はプロ同士の付き合いなので仕方がないですね。

こんな風にJTGは固定客が主ですので事前にお客様が必要なものを伝えてくださることが多く、お客様がいつ来るかわからないからニーズを先読みして商品の在庫を切らさないようにする、といったことが必要なくなります。お客様は展示会の大体の日程も把握しておられるので商品点数が多く出品される展示会に来られるため、小売店主催の展示会の頻度が多ければ多いほど、その傾向が強くなり在庫を持つ必要がなくなります。

とまあ、一般的なJTG(ジャパントラディショナル呉服屋=昔ながらの呉服店)はこのような形態の店が多いと思っております。

一方の振袖販売の現実をお話しいたします。振袖販売というのはマーケティングで言われる「レッドオーシャン」と言われる戦場です。レッドオーシャンというのは、検索して頂ければ詳しく書いたサイトが多数あると思いますが、簡単に言いますと競争相手が非常に多く競争が激化している状態のことで多くの企業がギリギリの戦いを強いられる市場のことを指します。

現代は個人情報保護法などの整備により名簿の売買は多少の制約がありやや手に入りにくくなったとはいうものの、それでもやはり来年、再来年に成人式を迎える女性の名簿は市場に出回っています。「どこからそんな個人情報が漏れてるの?」と思われるかもしれませんが、例えば懸賞やネットショッピングモールの会員になったり、振袖とは全く畑違いの会社に資料請求などしたことはありませんか?その時に個人情報についての規約を隅々まで読みましたか?そこに「他社に個人情報を提供する場合がございます」なんて書かれてたらもうアウト。○○県、○○市、性別、平成○年生まれ、その他様々な情報で細分化されて名簿業者にデータが蓄積されて1人10円-30円程度で取引されるのです。

先ほど書いたように個人情報についての意識の高まりから、学校の名簿作成等もなくなり、少しは名簿会社の持っている名簿の数が少なくなっているのは否めません(例えばある地区の成人式を迎える女性が半分から2/3程度しか掲載されていない等)が簡単に買えることは間違いありません。

JTGなら長年呉服店として営業してきて2代、3代とお付き合いをしてきた顧客がたくさんあり、その長年の信用は呉服店の宝であり、他社が参入しにくい一番の要因なのですが、振袖はそうではありません。

綺麗なパンフレットを作って、綺麗なダイレクトメールを作って名簿業者から買ってきた名簿にどんどん送りつけます。もちろん今まで呉服店とお付き合いのあったご家庭はお付き合いのある店で購入やレンタルすると思いますが、着物なんてお宮参りや七五三ぐらいしか縁がなかった、という方も少なくなりませんので「DM入ってたから今度の日曜ちょっと見にいってみる?」と店に足を運ぶわけです。親御さんがお付き合いしているJTGがあったとしても最近のお嬢さんはパンフレットを見て友達同士で店に行くということもあるでしょう。振袖の専門店の方もそれはよくわきまえており、昔のようななんとなく敷居の高い呉服店ではなく、店内の様子がよく見えて若い女性スタッフがたくさんいて入りやすそうな雰囲気で出迎えてくれます。

全く今までお付き合いがなかった店でもDMやパンフレットをどんどん送りつけることでお客様に来店していただける、従来の呉服店とは全く違う、参入障壁の低い商材なのですが、それが故に先ほど書いたレッドオーシャン市場であり、購入(レンタル)特典などで経費が非常にかさみ利益の出にくい構造になってしまうのです。来週はもう少し掘り下げて解説いたします。

次回に続く

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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