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玉葱家 #2 『協定』

物はまだほとんどなく、閑散としたリビング。テレビを前にタマキとクワタはゲームをしている。オザキが持ち込んだスーファミでストⅡ。
ザンギエフ:(スクリューパイルドライバー)ドゥエ~!!!
突然リビングの扉が開く。

オザキ:協定を結ぼう。

タマキ:…いいよ。
クワタ:おっけー。

ストⅡ
ザンギエフが死ぬ

クワタ:もうザンギエフやめれば?
タマキ:やめられないよ。100万回に1回出るスクリューパイルドライバーってガンジャより気持ちいいのよ。
クワタ:もっといい例えないの。

オザキ:協定を結ぼう。

タマキ:…いいよ
クワタ:おっけー

タマキ:春麗とかエドモンド本田ってちょっとずるくね
クワタ:まあ、初心者は使いやすいよね
タマキ:おれら完全に初心者じゃん
クワタ:使えばいいじゃん
タマキ:使わないけどさ
クワタ:使えばいいのに
タマキ:俺は死ぬならザンギエフと死ぬ

ザンギエフ死ぬ

クワタ:タマキ、ザンギエフとかガイルとか好きそうだよね
タマキ:あとベガね
クワタ:ゴリゴリの男好きだよね
タマキ:その言い方やめね

オザキ:協定を結ぼう

クワタ:いいよ
タマキ:ハードボイルド選出って言って
オザキ:題してオナニー協定ね
クワタ:その名前はダサくね
オザキ:え、そうかな
タマキ:かっこいいだろ
オザキ:そうだよな
クワタ:小4みてぇじゃん
オザキ:うそ、精通早えな
タマキ:じゃあ世紀末選出ね
オザキ:自慰協定にしよう。自慰はアルファベットのGね
クワタ:それもダサくね
オザキ:アルファベットの問題?じゃあZ協定というのは?かっこよくね?
タマキ:そもそも選出の嗜好に文句付けないでよ
オザキ:とにかく、君らの厚かましい生活に苦言を呈したい
クワタ:別に文句は付けてないよ
オザキ:文句は言わてないよ?確かに。これはおれからの文句ね。
(ケンを選ぶタマキ)
クワタ:ケンじゃん
タマキ:まず敵から知ろうと思ってね。
オザキ:そう。まずはおれのことを知ってほしいのよ。
クワタ:別にいいけど
オザキ:Z協定。「これからは玉葱家では自慰行為を禁ず」!

二人 :………

オザキ:Z協定「これから玉葱家ではZ行為を禁ず」!

クワタ:………なに急に?
タマキ:ちょっと今忙しいんだよね
オザキ:春麗のバストも知らないやつにストⅡは早いよ。魂斗羅スピリッツをやっていろ。
タマキ:誰がわかるの、あのアーケードから移殖されたハードボイルドゲームを。
クワタ:春麗のバストわかるやつは下心が過ぎるからストⅡやらないほうがいいんじゃない?
オザキ:だからおれはやらない。
クワタ:わかんのかよ
オザキタマキ:88
オザキ:キャミィが86ね
タマキ:ザンギエフのストⅡ時代のバストは163ね
クワタ:気持ち悪いなお前らの知識
オザキ:で、協定なんだけどさ

(オザキ、クワタからコントローラーを取り替わる)
(オザキ、春麗。タマキ、ザンギエフ。)

タマキ:いや、おれはザンギエフ以外使わないよ
オザキ:その協定は別にいらないんだけどさ。ふたりともさ。
クワタ:はい。
オザキ:君ら2階の部屋でずるくないか。
クワタ:そう?
オザキ:おれだけ1階の部屋なの不利じゃない?
クワタ:…自分で言ったんじゃん。おれ夜中ふらふら出かけるし、夜型だから迷惑かけないように1階でいいよって。
オザキ:言ったよ?だから何?
クワタ:「だから何?」?
タマキ:オザキのそういうところ嫌いじゃないぜ

ザンギエフ死ぬ

オザキ:そうなのよ。これはおれくらい厚かましくなきゃ声を上げないような問題だからこそ、しっかりと声を上げていきたい。
タマキ:うん、それはいいんだけどさ
クワタ:なんでオナニーを禁ずるの。1階と関係ある?
オザキ:まず問題を一つ一つ明らかにしていくね。
二人 :はいはい
オザキ:まず、同じ家賃を払っているにもかかわらず、おれはこの一軒家の2階に上がることがないの。わかる?
二人 :そうね。
オザキ:おれはRPGをやるときは、何もない部屋だとわかっていても、ただの民家だとしてもそのツボを一つ一つ壊して、全員に話しかけていかないと気が済まない性格なのね?わかる?
二人 :わかる。
オザキ:だから2階に上がる機会がないというのはなんか損した気分になる。
二人 :なるほど。

ザンギエフ死ぬ

クワタ:でもさ、オザキ勝手におれの部屋入って漫画持ってくじゃん。
オザキ:うん
クワタ:2階来てね?
オザキ:まあね?
タマキ:解決じゃん
オザキ:まあね?でもなんか違くね?
タマキ:まあわかるけど
オザキ:あとね、普通賃貸だったら1階の方が家賃低いからね?
クワタ:そうだね
オザキ:まあそれはそれで手を打てる範囲よ。自分で1階でいいって言ったからね。
二人 :はいはい

ザンギエフ死ぬ

オザキ:二つ目の問題ね。これがZ協定につながるんだけども。ふたりともさ、割とリビング居るじゃん。
タマキ:え?…う~ん、いや
オザキ:いるのね
タマキ:…はい
オザキ:でもってさ、普通に外出とかするじゃん。
クワタ:?するね
オザキ:てか家帰ってくるじゃん
二人 :?
オザキ:例えばさ、実家でオナニーしててさ、おれ、イヤホンの片耳外してするのね?部屋が2階だったからさ、階段の音聞くために。
二人 :わかるよ
オザキ:それがさ、この家だとさ、気が気じゃないのよ。家入って、俺の部屋通り過ぎて、洗面所行って、リビングでゲームするじゃん。それは聞いてない。
タマキ:それで全員オナニー禁止なの?
オザキ:そう

ザンギエフ死ぬ

クワタ:それさ…普通にすればよくね?
タマキ:そうよ、俺ら気にしないよ?勝手にオザキの部屋入んないし
クワタ:そんなん俺らだって見たくないもん
オザキ:いや、そうなんだけどさ。してる時にさ、君らが存在することを考えたくないのね?
クワタ:なにそのオナニー至上主義
タマキ:まあなんかあれだよね。ほかのことを考えたくないよね。ましてや男友達のこと考えるって、気分悪いよね。
オザキ:そうなのよ。そうなのよ!そうなのよ!!!
クワタ:そうなのか。
オザキ:だから、ここで、Z協定よ。
タマキ:それさぁ…意味ある?結局しね?

オザキ:…するね
クワタ:…まあ
タマキ:するっしょ、バレないときに

ザンギエフ死ぬ

タマキ:あ~!!!Z協定!!!「全員ザンギエフ以外の使用を禁ず」!!!


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