さけび
アパートの一室から異様なさけび声がする
女性のさけび声だ
狂ったようにさけんでいる
家の裏手のアパートから大きな声でさけんでいる
夜の十時ごろだったのだろうか
叫び声は途絶え途絶えではあるが三十分以上続いた
風呂場の窓から、二階の踊り場からも様子をうかがった
心配ではあったものの駆けつけられない
その後も叫び声は一声二声ぐらいはさけんでいたが聞こえなくなった
警察も来ていないみたいだから大事には至らなかったのだろうと思い込むことにした
翌日も心配でいたが、警察沙汰にもなっておらず普通の日常が流れていた
以前、会社のお昼休みを車で外出して車中で過ごしていた
当時は節約のため、実家から貰った魚肉ソーセージが昼食だった
車を停めていたちょっとしたスペースの先に民家が見えた
あいだには田んぼしかないのでその家が目に映った
白黒の帯の幕みたいなものが飾ってあるようだった
気付けば車がその場にふさわしくないぐらいに農道に十数台停まっている
誰かが亡くなったみたいだ
葬式を家で行ったのだろう
そう思ったとき、女性の大きな声がその家から聞こえてきた
叫び声だった、泣き叫んでいる大きな声だった
しばらくするとサイレンが聞こえて救急車が到着した
あれはだれの声だったのだろう
告別式やお葬式に救急車はなぜやってくるのだろうと思った
今、思うにあれは”自ら命を絶った人”の葬儀ではなかったのだろうか
奥さんか母親が泣き叫んでいたのではなかろうか
そんな感じの女性の泣き叫ぶ声がした
何かを拒絶するかのように泣き叫んでいた
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