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身近なバイアス⑨:偉い人の言葉をそのまま信じてしまう心理(権威バイアス)

竹林:人間、権威に弱く、日常でもその傾向が出ることも多々あります。次の事例を見てみましょう。

信号が青になっても前の車が発進しなかったときの、後続車の反応を調べた。前の車が古い普通車の場合、ほぼ全ての後続車はクラクションを2回以上鳴らした。前の車が高級な新車の場合、半分しかクラクションは鳴らさなかった。*

紅:権威への弱さがわかる、いい例ですね(笑)。

竹林:社会が疲弊すれば、権威に服従しやすくなる心理(権威バイアス)も強くなる可能性があり、インフルエンサー、コメンテーター、高い役職の人など、「権威のある人」の言葉が受け入れられやすくなります。この権威は「見せかけのもの」でも効果がある*ことが報告されています。

紅:私も健康食品のCMで、白衣を着た「医学博士」と名乗る人がコメントすると、急に「信用してもいいかな」って気になります!

竹林:そうなんですね(笑)。そもそもエビデンスレベル中、「専門家の意見」はきちんとした研究に比べると格段に信頼が置けないのです。さらにメディアでコメントしている人の中にも、実は感染症の専門知識が疑わしい人もよく見かけます。

紅:それには同意します。

竹林:権威バイアスがこわいのは、一般の大学教員が話した科学的根拠よりも、有名なコメンテーターが話した非科学的な発言が信じられてしまう、という事態を引き起こしてしまうことです。

紅:この事態は喫煙問題でも見られましたね。医師が専門的見地から研究データを使って喫煙の害をどんなに訴えても、知名度のある文化人の「タバコの害は科学的に立証されていない」発言が信じられてしまう。そして喫煙の有害性に関する正しい議論ができないまま、多くの命が失われていく…。

竹林:医師に限らず研究者は発表に当たり、関係者からの利益供与の有無を宣言(COI開示)しなければいけません。でも、文化人は大抵の場合その義務はないですので、スポンサーの意向に従った発言になりがちです。

紅:その時点でフェアではないですよね。

竹林:「科学技術の粋を集めて解決策ができあがっても、人間のバイアスでそれを活用しない事態」というのは、これまで何度も繰り返されてきました。コロナ対策ではそれを避けないといけないですね!

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★権威バイアスについてもっと詳しく知りたい方は、「影響力の武器」(R.チャルディーニ)がお勧めです。

*引用:影響力の正体(R.チャルディーニ)




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