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リターンキー1回で空白行をつくる

ぼくの生活では、かきながら考え、考えながらかくことが、大切な要素になっています。

ですから、文章をかくツールとして、どのアウトライナーやテキストエディタを使うかは重要な問題であり、そうしたツールを試す時間は愉しみのひとつになっています。

理想は、かいている最中にそのツールを使っていることを忘れてしまうくらい使いやすい、透明なアプリケーション。

そして、その透明さに関係する鍵のひとつは、キー操作とカーソル挙動の関係だと考えています。

ここでは、その分かりやすい例として、「空白行の挿入」という動作に必要なキー操作とカーソルの挙動の関係にしぼって、説明します。

ぼくの場合、空白行の挿入は、リライトの途中に繰り返し頻繁に行なう作業です。足りない説明を加えるために、文節や文をかき加えるときに行なう操作です。たとえば、こんな感じ。

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この図はOmniOutlinerという、アウトライナーの画面です。頭に浮かんだことばを速くタイプするとき、ぼくはこういう形で短いことばのかたまりごとに改行しながらかき出し、あとでテキストエディタに写して改行を一括削除します。

ことばのかたまりごとに改行するのは、その方がリライトしやすいからで、ことばの順番を入れ替えたり、ことばを書き加えたり、削除したりしやすいように、ぼくは感じています。こうすることで、センテンスという区切りからも、適度に開放される感覚があります。あと、タイプするときのリズムづくりにもなります。

図の説明にもどります。リライトのために文章をよみかえしながら、「他の人に」ということばを「..書き連ねたことを」と「分かりやすくするための」のあいだにかき加えたいと思ったとします。

OmniOutlinerでは、リターンキーを1回押すだけで、カーソル(図の中の水色の縦線)が文の途中にあってもカーソル行のすぐ下に空白行がつくられ、カーソルは自動的に空白行の左端へ移動します。

つまり、リターンキー1回で、図の1から2の状態に変化できます。

同様に、「Shift + リターン」1回で、カーソル行の直上に空白行がつくられ、その先頭にカーソル移動します。

一方、多くのテキストエディタやWordなどのワードプロセッサでは、リターンキーを1回押すと、図のように、カーソルの右の文字列が切り取られ、下の行へ移動してしまいます。

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ここでは、例としてVisual Studio Codeの画面で示しています。このエディタでは、カーソル行が灰色になっています。

こうしたテキストエディタやワープロで、カーソル行の下に空白行をつくりカーソルをその先頭に置くためには、最低3ステップ余分な操作が必要になります。

たとえば、下の図のように、(2) カーソルを左端にジャンプさせ、(3) 下矢印キーでカーソルを1行下へ移動し、(4) リターンを押して空白行をつくったあと、(5) 上矢印キーでカーソルをもどす必要があります。図の右側、2–4の操作を追加で行なうワケです。

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繰り返しになりますが、OmniOutlinerではリターンキーを1回押すだけの1ステップで済む操作が、他のエディタなどでは4ステップの操作が必要になります。

こうした3ステップ節約のような小さな効果の積み重ねが相乗的に効いて、結果的にその道具を使っているのを忘れてしまうほどの透明感に繋がると、ぼくは考えているワケです。

もちろん、上にあげた例が、皆さん全員のアウトライナーやエディタなどの使い勝手のよさや透明感に繋がる共通の例だとは、思っていません。

大切な点は、文章をかくとはいったいどのような作業なのか、そのために人はどのような手助けを必要としているのかといった課題を、自分なりに考えながら道具を選ぶことなのかなと、ぼくは考えています。

そして、ツールの使い勝手をフェアに評価し、その声を他のユーザーやアプリケーションのデザイナーに届けることも、よい道具との生活を愉しみつづけるために重要なプロセスなのだと実感しています。

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