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ナッジで伝わるプレゼンに⑥:脱線した方がよい?

読者から質問をいただきました。「プレゼンで脱線は入れた方がよいのでしょうか?学生時代、先生の脱線話が面白かった思い出があります」

ここでは、脱線を「テーマと一貫したストーリーラインから外れた展開やエピソード」と定義します。私はストーリーラインに忠実なプレゼンをEasyナッジとして推奨していますが、今回はあえて脱線する場合の注意点を3つお話しします。

脱線エピソードは、適切に使えば聞く人の刺激になり、記憶に残るものです。一方で、思考の迷路に陥らせたり、脱線の方が記憶に残ったりする場合も多くみられます。では、適切に使うにはどうしたらよいのでしょうか?

①脱線エピソードは事前に準備
脱線話は、ストーリーラインから外れるため、相手の脳を疲れさせる可能性があります。それを踏まえて使うのですから、綿密な準備の上、反応をきちんと確認する必要があります。「プレゼン会場で思いついたネタをそのまま話す」は、相手を思考の迷路に連れていき、集中力を失わせます。発表者も「言わなければよかった」とプレゼンの最中に後悔し、持ち時間も不足…準備をしっかりすればこの事態は避けられます。
予行演習で反応が良ければ採用し、なくてもそんなに問題なければ、省略した方がよさそうです。ちなみにTEDトークでは1分に1回以上のジョークを入れるよう推奨されることもありますが、予行演習で好反応がない限りは、入れない方がよいと考えます。

②脱線はプレゼンの中盤で
脱線するなら、プレゼンの中盤をお勧めします。テーマをはっきりと示した上で、テーマを引き立たせるために、脱線は行われるべきです。逆にいうと、聞いている人がテーマを具体的に腹落ちする前に脱線してしまうと、混乱が生じます。
また、プレゼンの最後が最も記憶定着します(ピークエンドの法則)。最後に脱線話を入れると、脱線だけが記憶に残る状態に陥ります。脱線は戦略的に、プレゼンの中盤でコンパクトに行うべきです。

③脱線の最初と最後に宣言
聞いている人は、ストーリーラインと脱線エピソードの違いを瞬時に区別できません。このため、発表者がハッキリと示すことで、負荷が軽減され、混乱も防げます。具体的には、脱線の最初を「ところで話はそれますが」で始め、終わりを「話を戻します」と宣言するのが最適です。プレゼンの名手と呼ばれる方は、脱線話になると立ち位置や声のトーンも変えて、雰囲気の違いを演出する方もいます。

もし、これらをする余力がないのなら、脱線しないことをお勧めします。脱線はリスクを伴う高度なテクニックであり、私たちは「脱線しない勇気」を持ちたいものです。
今日も最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。


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