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ナッジで伝わるプレゼンに②:思いっきりシンプルに

プレゼンの最初のスライドを見た瞬間、「このプレゼン、もう聞きたくない」と感じること、ありませんか?多くのプレゼン基本書は、「スライドの背景に柄があるデフォルト」「明朝体などの視認性が悪いフォント」「小さい文字」を使わないように書いています。これらは相手の認知に知らず知らずのうちに負荷を与えます。

私は見たくないスライドがあっても、「ひょっとしたら内容がとても良いかもしれないので、まずは聞いてみるか」と気を取り直すように心がけています。同時に、精神的疲労が生じ、集中力を阻害するバイアスを呼び起こす可能性が高まります。現在バイアスを刺激し、「後で配布資料を読めばいいか」と考えてしまうと、睡魔にも負けやすくなります。

そのために、「相手が見やすいスライドにするはどうしたらよいか?」という視点が不可欠です。行動経済学に基づく私の答えは「思いっきりシンプルにする」です。これはナッジのフレームワークEASTのEasyに当たります。

私は、背景は白地、文字は黒、フォントはメイリオで60ポイントをデフォルトにしています。私は今まで講演してきた中で、最も大きな会場はヤクルトホールで400人以上の参加者でした(単独公演ではなく、がん検診受診率向上全国大会でした)。ここでこのデフォルトを使ったところ、ホールの最後列でも問題なくスライドが読めました。また、オンライン講演では相手は小さい画面で視聴しているかもしれませんが、このデフォルトだと大丈夫です。私は今まで1万人以上から発表に対するフィードバックをいただきましたが、いまだ「スライドが見づらい」という意見はありません。もちろん、小さな研修室で行われる場合は文字の大きさは48ポイント以上とするなど、柔軟に扱うのもよいでしょう。

スライドに小さな字で書かれ、さらに口頭説明すらしなかったものは、相手にとって情報価値はありません。価値がないものを残しておくと、本当に価値があるものの魅力を妨害してしまいます。「後で読んでください」という趣旨なら、ハッキリとそう伝えた方がよいです。ただし「後で読んでください」を多用すると、「後で読み直すから今は居眠りをしてもいいかな」という心理を刺激するおそれがあります。その意味からも、スライドに記載する情報は厳選を重ねたものにするべきです。

結論。見づらいスライドは、相手の理性を疲弊させます。相手の大切な理性は、ストレス耐久に使うよりは、講演の理解に使う方がずっと有益です。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

※YouTube「たけばやし博士」で1日おきに、120秒ナッジトリビアを発信しています。チャンネル登録していただけますと、励みになります。


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