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ナッジ研究者、TEDxトークへの道①

こんにちは。竹林正樹と申します。大学の公衆衛生研究室で行動経済学(特にナッジ理論)を用いた研究をしながら、ベンチャー企業に所属し、講演・コンサルティング活動を行っています(竹林のプロフィールはこちら)。
あなたはTEDトークに出演したいと思ったことがありますか?もしYESなら、きっとこの記事がお役に立てるかもしれません。ナッジ理論やTEDxGlobisUに興味を持っていただけたら嬉しいです。

TED(Technology Entertainment Design)は、ニューヨーク市に本部がある非営利団体。TEDxは、TEDからライセンスを受け、世界各地で発足しているコミュニティー。先端の研究者やビジネスマンなどがトークし、各国の言語に翻訳されて世界中に発信。
(TED公式WEB英語版を翻訳・改変)

TEDトークは私の人生に大きな影響を与えました。経済学・経営学を専攻してきた私が公衆衛生研究室への移籍を決意した理由の1つが、TEDトークでハンス・ロスリング博士による公衆衛生の話を聞いたことです。博士が公衆衛生の課題をクリアに示してくださったことで、私は「経済学を使って公衆衛生に貢献したい」と背中が押されました。

今までの私はTEDトークを見る側でしたが、2020年9月に開催されたTEDxGlobisUに出演し、「ナッジ理論と家族」をテーマにお話をする機会をいただきました。申込からオーディション合格に至るまでの2か月間の様子を紹介します。
※これは私の体験談を行動経済学の観点から記録に残したものです。申込書の具体的な記載方法やオーディションの詳細描写は割愛しています。

【ナッジ】危険な場所につい近づいてしまう子象に、母親が鼻先でそっと正しい道へと促すように、人の心を優しく刺激して、よい行動へと動かす工夫。ナッジ提唱者のR.セイラー博士が2017年ノーベル経済学賞を受賞。世界各国政府も戦略にとり入れている。(ナッジの詳しい説明はこちら

最初は尻込み

私はずっと「TEDxトーク出演者募集」のお知らせを目にしたことがなく、出演者は主催者から個別に指名されるのだと信じていました。2020年1月、私はSNS上でTEDxGlobisUの出演者募集のお知らせを目にしました。
一瞬「私の研究を世界に発信できる絶好のチャンス!応募してみるか」という考えが頭をよぎりました。でも、GlobisUことグロービス経営大学院といえば、日本最大のMBA(経営学修士)スクール。まばゆいブランドの前に、私の中で「部外者は、真っ先に書類選考で落とされる。恥をかく必要はない。やめておこう」という気持ちが沸き上がり、募集案内の存在もいつしか忘れかけていました。あるメールを受け取るまでは。

背中を押される

2020年1月までの私は、月の半分くらいを県外で過ごし、講演やコンサルティングを行っていました。ところが、突然のコロナ禍で、業務が次々とキャンセルになりました。私は青森に戻り、これからの生活のことを悶々と考えていました。
そんな時、1通のメールが届きました。それは数年前に私の学会発表を聞いてくださった、東京の医師からでした。

「竹林さんの発表で、初めてナッジを知り、私はナッジ理論を勉強するようになりました。講演でお会いするのが楽しみでしたが、中止になりましたので、メールを書きます」「今でもナッジを勉強し続けており、診察にもナッジを取り入れています」「ナッジを知ってから人生が好転した気がします」「あの時、講演を聞けて、感謝しています」
とても嬉しい内容でした。読んでいるうちに背中が押された気持ちになってきて、読み終わった瞬間、私はTEDxトークの申込を始めました。

初めからナッジを

申込書にも、ナッジ理論を駆使しました。ナッジ理論のコンセプトは、「シンプルに、確実に相手に伝えること」です。私が3つの話をしても、相手の脳は2つ目で疲れ、結局は1つも覚えてくれないものです。だから1つに絞り、それを魅力あるストーリーにして、確実に伝えることで、相手はポジティブに読んでみたくなります。そして、最初に心のポジティブモードのスイッチが入ると、続きの文章もポジティブに受け止めます。これは「プライミング効果」という心理です。
私は自分の研究をテーマに、高校生にもわかるくらいの、思いっきりシンプルで、そして感情に訴えるストーリーにしました。最初に書いた文章を、1週間かけて半分の量まで減らしました。無駄な文字は1つもなく、自信を持って提出しました。

申込後、早速SNSで「予行演習にお付き合いくださる方、急募:大きなチャレンジをします。ぜひあなたの力を30分だけお貸しください。」と告知したところ、20人以上が集まりました。そしてすぐに「これから5日間で話す内容を決め、6日後から毎日予行演習を入れる」というスケジュールを決めました。私は、このプロセスをしないままオーディションを受けたら、間違いなく落選していたでしょう。なぜ20人に予行演習をスケジュールに入れるのが重要なのか。「人間心理の習性」という観点から、その理由をひも解いていきます。
次回へ続く)


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