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イベントレポートNo.8「変革の現場でおきる利害関係をどう乗り越えるか」立川昭吾さん (19年6月全体会)

6月14日(金) グロービス東京校にて、株式会社TSKプランニングの立川昭吾さんをお招きし、変革クラブ6月全体会を開催しました。

立川さんは、複数の企業でV字回復から上場に関わられた、日本でも数少ない組織変革・再生コンサルタントです。
ご経歴は、東証一部企業にて勤務したのちに独立。日本に「事業再生」という言葉すらない時代に、国会図書館にて独学で勉強していたところ、バブルが崩壊し、はじめは近隣の飲食業に「夜逃げを教える」ことから事業再生に携わるようになりました(映画『夜逃げ屋本舗』のモデルにもなったそうです)。
その後コンサルタントとして、今まで約3,000社の事業再生に携わりながら、利息制限法のきっかけを作ったことでサラ金から追われる生活を送ったり、日本初のスキーム(金融デリバティブや知財融資など)の導入検討に携わるなど、多様なご経験をされてきました。

ここからは、全体会のお話の中で特に印象に残っているポイントをご紹介します。

事業再生は百種百例
平時の変革と異なり、事業再生は資金繰りが逼迫する中での生きるか死ぬかの真剣勝負。明日倒産しそうな会社を担当することも少なくない中、「百種百例」の案件に的確な答えを出すのが再生コンサルタントの仕事である。
例えば一口に飲食業といっても、ビール(焼き鳥屋など)→日本酒(要 板前)→ワイン(要 ソムリエ)→ウィスキー(キャバクラなど)の順で経営は難しくなる。後者になるほど利益率=付加価値が高いが、比例して経営における変数は多くなる。このように、同じ業態であっても、細かく見ないと違いがわからない。
事業再生では「明日困る」人ばかりで、迅速に答えを導くために、あらゆる業種の百種百例の中から共通する”キモ”を見出すことが必要。”キモ”の見つけ方は言語化しにくく、百種百例の中、自分の経験を通じて学んでいくもの。財務諸表などの数字から見えることも多い。

目線を合わせる
事業再生の仕事は利害関係者の調整であり、人を動かすことが必要不可欠。
経営者は皆、自分の過去のやり方を否定されることを嫌って事業再生をやりたがらない。経営者を入れ替えるのが最も簡単だが、替えられない事例も多く、その場合は経営者を動かさないといけない。
幼稚園児には目線を合わせて説明することが有効だが、大人の世界でも同じ。コンサルタントとして知識を振りかざしてもうまくいかず、その企業の目線やレベルに合わせて、腹に落とすように伝えていかないと、人は動かせない。

ぶれないポリシーを持つ
(質疑応答にて、大企業における利害関係者への向き合い方について)
東証一部企業でのサラリーマン時代には、入社前の面接時から社長になると信じて働いてきた。結果、35歳で子会社の社長になり、40歳でその子会社を清算する経験を得た。
入社以来、「自分が社長になったらどうするか?」ばかり考えていたが、周囲に同調しない社員だったので、反発を受けて転勤となることも多く、「転勤王」になった。ぶれないポリシーがあったので、それを面白がる役員に見出されて有志の勉強会を主催することに。有志で作成した社内誌の編集後記に自分の本音を書いたところ、問題視されて役員会に呼び出されることもあったが、一部の役員は「本音」に共感してくれる人もおり、結果として子会社社長への抜擢につながった。
大きな会社の中にいようとも、「党派性」=自分のスタンスを持つことが重要。自分で妥協しない。それくらいの腹の括りがないなら、会社を辞めた方がいいのでは。

MBAについて
吉田松陰が起こした松下村塾から、明治維新を支える数多くのリーダーが生まれたように、学問は小さなところで生まれて広がっていくもの。このクラブのような勉強会が何かのきっかけになるのではないか。
MBAは「経営者になる」という信念を持ってやらないといけない。昔は経営学なんて勉強しなくても経営者になれたが、今は勉強しないと務まらない。皆さんなら次のリーダーになれると信じている。

変革クラブは、グロービス経営大学院の中でも「変革」のタグで集まるコミュニティです。立川さんのお話にもあった通り、ここで出会った人たちが変革に向けて互いの課題意識や取り組みを共有し合い、変革に向けて前進していく…。
そのきっかけの場として、今後も変革クラブは皆さんと活動していきたいと改めて思いました!

7月全体会のお知らせ
次回は7月26日(金)、株式会社CRAZYの森山社長と乾さん、グロービス2018期の高橋さんにお越しいただき「人生の節目をキッカケに変革を始める、加速させる」というテーマでお話いただきます! パネルディスカッションなど新たな取り組みも行うので、こうご期待!!

レポーター:グロービス変革クラブ代表 渡部嵩大(2017期東京校)

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