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宅録対応可の演奏家になるためのTips

この記事では、ウィルス対策や自然災害等何らかの理由でレコーディングスタジオが封鎖された時に演奏家やボーカリストに何が出来るかのヒントを挙げています。言い換えると、家から出ずにスタジオレコーディングに近い体験をクライアントに提供するためのヒントです。この記事で何かがすぐ解決することは無いかもしれませんが、何を調べればよいかの糸口は見つかると思います。

既に宅録環境のある演奏家へのアドバイス

自宅で録音されたもののサンプル音源を公開することを強くオススメします。耳の肥えた作曲家、プロデューサーであればあるほど録音状態に対してシビアな感覚を持っています。仮に皆さん自身がアーティストで自身の作品を作っているのであればどんな機材で、どんな環境で録音をしたとしても何ら問題はありませんが、クライアントからの依頼を請けてレコーディングする場合「スタジオに行かなくても録音出来る」だけでは宅録のアドバンテージとしては弱いです。

宅録対応可能な奏者と、彼らを探している作家の皆さんへ

プレイヤーの情報が集約されている資料が無いことに思い当たり下記のSpreadsheetを全員編集可能な状態で公開しています。タブごとに楽器が分かれているので、宅録可能な楽器のところに情報を入れて頂けるとどこかで誰かが喜ぶかもしれません。とりあえずシートを作っただけなので運用することまでは考えていませんが、自由に書き込んで自由に助かってもらえると凄くいいなあと性善説的に思っています。

レコーディングスタジオの優位性

そもそも何故レコーディングスタジオが必要なのか。レコーディングスタジオでしか得られないアドバンテージを挙げると次のようになります。

・容積と響き、S/N比
・コンソールやアウトボード、マイク等の高額機材
・録りながらミックスが出来る
・プロモーションへの活用

以上です。30年前と比較してここまで減りました。

特にオーケストラなど大編成の楽器において奏者が演奏を行う空間が十分に広いことは極めて重要です。また、外部のノイズが紛れ込まない遮音性やアンビエンスの美しさもレコーディングスタジオの大きな価値の一つと言えます。それを理解しているスタジオはSunset SoundやCapitol Studiosのように自分たちの設備をプラグイン化したり、逆にインパルスレスポンスの収録を制限するところもあるとか。

デジタル環境の普及により音楽制作の金銭的なハードルは著しく下がったとは言え、やはり大型アナログコンソールや潤沢なマイクコレクション、アウトボード類は個人で揃えるのは未だ現実的では無いでしょう。

どうしても避けられない問題

万が一アビーロードスタジオのように国内のメジャーなスタジオが一定期間封鎖されてしまった場合絶対に出来なくなるものは何かと考えてみると下記の2点がぱっと挙げられます。(勿論他にもアンサンブルで録る音楽は当てはまります)

・オーケストラ/合唱/打楽器
・バンドの一斉レコーディング

オーケストラにしても合唱にしても打楽器にしても、楽器そのものの音だけではなくそれが響いている空間までを含めたものを楽器としてカウントするので狭いスタジオではそもそも求める楽器の音になりません。特に大人数のものはそれぞれの奏者のピッチ、リズム、ニュアンス、演奏位置のズレが重要なので、自宅で多重録音をしても再現することは出来ません。また、スタジオの響きをリバーブで完璧に再現することも非現実的です。

もう一つ困るのがバンドのレコーディングです。例えばフォーリズムがせーので録音を行うためにはスタジオがある程度広い必要があります。(これは5Gによって事情が変わるかも知れません

ホームレコーディングで対処出来る問題

上記の2点は諦めるとして、ホームレコーディング、宅録でなんとか出来る分野が無いか、また宅録でなんとかするために必要な準備について考えてみます。

宅録でなんとかなる楽器を挙げていこうと思ったのですが、正直なところソロ楽器全般は宅録でなんとかなります。そしてここにソロプレイヤーのチャンスがあります。レコーディングスタジオが豪華な設備を備えているのは「あらゆるスタイルの音楽、楽器のレコーディングに対応するため」ですが、プレイヤーが宅録環境を整える場合「自分自身の楽器をハイクオリティで収録するための必要十分な設備」だけ整えれば良いので、意外と金銭面のハードルは低いのです。そしてデジタル技術の発達により、宅録の品質を向上させればレコーディングスタジオと遜色ないレベルに持っていけるようになりました。例えばこれらの曲の木管は宅録です。

宅録でなんとかするために必要なもの、準備を挙げていきましょう。

・部屋
・機材
・録音の知識と技術

この先では

・部屋に必要な対処の調べ方特に対処すべきポイント
・楽器(特にギター)を録るのに適したマイク選び
・マイクとマイクプリの優先度
・宅録を行う際の初歩的な注意点(マイクプリやマイクの扱い等)
・録音後に対処しやすい問題としづらい問題
・今後スタジオ録音から宅録に移行していくべき楽器

について説明しています。

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