エモリーMPH留学記:2年目秋学期の記録

早いもので学生生活も3/4が終わってしまった!去年よりも時の流れが早く感じる。半年後には卒業するというのは信じられない。

学業

BIOS 550 Sampling Application

標本抽出の手段として層化抽出やクラスター抽出などを学び、そうしたcomplex survey dataを分析するためのSUDAANやWesVarなどのソフトウェアの使用方法について実習した。SASにもproc surveymeansやproc surveyfreqなどのprocedureはあるが、複雑にサンプリングしたデータセットには対応できないことを初めて知った。しかしSUDAAN自体で初年度10万以上する高いソフトウェアである。SASと合わせていくらかかるのやら!いくらCDCがSASを使うからといって、卒後に生徒が買えないソフトウェアばかり教えるのはどうかと思う。

EH 500 Perspective of Environmental Health

いわゆる500シリーズ(各分野の最低限の基礎知識を押さえる必修コース)でモチベーションがやや上がらなかった。環境衛生は排水処理しかり殺虫剤しかり規制が絡んでくるので、産業界との対立は避けられない。特にアメリカのように産業界からのロビー活動が強く、訴訟も優秀な弁護士を雇った方が勝つ国では、environmental justiceを貫くのは大変だ。

EPI 740 Epidemiological Modeling

ロジスティック回帰分析、生存時間分析、ポワソン回帰分析などを取り扱うコース。適切に回帰式を組み立てる手順(交互作用、交絡、multicollinearityの評価など)を教えてくれて、非常に勉強になった。元々は履修予定がなかったが、修論で量的分析をすることになったのでaudit (聴講という単位は認められないが受講できる)することになった。名物教授のDr. Kが授業中にぶっ倒れるというハプニング付きだった(幸い大事には至らなかった)。

GH 502 Survey Research Method

秋休み開講された5日間の集中コース。文字どおり調査票及び調査計画を作るのだが、毎日朝3~4時まで宿題に追われ、日中は授業に集中できないばかりか、風邪を引いて寝込んでしまった。授業内容は悪くなかったが、講師は作業量を考え直したほうがよい。

GH 505 Social Entrepreneurship for Global Health

Holadoctorというヒスパニック向けのWebMDのようなウェブサイトを経営している起業家が、隔週で社会起業論のようなものを講義してくれた。しかし僕を含めMPHの学生はほぼビジネス経験や知識がないので、小グループで作ったビジネスプランは甘々だった。しかもトランプ大統領が爆誕してオバマケアの行く末が不透明になり、本業を優先するため授業が急にキャンセルになったりした。医療ビジネスは政策や規制の影響をもろに受けることを実感した。講師はすばらしかったが、コース設計はかなり無理があった。

GH 525 Qualitative Data Analysis

Grounded theoryに基づき、MaxQDAというソフトウェアを使いながら、メモ、コード作成、概念化など解析を進めていく授業だった。前学期と同様に、非常に時間がかかる授業だった。質的研究のトレーニングを一通り終えて、質的研究を専門として日本国外で仕事をしていくのは結構厳しいだろうなと思った。質的研究は言語に依存する。英語に不自由な僕が、英語ネイティヴの医療人類学者に対抗するのは大変だ。

GH 560 Monitoring & Evaluation for Global Health Program

前半はTheory of changeやLogframeなどのモニタリング手法を、後半は Cluster RCTやらregression discontinuity、difference-in-differencesなどの評価手法を学んだ。評価科学という学問領域について全然予備知識がなかったのだが、RCTがゴールドスタンダードになっているのは驚いた。研修医の頃からRCTなどの原著論文に読み慣れておいて正解だった。モニタリングの課題ではでしゃばっていたアメリカ人のグループメイトが、評価手法やサンプルサイズ計算を全然理解しておらずトンズラこいたのにはイラっとした。

GH 561 Application of Public Health Economics for Low and Middle Income Countries

大学レベルのミクロ経済学(希少性、需要供給曲線、外部性、財の種類など)およびグローバルヘルスを経済学的視点から振り返る、という授業だった。医療でいかに完全競走が成り立たないか、よくわかった。個人的には疫学より経済学の方が勉強していて楽しかったが、疫学みたく実証をあまり重視していない点は残念に感じた。3単位あるわりには簡単だった。またマクロ経済学までカバーしてほしかった。

プラクティカム

こちらを参照のこと。

課外活動

パートタイムジョブについては出願10→インタビュー1→採用0だった。やっぱりREALがない外国人がオフキャンパスで働くのは厳しかった。CDCでバイトをするという目標が断たれたのは無念だ。あと英語での面接対策をちゃんとしないといけない。今後は就活の方が優先度が高いので、バイト探しは打ち切ることにするつもりだ。

プライベート

今学期は大きなトラブルなく過ごせたのがよかった。料理のレパートリーは何種類か増えたが、目標の10までは届かなかった。ジム通いも始めた。Cyber MondayについにFitBitを購入してしまったので、ちゃんと運動しなきゃ!

サンクスギビング休暇にニューオリンズに友人と行ったのは楽しかった。新鮮な生牡蠣などを堪能し、アメリカに来て初めて食に恵まれたと感じた3日間だった。しかし深夜にフレンチクオーターを歩いていたら発砲事件に巻き込まれて、米国社会の負の側面を垣間みた。

修士論文

当初の計画を改めて、プラクティカムでおこなった量的分析の続きでcatastrophic out-of-pocket health expenditureについて書こうと考えている。授業や課題にかまけて論文執筆が遅れていたら、指導教官からのプレッシャーが日増しに強くなってしまったので、冬休みは論文執筆に注力するつもりだ。

就職活動

あー、やらなきゃ…


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