僕の後期研修に足りなかったこと

先日親からのメールで、家庭医療専門医試験に合格したことを知った。ひとまず、よかった…。

さて実りある後期研修になるようにいろいろ工夫してきたつもりだったけど、振り返ってみると多々足りないなぁと思うことが見つかった。忘れないうちにメモしておこう。

① 在宅医療に関する諸制度:以前も書いたが、僕は後期研修が終わるまで訪問看護に介護保険と医療保険の2種類があることを知らなかった。何でこんなことになったのかというと、僕が診療所研修(ver 2における総合診療Ⅰ)をおこなったのは山間へき地の旧国保診療所で、訪問診療と訪問看護が明確に分化されていなかったり、周囲に連携しなきゃいけない訪問看護ステーションやヘルパーステーションがなかったからだ。たんぽぽ先生の本ぐらい読んでおくべきだった。また診療所研修はへき地と市街地の両方を経験するべきだ。

② 禁煙外来:家庭医療専門医試験の実技試験(CSA)にあると知って、若干ショックを受けた。3年間の後期研修で、少なくとも12ヶ月は禁煙外来をやっている医療機関で働いていた。しかし病棟業務や他の研修で忙しかったり、僕の中でも禁煙外来研修の優先順位がそこまで高くなかった。後期研修を始める時点で、何が家庭医に求められているのかしっかり把握すべきだ。また必須項目については必ず経験できるように、配慮・調整してくれてもよいと思うのだが…。

③ ウィメンズヘルス:日本の家庭医にこの分野の知識・技術がどれほど必要なのかは議論があるが、専門医試験の筆記試験(MEQ)に選択問題として出てくるのに、後期研修で全く取り扱わないのはどうなのだろう...。とはいえ僕が卒業したプログラムでは実際産婦人科研修をすることは現実的に難しかった。

④ 地域へのアプローチ:後期研修中は疾患や人・家族を診るのに精一杯だった。転倒・骨折予防の啓発活動をおこなったことは確かだが、役場の保健師さんらが作った計画に乗っかっただけだった。ただ3年間では疾患やヒトのマネジメントで手一杯で、とても地域を診る余裕などなかった。

⑤ グローバルヘルス:最近はGLOWなどもあるが、医師が臨床研修と平行して海外経験ができる機会は乏しい。JOCVやPeace Corp上がりの若者が20代半ばで数年の途上国経験があるのに比べて、医師が後期研修医を終えてから海外に行こうとすると、30歳過ぎて海外経験が1年未満…なんてことも。とはいえ国際保健目指すなら臨床を捨てろ、というのも違う気がする。例えば米国ではワシントン大学Via Christiなどで途上国経験ができるフェローシップを用意している。ピッツバーグ大学は家庭医のレジデンシーに途上国ローテーションを組み込んでいるし、イギリスにも同様のレジデンシーがあるようだ。AAFPのウェブサイトから海外ローテーションができるレジデンシーを検索できる。日本でもこういったプログラムが増えたらよいが…。

⑥ 研究:東京ベイのレジデントが研修しながら研究していうらやましかった、という話は以前書いたが、日本の家庭医療後期研修でレジデントにしっかり研究をやらせるプログラムはまだわずかだろう。これは我々Early adaptor達が自ら研究手法を学んで、環境を改善していくしていくしかないのかもしれない。

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