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振袖販売は辛いよその2

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本日のお題:振袖販売は辛いよその2
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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ようやく秋らしくなってきましたね。お風呂上がり9月も中旬にしてようやくエアコンのスイッチを入れることも少なくなり、少しずつ着物が売れ始めてありがたい限りです。いよいよ10月、本格的な袷の季節です。たくさん新しい柄を登録しておりますのでぜひご来店ください。

明日は毎月28日の仕入れの日で定休日となります。ご入金の確認や商品の発送、お問い合わせの返信等は29日以降になりますことをご了承くださいませ。

【プレゼント当選者発表】
9月も多数のご応募ありがとうございました。今回、見事当選されたのは

神奈川県逗子市 Y・M様(姓・名の順)

と決定いたしました!賞品は本日発送いたしますのでお手許に到着いたしますまでしばらくの間お待ちくださいませ。今回残念ながら外れてしまった方はまた来月ぜひご応募くださいませ。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

八重山ミンサーポーチ当選発表ページ

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■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。本店サイトは楽天などのショッピングモール価格よりも5-10%程度お安く提供いたしております。

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■振袖販売は辛いよ その2

先週の続きで「振袖販売は辛いよ その2」です。今週から読み始めたという方はnoteにバックナンバーを掲載しておりますのでまずはそちらをお読みいただいてからメルマガをお読みください。noteで「呉服のきくやてんちょ」で検索していただければ1ページ目に出てきます(ショッピングモールは他社のURLを記載するのは禁止されているので面倒ですがググってください)。

昔ながらの呉服店、ここではJTG(=Japan Traditional Gofukuya)と呼びますがこれらの店は95%ぐらいは固定客の売り上げで成り立っており、親子二代、三代のお付き合いをしているお客様も多く、がっちりと深いお付き合いをしているため参入障壁は高いけれど、振袖はフリーのお客様が多いため、比較的参入しやすい商材ということは先週書きました。

それに小紋や紬、訪問着や留袖など、振袖以外の商材はその柄や生地などの知識が必要です。特に昔からのお付き合いのマニアなお客様は高度な知識を要求されるのでかなり勉強が必要ですが、振袖は「可愛けりゃ勝ち(ちょっと言い過ぎ?・笑)的なところもあるのでその方によく似合うコーディネートを提案できればこの生地は○○、この柄は○○でして…なんてトークが必要になる場面は少ないかもしれません。そういった意味でも参入障壁が低く、問屋から仕入れる資金力さえあればなんとかなるかもしれません。

ただし!

先週書いたように参入障壁が低い分、どうしても競争が激しくなり経費も非常に多くかかる商材であることは確かではあります。参入しようとする企業からすれば「これから必要な名簿は手に入るし、単価が高めで粗利(注)も高い、ウハウハで儲かるやーん」と思うかもしれませんがいざ参入したら現実に直面し「こんなはずじゃ無かった…」と思うかもしれません。現に数年前の成人の日直前に破綻して大迷惑をかけた某振袖専門店は元々は振袖販売店向けの経営コンサルタントで業界のことをよく知っているはずなのにああいうことになりましたからね。

注:粗利とは単純に「販売価格-仕入れ価格」のこと。人件費やその他販売経費は含みません

こんなはずじゃ無かった、と思うであろう要因は振袖販売はとにかく経費がかかるということ。

私が以前に勤めておりました呉服店も御多分に洩れず振袖に力を入れておりました。先ほども書きましたように呉服店は親子二代、三代のお付き合いをすることが多いのですが、成人式の振袖販売はその新規顧客を獲得するための非常に有効な商材なんですよ。まず振袖を販売したらお嫁入り道具の黒紋付(喪服)、お母様の留袖、お宮参りに着る訪問着…。昔はレンタルもそれほど発達していなかったため、購入するのが当たり前でした。そのため振袖からお付き合いが始まって、節目ごとにお召しになる着物を全て一手に引き受けることができる、新規獲得の商材として位置づけられていました。

従業員10人程度の小さな店だったのですが、せっせとDMをつくって来年、再来年の対象者に毎週のように発送するんですよ。ちなみにそのDMは私がパソコンで手作りで作ってました笑。当時DMのハガキの送料は50円ぐらいだったかな、それを500人-600人程度に送ると25000円-30000円。それを毎週のように繰り返しますとDMの送料だけでも年間にするとちょっとした金額になります。

それでもDMを送ったら1-2枚でも売れれば元は取れるんですが、なにぶん競争の激しいジャンルですのでお客様のもとにも多くのDMや営業電話がかかってくるので多数の店の中から選んでもらわなければなりません。これがまた大変。

成人の日当日の着付無料なんて当たり前、前撮り時の着付無料も当たり前。成人式当日は髪のセット、記念写真がついてて当たり前、という時代になってきました。

着付は前撮りでしたら1人着せればいいだけなので通常の販売スタッフで対応できますが成人式当日となるとそうはいきません。大きな店になると成人式の始まる10時までに100人以上着せなければならないので着付師をたくさん確保し、美容師も手配、場所も店内では対応できないので大きなホテルの大広間を借りなければなりません。金額にすると100万や200万はあっという間に飛んでいきます。

ライバルの全国チェーンが綺麗なパンフレットを作って配布しているので私がいた小さな店もショボいパンフレットというわけにはいかないので同じように作って配布してました。振袖販売のグループに加入し、そのグループで十数ページのパンフレットを数百冊作るだけでウン十万近くかかっていたような記憶があります。ちなみにその当時まだ売り出し中だった佐々木希さんを表紙に使ったこともありました。

そして先週書きましたように、お客様はDMやパンフレットを見ていつ来店されるかわからないので常に商品は豊富な色、柄を用意しておかなければなりません。私が昔いた店は毎年1月に新柄を大量に仕入れていましたがいつも支払いになると社長が頭を抱えていたような記憶があります。平均5万円としても50枚仕入れると250万円というのは小さい店にとってはなかなか大変な金額でしたが、先週書いたようにいつお客様が来られるかわからないので取引先から借りておくこともできませんし、お金を出して仕入れざるを得ないのです。

私はもうそういう戦場(笑)は辛くなってきて現在のリサイクル店となったわけですが、今から思えばあの頃はよくあんなに一生懸命やっていたな、と思います。今も手を抜いているわけではないんですけど、経費や仕入れで最初にめちゃくちゃお金が出て行くので、プレッシャーが半端じゃないんですよ。まあそういったプレッシャーにより販売に一生懸命になりすぎて、お客様に寄り添うことができず押し売りのようになってしまうのかもしれませんが…。

最近は昔ながらの呉服屋でも振袖販売に力を入れるところは少なくなったような気がします。もちろん昔からの馴染みのお客様から注文を頂いたら大体の色や柄の好みをお聞きして仕入先から数日間借りてお客様に見ていただくというのは可能ではありますが、振袖販売を新規顧客獲得の手段で一番力を入れるといったことが少なくなったような気がします。昔はお嫁入り道具に黒紋付(喪服)や訪問着、色無地など一式持っていくのは当たり前でしたし、宝石を扱っているところでしたら仏事用のパールネックレス、子供が生まれたらお宮参り、七五三など全て購入していただけることが見込めたのですが、もうそういう時代じゃなくなってしまいましたから経費をかけても取り返せなくなったのでしょう。最近はJTGと新興の振袖専門店が二極化してきたように思います。

あくまでも私の感覚ですが、町の小さな呉服屋がタレントを使って目を引くような綺麗なパンフレットを作るのは難しく、どうしても大手の全国チェーンとの戦いは不利な状態になってしまっているのは否めず、振袖から撤退する町の呉服屋が増えてきたように思います。子供の頃からよく知っているお客様のお嬢様やお孫さんが立派になって振袖を買いに来られるのは呉服屋としてもとても嬉しいことなのですが…。

今週は以前振袖を頑張って販売していた者として負け犬の愚痴みたいになってしまいましたが(笑)、振袖専門店を見かけると「商材としてとても大変な振袖、よく頑張ってるなぁ」と敬意を込めた目で見てしまうのです。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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