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ナッジで伝わるプレゼンに⑱:「オンライン講演はやりづらい」は言わない

「オンライン講演は表情が見えないから、やりづらいですね」と、冒頭で参加者に対して言ってしまう演者を見かけます。これはお勧めしません。その理由を行動経済学の観点から3つお話しします。

理由① 「顔が見えないとやりづらい」のは、言わなくても全員知っています。それを聞いた参加者は、少なからず「随分当たり前のことを言う人だな」「そんなにオンラインが嫌なら断ればよかったのに」という感想を持つことでしょう。
そもそも、演者はデメリットを克服するために、予行演習を重ねて本番に臨むことが期待されています。例え、本番で全員が画面表示をオフにしたとしても、「予行演習ではここで笑ってもらえた」「ここでは前のめりになって聞いてもらえた」とイメージしながらプレゼンすることで、ある程度は解決できます。せっかく聞いてくれている参加者に準備不足を宣言することは、魅力を曇らせる行為であり、もったいないです。

理由② 「やりづらい」はネガティブワードです。参加者にとって、出だしは「この話をきちんと聞こうか」のスイッチが入る勝負の時間帯です。その大切な時間帯に、ネガティブワードを発すると、内容全体をネガティブに受け止められる可能性が高いです。ネガティブワードの弊害については、こちらの記事をご覧ください。

理由③ 最初に「自分はベストのパフォーマンスができません」と言ってしまうと、本当にパフォーマンスが落ちる、「予言の自己実現」という心理現象が生じる可能性があります。
そして、「オンラインって、やりづらい」という考えは一面を切り取っただけのものです。むしろオンライン講演にはメリットの方が多いです。移動が減ること、温度調節も自由にできること、PC設備との相性を気にしなくてもよいこと。こんなにたくさんのメリットを享受しておきながら、わざわざ最初にデメリットを宣言すると、参加者も主催者もモチベーションが下がります。結果として、ダメな自己実現が加速する可能性が高まります。

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私は、画面の向こうでは、参加者全員が笑顔で聞き、最後は多くの参加者が笑顔で拍手してくれる姿を心に浮かべた上で、講演にのぞみます。「顔が見えないからやりづらい」というのは、その時に思いついた感想であり、参加者も主催者も演者自身も、誰も得しません。
どうしても「やりづらい」と言いたいときには、終わった後で、「オンラインだと皆様にお会いできずに寂しいです。今度はリアルで企画しますので、ぜひ来てください」と、ポジティブな文脈でお話ししてはいかがでしょうか?

今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

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