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ラウドネス正規化の話を理解する

大前提

音が良ければそれが正義です。基準に準ずるラウドネスのマスターを作れば良い音になるわけでもないし、基準値をオーバーしたら必ず音が悪くなるわけでもありません。音の良いマスターを目指して下さい

ラウドネスがどういうものか理解がふわっとしている方は併せてこちらの記事もご覧下さい。

もう一つの前提

音量がただ大きくなっても音は変わりません。ただし、人間は大きく聞こえる音の方が良い音と感じます。もしマキシマイザーを入れて音が良くなったと感じたらそれはただ音が大きくなったことを脳がポジティブに受け止めているだけで、別に音が良くなったわけでもなんでもありません。騙されずにビフォーアフターの音量を揃えて(=ゲインマッチして)比較して下さい

ラウドネスって何?

人間の耳、脳が感じる音量のことだと思ってもらって大きな問題は無いです。ピーク、RMS等音量の測り方には他にもいくつかの方法がありますが、ラウドネス計測では人間の聴覚が如何に音量を感じ取るかをシミュレートした計算方法で数値を割り出すようになっています。

配信のマスターについて

いわゆるSpotifyやYouTube、ニコニコ動画などWEB上で再生される音声については、プラットフォームごとにラウドネス正規化というものが行われます。マスターを作る人にとって大事なのは基準値を超えるマスターを作っても再生時に強制的に下げられるということです。言い換えるとラウドネスの数値を高めるためだけのマキシマイザーを入れる必要が無いということです。更に言うと、マキシマイザーに引っかかりやすいローエンドを予めカットする必要もありません

というわけで配信向けのマスターを作る時はマキシマイザーを必ずゲインマッチした状態で使うのがオススメです。マスターチャンネルでの音作りで気をつけるべきは音の変化です。音量を上げる必要はありません(上げたって再生時に上げた分だけ勝手に下げられる)。

また、基本的には圧縮オーディオで配信されるのでCDよりは広めのピークマージンがあることが望ましいです

CDのマスターについて

CDはピーク値が0dBを超えられないこと以外に何の制限もありません。どこまで過激に信号レベルを上げても誰も邪魔する人は居ないので好きなだけマキシマイザーに突っ込むことが出来ます。ただ、以下の2つのポイントだけ注意が必要です。

・突っ込めば突っ込むほど音は汚くなる
・再生機器の音量はリスナーしか管理出来ない

もしあなたがマキシマイザーに過度に信号を入れすぎたマスターを作った場合、リスナーは「うわっ!うるさっ!」と言って再生機器の音量を下げるかもしれません。そうなると、あなたの音楽は汚い音で、且つ小さな音量で聴かれることになります

「音が汚い」の中身をもう少し説明しましょう。一般的にマキシマイザーでやり過ぎると音割れが発生します。アレンジやミキシングやマスタリングを工夫することでこれはある程度回避出来るのですが、それでも絶対不可避な次のような問題が生じます。

・スネアやキックのパンチが無くなる
・ステレオ感が無くなる
・上下の広さを感じられなくなる
・平面的で、奥行きや空気感の無い音になる

これらの変化を甘んじて受け容れて無理矢理レベルを上げるか、そうなる手前でマキシマイザーをストップさせるかは作り手の判断次第で正解はありません。楽曲の中にどれだけの立体感や臨場感、パンチが欲しいかでこのトレードオフと向き合って下さい。

TwitterやInstagramの動画の場合

2020年2月現在、ラウドネス規準が設定されたという話は聞かないのでCDと同じ考え方でいいと思います。ただ、CDよりも「うわっ!うるさっ!」と言われる危険性が高いプラットフォームだとは思います。

何も難しい話ではない

ストリーミングにおいては従来の「ピークが0dBを超えられない」という音量制限が「-○○LUFSを超えられない」に変わっただけです。ピーク正規化の時代も0dBを超えればデジタルクリップというきつい罰則がありましたし、それがラウドネス正規化においては強制的なレベルダウンになっただけの話です。

・デジタルクリップを防ぎたい→リミッターを入れる
・強制的なレベルダウンを避けたい→ラウドネスメーターを見る

こう書くとラウドネス正規化への対処が何も難しくないことが分かりますね。雑に言えば波形の音量を無駄に上げないだけでOKです。

結論

繰り返しになりますが音が良いことが一番大事です。ただ、ラウドネス正規化の話を知らなかったことによって自分が望まない音がリスナーの耳に届くことは避けられると良いですよね。

もっと詳しく知りたい方へ

Jonathan Wyner氏のAre You Listening?のシーズン2、エピソード5でラウドネスについて語られています。英語が読める方は是非。


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