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ナッジで伝わるプレゼンに③:ノイズを除去

前回は「相手の集中力は有限なので、脳を疲れさせない」というお話しをしました。では疲れないプレゼンにするには?ーー行動経済学に基づく私の答えは「テーマに直結しないものは捨てる」です。これはEasyナッジに該当します。

発表者と視聴者の埋めがたいギャップ

プレゼンする側は全神経をプレゼンに集中しています。一方で、聞いている方はさほど集中力しておらず、そんな中、次の3つのプロセスを行います。

(1)内容に意味があるかどうかを判断する
(2)意味がない情報を避ける
(3)論点とそれに対する意見を整理する

あなたが面白いと思って話している内容も、テーマと直結しないものは相手にとって不快なノイズになる可能性があります。ノイズをカットするメリットは、(1)と(2)がなくなることです。

なぜノイズ除去が大切?

ここでクイズです。

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正解は③です。あなたが昨日接した情報は、紫式部が一生かかっても得ることができなかったくらい大量のものだったのかもしれません。その情報全部に反応していたら、脳は一瞬で疲弊してしまいます。ノイズに対し集中力を切るのは、生き抜くために不可欠な機能です。

出だしの1分がゴールデンタイム

そのために私が最も配慮しているのはプレゼン冒頭です。冒頭1分間は大半の人が聞いてくれる、ゴールデンタイムです。ここで「私のプレゼンは全てテーマと一貫しているので、あなたは要否を判断する面倒がありません」と伝えることができれば、その後の展開が断然有利です。脳は思考のショートカットが大好き(ヒューリスティクスと言います)で、この特性を味方につけない手はありません。逆に最初にノイズを与えてしまうと、相手は「きっと全体も脱線だらけで、疲れそうだな」とネガティブモードへと直行します。

プレゼン内容において、何が不可欠で何がノイズかは一律に言えませんが、ノイズの確率が高く冒頭で言うべきではないフレーズを3つ紹介します。

①「自信はありませんが」
②「あのー、えー、えーと」(いわゆる「言い淀み」)
③「これからプレゼンを始めたいと思います」

①「自信ない」…これはネガティブワードで、相手をネガティブモードに直行させるリスクが高いです。「万全の準備をしてきましたが、ここに来ると緊張するものですね」と言うのは、ポジティブでアイスブレークの役目を果たすでしょう。でも、「自信ない」は、似て非なるものです。私はプレゼンで「自信があります」「聞く価値があります」と言うことが多いです。

②言い淀みは「あまり準備せずにのぞんでいます」を相手に伝える強烈なシグナルです。沈黙は相手に考える間を与えますが、言い淀みは疲労感を与えます。言い淀みはピタッと文末で止めることで防止できます。言い淀みするくらいなら、沈黙した方がずっとよいです。

③「これから話を始めたいと思います」…これは2つの理由からお勧めしません。
(理由1)既に話し始めているのに、「始めたいと思います」は、全く意味がないから。
(理由2)聞いている人の脳に負荷を与えるから。
プレゼンで特に大切なのは、自分の意見と事実を明確に分けることです。100%確実なものに対しても"思います"を使うと、相手は丁寧語か意見かを区別をする作業が生じます。プレゼンの冒頭で不要な負荷を与えてしまうと、相手の思考はどのモードへ直行するでしょうか?

「そのくらいで負荷を感じる方がおかしい。気にし過ぎだ」と感じた方もいるかもしれません。しかし無意識のうちに脳に多かれ少なかれ負荷を与えます。「内容は素晴らしいんだけど、何となく聞きづらいプレゼンだった」というのは、無意識の負荷が原因である可能性があります。せっかくのプレゼン、相手にやさしく伝えたいものです。
今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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