アートボード_1_4x

節子(仮名)との逢瀬。

現在出張10連チャンの4日目。明日で折り返しである。
覚悟はしていたが、出張前に納品するものを毎晩Joyfullの店員さんに「おかえりなさい」と微笑まれながらやり遂げて臨んだため、すでに疲労困ぱい。

宿泊しているホテルに併設されているマッサージサロンのフライヤーを初日に握りしめて部屋に入る自分が情けなかったが、初日の自分、グッジョブ!「今夜が山だ」とばかりに電話をかけようとした、そのとき。

第一週と第三週の水曜日はお休みです。

の文字が目に飛びこんできた。

あぁ、万事休す。ダメか。
しかし37にもなると往生際が悪い。
「何かの間違いで今日は開いているかも…」
携帯から電話する。
…と、ここで内心ドキドキしながらコール音を聞くシーンに突入しそうだが、あっけなく携帯へ転送がかかり、留守電に。

あぁ、万事休す、パート2。
百恵ちゃんも飽きれるくらいパート2が早くきた。

折れかけた心と今にも折れそうな首(折れやしないが)をなんとかもたげながら部屋でゴリゴリ仕事をしていると、知らない携帯番号から着信が入った。
このときにはすでにマッサージサロンのことは忘れており(ほんとに折れそうだったのかよ!)、仕事柄知らない番号からの着信は日常茶飯事なので誰だろうとあまり疑問に思うこともなく受話器をあげ…ではなく受話器があがっているマークのボタンを押した。

電話はマッサージサロンのオーナーからだった。
事情を説明するも、今日の施術はやはり無理らしい。
やわらかな物腰で「また出張で来られますか?」と聞かれ、「うーん、しばらくはないですね」と返すも、「後藤様のお名前、覚えておきます。次回お越しの際はサービスさせて頂きます。申し訳ありません」と若干かみ合わない会話が終了した。
(これを読んだ誰かが後藤の名を語って勝手にサービスを受けないことを願う。笑)

せっかく忘れていたマッサージという5文字への欲望が、折れそうな首とともに頭をもたげる。
「…まさか…まぁ、聞いてみるか」
37にもなると往生際が悪い。パート2。
私はフロントへのコール7番を押した。

「すみません…今日2階のマッサージがお休みなので、無理ですよね」
日本語がおかしいなと思ったが、後の祭り。通じず再度説明する覚悟で受話器の向こうに耳を澄ますと
「いえ、大丈夫ですよ。何時がよろしいですか?」
あっという間に予約が完了し、10分後に出張マッサージの方が来てくれることになった。

出張マッサージ。なんと淫靡な響き。
違う。そうじゃない。
これはれっきとした労働への報酬だ。
違う。そうじゃない。
言い訳は必要ない。

そうこうしているうちに、節子(仮名)がやってきた。
かすかにお線香のかほりがする。
節子(仮名)はどこかの店に所属しているのだろうか。
それとも個人でやっていて、ホテルから発注がある度にやってくるのだろうか。
ご主人はいるのだろうか。お線香のかほりはお仏壇のものなのか。それとも化粧なのか。(たまにいませんか?お線香っぽいかほりのお化粧の残り香をまとっている人)
子どもはいるのか。都会に働きにでていて、ほとんど連絡もよこさないとか愚痴がでてくるのだろうか。(胸が痛い)

そんな私の妄想をよそに、節子(仮名)は突然ベッドを転げそうになりながら冷房のボタンを押した。
「すみません…走ってきたので冷房を強めにしてもいいですか?」
「え?あぁ、どうぞどうぞ」
節子(仮名)の息は確かに荒かった。
何もそんな、走ってこなくても。
しかしこれは待たされてパート3に突入する私の心を遠くから斟酌してくれたに違いない。節子(仮名)、ありがとう。

やっと本題なのだが、結果的に節子(仮名)のゴッドハンドで回復したとはいえ、さっさと寝ればいいものをこんな妄想ブログをなぜしたためているのか。
それは、節子(仮名)との逢瀬によって、頭と脳をほぐされ、文字通りかなり回復したからに他ならない。

「女性のお客様にしかしないんですよ、頭のマッサージ」
「え?なぜですか?」
「男性のお客様は、頭に触れると嫌がられる方が多いんです。…ズレるからでしょうかね」
…節子(仮名)、私はコリをほぐしてもらうためにあなたに来てもらったのに、ベッドに寝そべって笑わせるとは何たる羞恥プレイか。テクニシャンか。
しかし本人は笑わせるつもりは毛頭なかったらしい。
私の37にしては偏屈に凝り固まった頭と脳のコリを見事にほぐしまくり、その後もみっちり60分、快楽の極みにまで誘ってくれたのである。

節子(仮名)、ありがとう。
しまいにはお線香のかほりすら忘れられない残り香になったよ。
節子(仮名)、ありがとう。
マッサージサロンのオーナーには申し訳ないが、もしまた出張で来ることがあったら、私は節子(仮名)に逢いたい。そう、パート2を。

節子(仮名)、ありがとう。

おしまい。

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