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ナッジで伝わるプレゼンに⑫:「私は本番に強い」って本当?

自信過剰バイアスは罪深い?

私は行動経済学を長年研究し、自分がバイアスの塊ということに気づきました。行動経済学はバイアスを掘り下げていく学問です。行動経済学の研究を読み解くことで自分自身の内面を客観的に知ることができます。

さて、私はプレゼンでは「自信過剰バイアス」に注意しています。「当日、アドリブでも何とかなる」「タイムマネジメントをしっかりしなくても、当日柔軟に対応できる」「いざとなったら火事場のくそ力が出てる」…これらは自信過剰バイアスがもたらす罠です。このバイアスが厄介なのは一貫性がないことです。バイアスが勇ましいのは本番5日前あたりまでで、本番が近づくにつれて、手のひらを返したように静まります。代わりに損失回避バイアスが優勢になり、「このままではだめだ。どうしよう…」と不安を煽ります。
本来、自信過剰バイアスは自己効力感につながるポジティブな側面を持っているはずなのですが、肝心な時に役に立たないことも多いのも事実。その意味で、自信過剰バイアスはとても罪深いバイアスと言えます。

コミットメントが効果的

私も過去、「自信過剰バイアスの手のひら返し」に苦しめられました。この問題に対して、行動経済学ではコミットメント(将来の行動をあらかじめ縛っておくこと)を提案しています。自分自身へのSocialナッジと位置付けられます。

具体的には、予行演習の相手を募って日程を早めに入れることを推奨します。計画を立てる時の自分は比較的合理的であり、「このくらいのペースで予行演習をやれば大丈夫かな」という判断ができます。
「せっかく予行演習に付き合ってくれる相手に迷惑が掛けたくない」という心理が、自信過剰バイアスによる楽観的思い込みにブレーキをかけます。私は本番1か月前から予行演習を入れており、おかげで本番直前で焦ったことは何年もありません。

昔の私は本番でいろんなことを思いつき、いざそれを話し始めたら着地点が見いだせないことも多々ありました。「予行演習した内容以外話さない」と決めておくことで、その場の思いつきをコントロールすることができます。思いつきは大ヒットにつながる可能性もありますが、設計以外なので全体のストーリーを歪め、相手を混乱させる可能性があります。
予行演習の最大のメリットは、本番では相手の目を見ることに集中できることです。プレゼンは相手へのプレゼント。きちんと相手の目を見て渡したいものですよね。

※YouTubeで1日おきに、120秒ナッジトリビアを発信しています。「たけばやし博士」をチャンネル登録してくださると、励みになります。


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