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"プロジェクトセカイ"というコンテンツの話をしよう[後編]

この記事は?

 こんにちは、布団にいると餌付け(*注1)も忘れるglvntla(でんちゅら)です。今日(2021/12/19 20:16)に久々に体重計乗ってみたら44kgフラットでした。まあこんなもんでしょう。それはさておき記事に移りましょう。この記事はですね、CCS Advent Calendar企画2021裏に投稿されたものです。
(*注1:この場合は自身の肉体に対する餌付けを指す。何かを"食べなきゃ"とは思うが何かを"食べたい"とは思っていない状態が当てはまりやすい。食欲はないが栄養の摂取がないと動けない為、何かしらの手段で自身に対する餌付けを行う必要がある。)

  CCS表記事での告知の通り、この記事はプロセカについて話す記事の後編です。表記事のリンクはこれ。↓
"プロジェクトセカイ"というコンテンツの話をしよう[前編]

昨日の記事はBornくんによるこちらですね。↓
好きな曲の一覧 - Boripedia

 自分はアイマス系列詳しくないのですが、記事の情報量が強いですねぇ…。 ちなみに星屑ストラックはとても好きな楽曲です。というかとぱぞが好きなんよな。

軽く振り返り

 後編へ入るにあたり、前編の内容を軽く振り返りましょう。前編ではストーリーが中心にある点、記号的な公式と有色なストーリーを描くクリエイターを両立している点、発表の場としてプロセカがボカロ再興に影響を及ぼした可能性がある点についてお話ししました。音楽ゲームとしてではなく、ストーリーと音楽のコンテンツとしてプロセカを捉えています。

 さてでは本題に入りましょう。記事の方針は前編と変わりません。今回も布教ではなく紹介というスタンスを保ち、事実とそれに関する自分の解釈・考察で構成していきます。但し今回は裏記事及び後編ということで、厄介オタクを前面に出しつつ少なからず尖った表現も出てくる予定です。まあ思うところを書くだけの文章ですが、前編と同様にプロセカやってない方でも新しい視点や解釈に気づいて貰えれば嬉しいですね。

 前編については上で軽く振り返りはしましたし、なるべく読んでない方でも後編は読めるような内容にしたいですね。一応全体を通して流れを意識した構成にはしてますが、それぞれの項目は独立させても成立するようにしたつもり。ただまあ読んで貰えると嬉しいのは変わらないので是非読んで頂けたら。

 今回の記事では、先日の12月13日にプロセカ公式から発表された一部楽曲の収録についても少なからず言及します。TLで荒れに荒れてた筆者ですが、ここではなるべく穏やかに書きたいですね…。というかそうしないと記事としての体裁を保てなくなりますし。 

プロセカと”砂の惑星”

 前編の最後でニコニコ動画の衰退とボカロの再興についてお話しましたね。実際のところボカロに”再興”たる所以である落ち込みがあったのかついては和田たけあき(くらげP)さんが否定的な見解を残している(*注2)ように議論の余地が残りますが、2021年にボカロ文化の活性化が見られたことは数字から分かることでしょうか。では、これに関連してある曲に触れようと思います。
(注2:"初音ミク10周年 | 和田たけあき(くらげP)インタビュー"(2017年9月15日公開 音楽ナタリー)内において、"よく分かってない大人が面白くない企画をやって売れなかったから撤退した、それをもって「衰退」とするのは浅はか"という主旨の発言をしている。)

 マジカルミライ(以下マジミラ)というイベントを名前だけでも聞いたことがある方は多いでしょう。初音ミクたち6人の大元であるクリプトン・フューチャー・メディアがTOKYO MXと共同開催するライブイベントであり、クリプトン組のボカロイベントとして最大規模と言えるでしょうか。ある意味で公式が最大手 そんなマジミラには2014年以降毎年テーマソングが発表されています。毎年1曲なので2021年開催分まで合わせて計8曲。どれも名曲揃いですので是非聞いてみてください(*注3)。それはそれとしまして、マジミラ楽曲は曲としての人気や注目度の高さから各種音ゲーに収録されることも少なくないですね。特にSEGAゲーは強い。プロセカも同様であり、ネクストネスト(2014)から初音天地開闢神話(2021)まで全曲が収録されて…いえ、砂の惑星(2017)だけは収録されていません。DIVAにすら収録のないネクストネストや初音天地開闢神話(*注4)ですら収録のあるプロセカですが、砂の惑星だけが抜け落ちているとも言えます。そもそも新旧の名曲が収録されている中で、ボカロ文化に大きい影響を与えたハチさんの楽曲は1曲たりとも収録されていません。このあたりの事象をやや拡大解釈しまして、プロセカとハチさんの対立を見出そうと思います。厄介オタクの考察パート突入
(*注3:明らかな布教発言だが、プロセカについての布教ではなく楽曲についての布教にあたるので許される。)
(*注4:2021年12月時点ではプロセカとオンゲキにのみネクストネストと初音天地開闢神話が収録されている模様。ネクストネストの発表が2014年6月末でありProject DIVA F 2ndの発売が2014年3月末であったことを考えるとタイミングが悪かっただろうか。)

 砂の惑星はマジカルミライ2017テーマソングとして発表され、ドーナツホール以来約3年半ぶりとなるハチ名義でのボカロ新曲であったこともありニコニコ動画の最速ミリオン達成を更新するなどその注目度は相当高いものだったようです。そして当然ながら反響も大きかったようですが、その曲に込められた意図について良くも悪くも色んな意見が出たようです。ではその中身について以下の記事を参考に考えてみましょうか。

初音ミク10周年特集 | ハチ(米津玄師)× ryo(supercell)対談 (2017年8月10日公開 音楽ナタリー)

 この記事では"「砂の惑星」が意味するものは何か"という真っ直ぐすぎる見出しと共に砂の惑星についての話が出ていますし、ガッツリ参考にしちゃいましょう。

ランキングとか、自分が観なくなってから流行った動画とかをさかのぼって観たりして。なんと言うか、僕が投稿していた時期とは明らかに景色が違う。ニコニコ動画というもの自体がどんどん砂漠になっているというイメージが広がっていって。

上記事より引用、強調は引用者

 過去の楽曲のフレーズなどを踏まえつつ、作曲当時のニコニコ動画を捉えた結果が"すでに廃れた砂漠"。ニコニコ動画とボカロ文化を砂漠と表現するなら、その中で"ここを出て行こう"とまで歌っています。

一方で同じ対談ではこうした発言も出ています。

「砂の惑星」が1つの起爆剤になってほしいとは思いますけれど、根本的に「俺が全部ひっくり返してやるぜ」なんてふうにはまったく思ってなくて。むしろ、どんどん新しい人たちが出てきてほしい。これがきっかけで砂漠にまた1つ木が生えてくれたらいいなって感じですね。その木の周りで新たに誰かが土を耕して、稲とか植え出して、それが実っていけばいいんじゃないかという。

同記事から引用

 当時のニコニコ動画に対する皮肉と共に、未来につなぐという意図も含めた構成。その表現として"砂漠に林檎の木を植えよう"といったところでしょうか。そしてハチさんではない新しい世代のクリエイターに向けてか、"あとは誰かが勝手にどうぞ"というメッセージが残ります。

 ここまでではハチさんによる問題提起についてのお話ですが、敢えてプロセカとハチさんの対立を見出しています。となればそれだけの理由がプロセカ側にもありますね。ということで、プロセカ側にあるそのアンサーについても言及しましょう。
 プロセカが始まってから2曲目のキーストーリー書き下ろし楽曲は、syudouさんによるジャックポットサッドガール。これについて、こちらも以下の記事を参考に考えます。

粗品「乱数調整のリバースシンデレラ」特集 粗品×syudou対談 2021年3月31日公開 音楽ナタリー

 この記事内ではジャックポットサッドガールについてまず以下のように言及がありますね。

「砂の惑星」が発表されたのが僕が大学4年のときで。当時はボーカロイドが全然跳ねてなくて、「アンサーを返したいけど、自分がまだ跳ねてないしなあ」と思っていたんです。(中略) 僕が初音ミクの公式のお仕事をいただいて、そのタイミングで返せたら最高だなと考えていたら、「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」っていうゲームプロジェクトのお仕事をいただきまして。まだまだとはいえ、一応音楽で生活できるくらいにはなったので「アンサーしてみるか!」と意を決して作ったという感じです。

上記事より引用、一部筆者により要約

 ゴリゴリの考察してる方もいますが自分の解釈はそこまで深くは掘れていないのでまあ端的に。歌詞中には"草木生えず人類の住めなくなった チープでキッシュな小惑星"なんて表現がありますね。かなりダイレクトに砂の惑星を暗喩してる(ダイレクトな暗喩という矛盾)ようにも思える表現ですが、その直後には"ねぇ先生あなたバカじゃないの 未だ滾る感情を知らないの"というフレーズが。砂の惑星を暗喩した直後にそれをバカじゃないのと切り捨てた上でまだ熱さはあるよという表現となっており、砂の惑星を否定する歌詞にもとれますね。というかそこに対立がないとこの記事として成立しない プロセカ運営はよくこれ通したよねぇ。

 そしてもう1点、1周年に合わせ実装された”セカイ”の初音ミクについてです。当記事前編では”案内人”と表現してきたミクですが、そんな初音ミクは特定のユニットには所属していない存在です。その実態はそれぞれのセカイを超越した存在であったこともあり、ゲームやガチャシステムの都合上カードとしての実装はゲーム開始時に配布される初期実装のもののみでした。それが1周年に合わせて実装された訳ですが…。

特訓前、つまり1枚目のイラスト

 プロセカのカードは一定以上のレアリティになると1枚につき2種類のイラストがセットになってまして、その片方は緑の平原に生える林檎の木と初音ミク。なんとなく気づいた方もいますね? “砂漠とそこに生える林檎の木”という砂の惑星に対して、その木にはしっかり実がなって周りにも緑が広がります。今のボカロはおよそ"砂漠"なんかではない、活気のある場所だという主張を投げつけてきていますね。

 砂の惑星に対するアンサーがこれまであったのかは分かりません。筆者もそこまで網羅的にボカロ曲を追えている訳ではないです。そんな中でプロセカではアンサー(、もしくはカウンターかもしれませんが、)ともとれる表現を出してきています。ボカロ文化の再興、そしてこれからも継続的に創作を活性化させる意図が感じられるでしょうか。

バーチャル・シンガーver.とセカイver.

 プロセカの収録音源には大きく分けてバーチャル・シンガーver.(以下バチャシン版)とセカイver.(セカイ版)の2種類が存在します。まあ想像はつくと思いますが、原曲やボカロ音源がバチャシン版、オリキャラによる歌唱がセカイ版となりますね。バチャシン版があった上でセカイ版によるカバーが存在する楽曲が多いですが、バチャシン版しか存在しない曲やセカイ版しか存在しない楽曲もあります。バチャシン版しかない楽曲はメルトや裏表ラバーズといった往年の名曲や各種マジミラテーマソング、プロセカNEXTなどの公募採用楽曲が中心ですね。一方でセカイ版のみの収録となるのは、プロセカの書き下ろし楽曲が殆どです。

 執筆時点(2021/12/19)では全143曲が収録されており、バチャシン版のみの収録は42曲、セカイ版のみの収録は10曲。大半の曲が複数の音源で楽しめることが分かると思います。書き下ろし以外の楽曲についてはプロセカとは関係なく制作された楽曲ですし、カバーによるセカイ版も悪くはないですがやはり原曲で楽しみたいですね。
 非書き下ろし楽曲のセカイ版は好みが分かれるところだと感じていて、原曲優位でありたいという点以外にも理由は存在します。

 プロセカに限らず劇中でキャラによる歌唱が入るコンテンツにおいて気になる点ですが、"歌は誰が歌っているのでしょうか?" これ分かりづらい問題だと思います。そして、各個人の解釈がそのまま答えになるパートです。ちょっと細かく掘りましょう。
 誰が歌っているのか?に対する答えとなる可能性があるのはキャラか演者です。キャラに対する解釈がある状態で、その歌唱はその解釈と一致するかどうかが重要になってくるでしょうか。そのキャラとして歌っている場合は、歌唱がキャラであるという必要がある訳ですね。極端な話、演者さんは色んな声を出せることが多いですがキャラ歌唱として歌う場合はそのキャラの声で歌うべきという話になります。いやこれガチの口だけの厄介オタクパートです。だって世に出てる作品はプロが目を通して充分なチェックを受けて出てきてる筈ですし。
 劇中歌を聴いていて、作中の声と違くない?といった感想を抱いた経験はありますでしょうか? 自分は具体例を出せるぐらいにはあります。劇中歌と言われると微妙ですが、CHUNITHMの小仏凪がそれにあたりますね。炎上、ロックンロール教室の会話パートとかだと結構低めの声なんですけど、私の中の幻想的(ryだとかなり誰?って感じで…。いやまあ歌う時の声と日常会話の声は違うでしょと言われるとそうなんですが…。箱部なるは猫祭りとかデタラメロックとか全部同じじゃん…。最近だと桔梗小夜曲や藤堂陽南袴あたりも歌唱と会話が同じ声ですし、こういった会話の声で歌ってるとキャラが歌っている印象を受けます。その点で私の中(ryはちゃん凪じゃなくて佐倉薫さんの歌っぽくないですか…? 宗教戦争

 話が逸れましたが、ボカロは原曲優位でありたいということを前提にプロセカに当てはめましょう。キャラ歌唱のセカイ版と声優歌唱のセカイ版があるように感じられてしまい、セカイ版にも合う合わないが発生してるんですよね。いやなんか声優歌唱のセカイ版はあるんですよ…。キャラ歌唱だと歌詞に合わせた解釈とかにも繋がりうるんですけど、声優歌唱だとどうしても歌ってみた感が否めない。自分は歌ってみたに対しても割と面倒な人間(*5)であり、原曲を尊重したいんですよね。
 原曲を尊重したいんなら基本的にバチャシン版で良くない?という疑問は尤も(読めます…よね…?)ですが、セカイ版しかないカバー曲もありまして。そのうちの1曲はチュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!。和田たけあき(くらげP)さんの人気曲ですが、やはり結月ゆかりはクリプトン色の強いプロセカには難しかったようで…。結果として"チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!"はワンダショによるセカイ版のみの収録となっています。個人的にはしっかりキャラ歌唱のセカイ版だし、ワンダショのキャラを見てもかなりありそうなカバーなのでまあ許せるかなぁって感じ。
 同様にセカイ版しかない楽曲の残りは青く駆けろ!、アスノヨゾラ哨戒班の2曲。これはなんで原曲ないの? 初音ミクとIAなら出せると思うんだけど…。セカイ版についてですが、ここまででキャラ歌唱と声優歌唱の対比について言及した点やチュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!のセカイ版をキャラ歌唱として肯定した点から推して知るべしということにしておきます。
(*注5:端的に言うとスイートマジックのリン音源動画とおちゃめ機能のテト音源動画がろんの歌ってみたに食われてしまっている点が筆者の心象としてあまりにもよろしくない。いやまあボカロPはどんどん歌って欲しいと思ってるんでしょうけど、原曲あっての歌ってみたじゃん…。ちなみに歌ってみた(単純化された表現)の中で個人的なオススメはあるのでそれを貼っておきます。今回もプロセカについてではなく楽曲についての布教なので許される。
原曲:秋の未確認生物(long ver)/音街ウナ
歌ってみたver:【本人が歌ってみた】秋の未確認生物/子牛)
(*注6:非クリプトン組のプロセカ参加はこれまでGUMIが9曲(フラジールなど)、flowerが5曲(ロウワーなど)、IAが4曲(威風堂々など)、歌愛ユキ(いかないで)、音街ウナ(ポジティブ☆ダンスタイム)、VY2V3(とても痛い痛がりたいのみ)の3人が1曲のみの6人20曲。)

 キーストーリーの書き下ろし楽曲はそのイベントストーリーに対する表現が多く、セカイ版ありきで作曲されている点も少なからずあるでしょう。それだけにセカイの解釈を抜きにした各ボカロPの楽曲でありながらセカイの解釈も入った楽曲も入った不思議なバランスになっています。こういった楽曲はユニットが前提にある上で書き下ろされてますし、セカイ版への抵抗感は薄いものになりますね。
 ちなみに直前の注釈で敢えて太字にしたロウワー、こちらflower楽曲でありながらキーストーリーに関するユニット書き下ろしの楽曲でもあります。ユニット書き下ろしはおろか、プロセカの書き下ろし楽曲のバチャシン版に非クリプトン組が採用されたのは初のことです。

“音ゲー曲”の収録

 見出しを見てなんとなく察した方もいると思いますが、この項目は先日発表された一部の楽曲収録に関して言及する項目です。つまり、”荒み”の項目。なるべく抑え目な文章で展開していけるようにはしていきたいです。

 さて、先日の公式発表によりSEGAがAC展開している音ゲー(いわゆるゲキチュウマイを指し以下SEGA3機種と表記する)に書き下ろされた楽曲の収録が判明しました。まあ様々な意見がTLに溢れかえりましたが、自分は今回の収録に否定的な意見の人間として思うところを書き連ねようと思います。正直Twitterで言ったことのまとめとプラスαみたいな感じにはなりますがそこは仕方なし。

 過去にもSEGA3機種とプロセカがコラボしたことはありまして、ウニは1回、maimaiは2回、オンゲキは…1回?の開催がありました。その際のコラボ内容としては、SEGA3機種は平時と同じくマップやちほーでのキャラやプレートなどの解禁がされた一方で、プロセカ内にはほぼ何も無しというモノ。楽曲については思うところ(*注7)がありましたが、プロセカへの影響は良くも悪くもなかったと見ていいでしょう。
(*注7:この注釈に関しては僅かにストーリーのネタバレを含む為記事の末尾に記載する。noteで上手く注釈を下に飛ばすのどうやるんですか?)

 今回の楽曲収録ではSEGA3機種とのこと再びのコラボということでプロセカ側にも楽曲が移植されるようなのですが…。

左からDon't Fight The Music(黒魔)、the EmpErroR(sasakure.UK)、エンドマークに希望と涙を添えて(cosMo@暴走P)

 なんでこの3曲なんでしょうか??? 実態はオリジナルのストーリーを楽しむゲームで体裁上はボカロの音ゲーだと思っていたんですけど…。インストのみということで歌はおろかボカロまで消え去りました、ボカロの音ゲーって何??? コンポーザーについてもcosMoさん、sasakure.UKさん、黒魔さんということですが、正直言ってセレクトが謎。なんなんだ。

 これについて、自分がまあ極左ばりの批判的立場にいる理由を少し掘り下げます。(というかそうでもしないとこの章の存在意義がない) この楽曲追加に関して、運営は豆腐(*注8)のことを全く見ていないというのが殆どの批判の根底にある問題と言えるでしょうか。まあ運営からしたら見てるんでしょうけど明らかにメインターゲットではない。この楽曲追加は、メインターゲットが音ゲーマーに寄り過ぎた。
(*注8:アイマス系列のプレイヤーを"プロデューサー"、艦これシリーズのプレイヤーを"提督"と呼ぶように、プロセカのプレイヤーは"とうふ"と呼ばれる。非公式の呼称であり基本的に平仮名表記だが、記事中では読む上での視認性の問題から漢字表記を採る。"バーチャルライブ"という機能でプレイヤーは観客としてゲーム内でのライブ参加が出来るのだが、その際に用いられるプレイヤーのアバターが豆腐の擬人化にしか見えないことからつけられた呼称とされる。)

豆腐の擬人化だろこれ。デフォルトカラー白だし。

 プロセカのユーザーをざっくり分類すると豆腐、旧来からのボカロリスナー、音ゲーマーとなるでしょうか。まあこれらが混在していますが、それは適当にベン図でも描いて貰えれば分かることでしょう。そしてそのプレイ層や収益の大半は豆腐と見てよいと考えましょうか。単純にログイン時間等で比較しても、ストーリーを読んだりイベランしたりということを考えると豆腐と音ゲーマーなら豆腐の方が多くなるでしょうし、そもそもがボカロ曲の音ゲーということもありボカロ文化を好きでもない方が長続きするコンテンツとも思えません(*注9)。MASTER譜面のAP埋めなどで長時間プレイする方もいるでしょうが、それを言ってしまうとイベラン最上位層はガチャ引いてひたすら石を割って連奏しているので、豆腐も音ゲーマーも最上位はヤバいということで片付けておきましょう。
(*注9:"ボカロ文化が好きでもないのに長続きすることはない"は肯定するが、"ボカロ文化が好きだからプロセカも長続きする"は明確に偽である。ボカロリスナーもプレイヤー層にはいるが、豆腐である必要は無いしプロセカのストーリーを楽しめない人がいてもおかしいことはない。)

 基本的に楽曲追加は原曲たるバチャシン版があり、場合によってはカバーによるセカイ版も収録されるていますが、ボカロの音ゲーだからそれはそうなんですよね。ちなみにセカイ版はボーカルのパート分けからキャラ考察に使われることもあるようです。キャラの変化や成長等が現れることも少なからずあるようですが、そこまで掘りに行く考察勢はそれはそれで凄い…。
 んでやや逸れましたが、今回の収録曲はボカロリスナーにも豆腐にも刺さらない選曲なんですよね。インストなので。ボカロですらない。ボカロですらない楽曲としてはセカイ版のみの収録となった楽曲もありましたし、豆腐にとってはその辺りは供給として機能していてはいたのですが…。
 3曲ともボカロ作曲の経験があるコンポーザーの楽曲ですが、ボカロPという観点で並べてしまうとcosMoさんとsasakureさんに対し黒魔さんだけ浮きに浮いている訳で。プロセカでもcosMoさんとsasakureさんには既存曲と書き下ろし曲がどちらも収録されていますが、黒魔さんの楽曲はこれが初。なんならボカロPとして黒魔さんの活動は知らなかった方もいるでしょう。ボカロPとしてのcosMoさんやsasakureさんを知らない方が黒魔さんのボカロは分かるというケースはまあ少ないのではないでしょうか。音ゲーマー視点では充分強い御三方ですが、ボカロ側から見ると違和感しかないんですよね。せめて先に黒魔さんのボカロ楽曲を先に収録しておいて欲しかった。

 豆腐を見ていないに関して思う点のもう1つがその難易度でしょうか。今回の移植曲は元機種でも高難易度に設定されており、プロセカの譜面も高難易度になることは容易に想像がつきますね。じゃあ豆腐がその譜面を叩けるかというとこれ怪しいんですよ。
 イベントポイントの回収効率を考えるとマルチライブが主体となるプロセカですが、当然ながら同部屋のプレイヤーのリザルトも見れます。そこで自分と他人を比較した時に、音ゲーの実力としては体感ですがマルチライブ参加者の上位3割ぐらいには入ります。自分を例に挙げてしまうのはあまり良くはないのですが仕方なし。んで、その自分の適正難易度はEXPERTの25前後(*注10)。基本的に繋いでSUPER FEVERを達成するのが前提となる(*注11)ゲームなので、あまり高難易度は触れないとも言えますね。そんな中で消失/激唱に近い難易度で出されてもEXPERTをやれる訳がなく…。おまかせ選曲で消失が選ばれた時に参加者全員がHARD譜面を触るのは本当によく見ますね。消失をMASTERやって繋ぎ切れる人間とマッチングすることはどんな総合力帯(*注12)であっても稀です。そもそも豆腐ではない音ゲーマーはマルチライブなんかやらんと1人で黙々と叩いてますしね。大体(あまりにも雑)のプレイヤーが高難易度を押せないと考えていいでしょう。
 ボカロ曲が追加されてそれが難しいなら分かります。その難しさの所以たる曲の速さや難しさも1つのボカロ文化です。今回はそんなことないじゃないですか。ボカロじゃない文化の曲が急に入ってきて高難易度に居座らんでよ…。かといってその3曲が簡単だとそれはそれで問題です。ボス曲を移植して弱くするのはその曲の解釈として合わない。
(*注10:プロセカの難易度は易しい方からEASY/NORMAL/HARD/EXPERT/MASTERの5段階のものと5~33の29段階のものの2種類がある。各曲5譜面でありそれらに個別で難易度設定がされている為、MASTERの26もあればEXPERTの30もある。)
(*注11:マルチライブにはFEVER CHANCEが存在し、このCHANCE中に全員が一定コンボ以上を達成するとそのコンボ数に応じてFEVER、もしくはSUPER FEVERに突入する。これはライブ終了後の報酬にも影響し当然ながらSUPER FEVERの方が報酬も良い為、基本的にはFEVER CHANCEを繋ぎ切ることが求められる。また、スコアランクによっても報酬が上下するが、プロセカはコンボ数に応じてノーツの素点が増えるシステムなのでやはり接続した方がスコアは伸びる。)
(*注12:編成したカードの合計値が総合力であるが、マルチライブでは自身と同等の総合力のプレイヤーとマッチングしやすい。まあそれはそう。)

 長くなりましたが、音ゲーマーしか押せないし音ゲーマーしか興味ない楽曲の追加だしボカロPではなく音ゲ側のコンポーザーから選んでるし…。SEGAの書き下ろし楽曲には他にもボカロPによる楽曲はありますし、ボーカル付きのものやボカロ音源があるものも多数あるんですよね。それこそ賛否両論となりそうな話ですが、光線チューニングをモモジャにカバーさせるとか、the EmpErroRにワンダショ男子でPVをつけるとか、まあ何かしら豆腐に寄った収録の仕方もあったのでは…。まあSEGAオリ曲が各ユニットのセカイに絡んで来ないという意味では、ストーリーや解釈に影響しないので救いと言えるかもしれません。こんなん結局解釈次第です。
 プロセカとSEGA3機種の間でユーザーの共有やそれによる相互の活性化を求めているであろうことは想像がつきます。依然としてACは厳しい状況と考えられますが、プロセカを運営するカラパレはかなり収益出てるようですしね。
 ただまあモヤモヤに近い感情はあります。ボカロ一辺倒の時代は終わった? ボカロが中心にあるコンテンツなんですよ??? 歌無しが本気とか言うんだったら最初からインスト多い機種に籠もっててください。

 ちなみにこの項をまとめると、運営のターゲットから外れた厄介オタクが泣き喚いてるだけになります。みっともないですね。

コンテンツ飽和時代にコンテンツへ何を思う?

 最後にプロセカとは直接的な関係は薄い内容について言及しましょう。折角の最終項目ですし、これまでのノリとは変わって少し真面目に話しましょうか。

 日本国内で出版された全ての出版物を収集・保存する日本唯一の法定納本図書館として国立国会図書館がありますね。それに関し1つの疑問なのですが、国立国会図書館の書棚が溢れたらどうなるんでしょうか? 全ての出版物を収集・保存するとありますが、その限界を見た時そこでは何が起こるのでしょうか。
 上述の問いの答えは軽く調べてもよく分かりませんでしたし、正直答えが分かる読者の方もそうそういないと思います。まあ大事なのは問題提起であって、棚溢れという事象の要因に考えて貰えれば疑問の共有として十二分の成果を挙げています。ではもう1点違う観点から例題ですが、平安時代と現代で娯楽の量はどちらが多いでしょうか? こちらの問いに関しては容易に分かるでしょう。当時はゲームやスマホが存在しなかった一方で現代では各種文献を通して当時の文化に触れることが可能という点だけでも明白ですね。
 今のご時世、あらゆるモノが存在しています。これだけだと抽象的過ぎまるので少し言い換えましょうか。ソシャゲでも小説でも音楽でもいいですが、世の中にはその全てを把握することが出来ないほどのコンテンツが存在していますね。どんな内容でもいいですが、例えば音楽を趣味としている貴方はこの世に存在する全ての曲を聴いたことはあるでしょうか? コンテンツが減ることはありません。見向きもされなかった結果消え去ったモノというのは存在しえますが、確かにそこに"在った"ことは変わらないですね。ではそういった全てのコンテンツに触れることは可能でしょうか?

 まあ無理がある問いだと思います。既にコンテンツが飽和している現代ですし、新しい創作が続く限りコンテンツ量は単調増加ですからより飽和していく…。全てを履修するのはどだい無理ですね。無尽蔵に"新しい"が生まれる時代ににおいて、自身の知らないコンテンツを網羅するのも無理な話な訳です。
 ですが、新しい知らないコンテンツを探していくことは面白いかもしれません。そこには自身の知らない価値観や解釈があり、それらを信仰する人達がいます。"信仰"なんて表現としてなんだか物々しいですが、趣味でもなんでもそこに拠り所があるならそれは信仰の一種と言えるでしょう。他人の持つ"信仰"、その一端に触れてみるのも自身の価値観を新しいものにしてくれる一因になりますね。自分の時間と体力が許す範囲にはなりますが、色々と触れていってみたいところでしょう。

分け入っても分け入っても青い山  ―――種田山頭火

まとめ

 さてまとめましょう。ハチさんとの対立や他機種との連動はこれからのプロセカの立ち位置を考えるいい材料になるでしょうか。砂漠を緑で覆い林檎を実らせたイラストからはこれからもボカロシーンを支えようという意図が感じられるでしょう。プロセカという文字を出してはいないものの、最後の項目はなんだかんだ布教っぽくなってしまいました。布教はしないって銘打ってたのにね。
 "無尽蔵に増え続けるコンテンツ"に対する答えは分かりません。少し真面目に話しましょう、なんて言いはしましたが最終的にはなんとなく論点をすり替えて締めちゃいましたしね。コンテンツが減ることはない以上、その収集や保存の限界というのは来るでしょう。その時、自身が愛したコンテンツはどうなるんでしょうね?
 プロジェクトセカイというコンテンツの根底にはストーリーの展開と数多のボカロ曲があります。勿論曲もストーリーも聞き手の数だけ認識や解釈がある内容ですが、そこに確かな"想い"が存在しているのは間違いないでしょう。新しく触れる選択をした方がそうした数多の想いを感じてくれるといいですね。

 自分なりにかなり綺麗にまとめた前編と異なり、後編は趣味嗜好の面でまあ尖りました。ある意味で緩急のある文章になったと言えないこともないかもしれませんね。まあ前編からの繰り返しですが、この前後編を通してプロセカへの認識がなんとなく変わったかも?という方がいれば嬉しいですね。

 さて明日の記事はメガネくん、"ASMRという視点からVを見る"とのことです。完全に個人的な話ですが、最近裸眼視力が落ちてきた気がするので眼鏡屋なり眼科なりに行った方がいいかもしれません。
 ではまた。

余談

 余談コーナー。12000字書いてから余談に入るんじゃないよ…。

・Project DIVA FutureTone DX mega39's

 DIVAです。プロセカの開発にあたり少なからずDIVAで培われた3Dモデル等の技術が流用されているようですね。それはさておき、Switch展開中の目下最新機種がDIVA mega39's。読み方はメガミックス。改めてmega39'sって良くないですか? 女神ですってよ女神。初音ミクは女神という暗喩ですね。

・信仰

 記事の終盤で少しだけ信仰について触れましたね。この信仰って面白い概念で、何も宗教に限らない。信仰っていうと何か宗教的なものを想起させやすいですが、人が何かに頼るならばそれは広義で信仰ですしその時点で既に一種の宗教ともいえるんですよね。宗教や信仰、面白い概念ですが包含するものが膨大すぎるだけに安易に話すと各方面からマサカリが飛んできそうです。自分は"日本"という宗教(この場合は12月にクリスマスを祝い正月には神社に向かい葬式は仏教式で行うチャンポンの権化のような宗教的文化を指す)を信仰していますが、これも深く掘ると面白そうですよね。記事の余談で書くことではない。
 もう1点。宗教は信じることが仕事ですが、科学の根源は何時だって疑うことですね。この世界を理解する1つの言語としての科学、信仰とは対立的であり、またある意味では信仰に依るものですね。

以上。
記事中にあったネタバレが絡む注釈について、この数行下に記載があります。とはいっても最大限ネタバレを減らした注釈にはしたので、メインストーリーまだ読んでない…って方もあまり気にしなくていいと思います。ネタバレがネタバレたる所以はストーリーを読んで探してみてね。

あ、矢印の個数に意味はないです。

(*注7-A:1回目のSEGA3機種プロセカコラボに際しAC収録となった楽曲は以下の通り。
オンゲキ:タイムマシン(Leo/need音源)、ツギハギスタッカート(MORE MORE JUMP!音源)
maimai:劣等上等(Vivid BAD SQUAD音源)、自傷無色(25時、ナイトコードで。音源)
CHUNITHM:セカイはまだ始まってすらいない(ワンダーランズ×ショウタイム音源)
この並びを見れば分かるのだが、プロセカ書き下ろしの収録はウニのワンダショ楽曲のみであり、他機種4ユニットはカバーによるセカイ版の収録となった。各ユニットに書き下ろしがあるのに何故それを無視してカバー楽曲を収録したのだろうか。ボーカルチェンジが実装されているゲームではないのに原曲でプレイ出来ないのはどうなのよ。最大限の譲歩をするなれば、劣等上等だけはビビバスのメインストーリーで割と大事な役割を果たしている為許せないこともないだろうか。しかしそれに則るとモモジャはハッピーシンセサイザが収録されることになるだろうしそもそもレオニとニーゴにそういった楽曲はないのだが。maimaiのみ先行して第2回コラボが実施されたが、その際の収録楽曲はユニット書き下ろしであるアイドル新鋭隊(モモジャ音源)とセカイはまだ(ry(ワンダショ音源)だったので不満等はなし。だったら第1回から書き下ろし入れれば良かったじゃんねぇ。)


画像協力:shingotano0512さん
校閲協力:National_UniVerさん

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