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ナッジで伝わるプレゼンに④:型に忠実に

今日は、プレゼンの型(プレームワーク)を切り口に、聞く人が安心して内容に集中できるプレゼンを考えます。
Easyナッジの観点から、私は型に忠実なプレゼンを推奨します。

プレゼン審査での悶着

以前、プレゼン審査員をした際、発表者と悶着がありました。その発表者のプレゼン内容は面白いと感じたのですが、話題があちこちに飛んで聞きづらく、他の審査員も含めて厳しめの評価がつきました。
短いコメントを求められたので、私は「基本的なプレゼンの型に沿って展開した方が、内容に集中しやすくなると感じました。これからに期待します」と答えたところ、その人は「私は型にハマりたくない。内容を見てほしいのに、形式重視の審査をされるのは納得がいかない!」と声を荒らげました。
これに対して、あなたならどう答えますか?私はこう答えました。

【竹林の答え】「型にハマらないというのは、ほぼ無理です。なぜなら、人のバイアスは「手作りの型」が大好きで、型を知り尽くし、型を常に意識し続けない限り、自然に手作りの型にハマっているからです。そして手作りの型はどうしても漏れや重複も出やすく、相手にフィットしないことも多いのです。
確かにあなたのプレゼン内容は面白かったですが、型の中で当然に言及されるはずの「なぜ」の部分が欠落しているなどの欠点がみられ、スムーズに聞けませんでした。これから型を意識することで、もっと魅力あるプレゼンになると期待します。」

翌週、その方から「型の大切さをよく知らないまま、感情的に答えてしまいました。これから型のことを勉強します」とメールをいただきました。
スキーでポジションを覚えないまま、自己流で高速カービングターンをしようとしても、斜面に嫌われ、けがのリスクが高まります。斜面にフィットするには、基本フォームのマスターが不可欠で、応用技術はその後です。

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型から外れると、内容に集中できない

例えば、学会発表の型は「解決すべき課題→先行研究の整理→問い(リサーチクエスチョン)→研究手法→統計解析→結果→考察(主張と論拠)」です。シンプルなプレゼンだとPREP(要点→理由→具体例→要点)がわかりやすいでしょう。この順番に発表されるので、聞く側も安心して内容に集中できます。
この型からズレるとどうなるでしょうか?
先日聞いた学会発表では、問いが出てこないまま、研究手法の説明に入りました。「あれ、聞き逃したかな?」と抄録をめくったため、プレゼンはなかなか頭に入ってきませんでした。人は複数の知的作業を同時に行うのが実に苦手なのです。

なぜなら発表者と聴衆の間にはギャップがあるから

この学会発表の質疑で、参加者から「研究の問いは冒頭にお話しした方がわかりやすいのですが…」と意見が出て、発表者は「最後まできちんと聞いていればわかるはずです」と返答しました。
この質疑は発表者と聴衆のギャップを端的に表しているものです。発表者は発表内容に熟知し、プレゼンに入魂しています。一方、聴衆は研究のことは初耳で、集中力もそんなに高くないです。このように、発表者と聴衆の間には情報とスタンスに関する埋めがたいギャップ(非対称性)が存在します。

ギャップを埋めるのが型

このギャップを埋めるための両者のルールが「型」です。前回もお話ししましたが、人は思考の近道が大好きです。型には、客観性と再現性に担保された安心感があります。型通りに進むと、相手は安心して内容に集中できる方向に、思考が直行します。反対に型から外れると、相手は負荷がかかり、内容に到達できないリスクが高まります。私が知る限り、プレゼン上級者ほど型に忠実です。だから私は、型に忠実なプレゼンを推奨します。
今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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