玉葱家 #4 『モーニングルーティン』

タマキ

5時半に一度目が覚めて、常温にしてある水を口に含む。一瞬、いつものように部屋を出て顔を洗いに行きそうになるが今日は休日。3人で映画を見に行くことになっている。朝が弱いオザキに合わせて13時に家を出れば間に合うようになってるから、まだ少し早すぎる起床だ。映画を観た後そのまま新宿でどこか居酒屋にでも入るだろうから、なんとなく雰囲気のよさそうなお店を後で調べておこう。部屋の灯りは付けずにもう一度ベッドに潜り込み、ボンイヴェールを流しながらもう一度眠る。

目覚ましの3分前に目が覚めた。9時57分。自分で決めた時間の少し前に起きれると気分がいい。鳴る前のアラームを止めて、顔を洗いに階段を下りよう。お互い抱えている台本や仕事に取り組む時間が長いから、みんなそれぞれ部屋は居心地がいいようにカスタマイズされている。俺の部屋は段ボールで常に常備されている水のペットボトルがタンスにしまわれ、湯沸かし器とマグカップがキレイに陳列されている。コーヒーとお茶葉も各種取り揃え、趣味で集めた小物の動物が観葉植物の中に鎮座する、自分でもお気に入りの空間。今日はカモミールのティーパックを二つ、自分用のマグカップに押し入れてリビングへ向かう。顔を洗いさっと髪を整え、お湯を沸かしリビングのPS4でYoutubeを見よう。今日は、そうだな、エルトンジョンかフィルコリンズかアンドリューゴールド。誰かが起きてくるまではアンドリューゴールドを流そう、ああロンリーボーイ。きっと次に起きてくるのはクワタだから、起きてきたらフィルコリンズに変えてやろう。この前無理矢理見せたシングストリートで、「フィルコリンズを聞く男はモテない」とひどく言われていたんだけど、気づくかな。

今から少し時間を使って料理すればちょうどお昼ご飯かな。クワタも11時か12時には起きてくるだろうから、朝食飯を作ってあげよう。二人分パスタをゆでつつ冷蔵庫のあまりから味付けを考える。鷹の爪はないけど一味があるから簡単にペペロンチーノを作ろう。ニンニクとオリーブオイルと唐辛子を炒めて香りづけをするといいところにクワタ。「食べる?」と聞くと「ありがとう」と言われたから多分食べるってことだろう。あ、もう12時も過ぎるところか。ぼーっと午前中を溶かしちゃった。まあいいや。クワタとご飯を食べながら、新宿の飲み屋について話をしよう。

クワタ

11時30分、ケータイのアラーム。起床。本日は快晴。シャワーを浴びる。
今日は新宿に出掛けるから、細めのジーパンに白のTシャツ、黒のジャケット。Tシャツの上にジャケットやカーディガンを羽織れば外に出られるいい季節です。そうだ、少し歩いて近所の土手で花見でもしたいな。映画が終わったら提案してみよう。
リビングに向かうといい匂い。タマキが料理をしてくれている。ペペロンチーノだって。ラッキー。タマキが先に起きてると紅茶まで淹れてくれるからもっとラッキー。タマキが家にいると、紅茶が出てきて、カフェっぽい音楽がかかってて、美しいご飯が出てくるから感動する。

タマキが新宿の飲み屋を探してくれている。いいねえ。映画見て帰ってきて、ほろ酔いで缶チューハイでも持って、土手沿いの桜を眺められたらなぁ。

オザキが起きてきた。12時半。「おはよう」というと発情した猫みたいな鳴き声が返ってきた。オスの。きったないやつ。タマキは「こんにちは」って言ってる。すぐ喧嘩しようとする。

てかオザキ起きてなくない?目が閉じたまま汚い髪と顔でリビングまで足を引きずってくると、そういう機械かのように、テーブルの椅子をキッチンまで引きずっていき換気扇の下に移動した。冷蔵庫からオザキ専用に買いためてあるモンスターを取り出して飲み、タバコを吸っている。ヤバいくない、それ?

オザキ

気づいたらモンスターを飲んでタバコを吸ってた。
二人はもう着替えてリビングでご飯食べてる。
おれの分はないらしい。
てかあと30分で出発らしい。
ギリ風呂間に合うかな。
間に合うか。
もう一本吸ったらシャワー浴びよ。
タバコもモンスターも、身体をプラスに覚醒させるものじゃなくて、マイナススタートの体をプラマイゼロに戻すだけだよなって二人に言ったら、ヤバいねとだけ返された。ヤバくねーよ。
出発に遅れると今日一日人権がはく奪されるから、ソッコーでシャワー浴びよ。

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