エモリーMPH留学記:1年目秋学期の記録

もう大学院生活の1/4が終わってしまったのかと思うと、光陰矢の如しとはまさにこのことだ。自らの振り返りも兼ねて、ロリンスでの学生生活を紹介したい。ちなみに僕はグローバルヘルス専攻であり、他専攻と経験内容が違うかも。

オリエンテーション

今となってはだいぶ昔のことのように思える。周りの留学生や米国人と何とか気さくに会話をしようと、常に神経が高ぶっていた。Rollins Teerという半日ボランティア活動をする謎のイベントがあり、野良仕事で革靴が泥だらけになってしまった…。

授業

BIOS 500 Statistical Method 1

前半は確率を中心に(順列と組み合わせ、確率変数、ベルヌーイ試行、二項分布、ポアソンの分布、正規分布など)、後半は統計的推定や検定を中心に(信頼区間、t検定、χ二乗検定、one-way ANOVAとF検定、サンプルサイズ計算など)学んだ。今学期に取った科目の中で最も苦労した、というか自己認識とのギャップに苦しんだ科目だった。というのも高校までは数学が得意科目だったので、どこかで「僕は数学ができるはずだ」と錯覚していた。でも高校時代とか10年前の話である。20代半ばの周りの学生と比べて、脳細胞も老化している。昔は昔、今は今、と気持ちを切り替えて勉強時間を最も割くことにした。日本のAmazonから度々日本語の教科書を購入して(DHLで米国まで配達してくれる)、副教材とした。まぁ信頼区間の定義をずっと誤解していたことにも気づいたし、しっかり勉強できてよかった。

(追記) 後日思い出したが、僕は某S●Gという塾でGクラス(上から2番目)だったので、数学が「超」できるというわけじゃなかった。自分の都合がいいように、記憶が書き換えられていたのだ。

EPI 530 Epidemiologic Method 1

前半は指標の定義(PrevaranceとIncidenceの違い、RiskとRateの違いなど)や研究デザイン(症例対照研究、コホート研究、RCTなど)について、後半はバイアス(選択バイアス、情報バイアス、交絡など)や交互作用を取り扱った。4科目の中では最も楽だった。というのも授業内容の約半分は、今までのEBMの実践の中で既に学んでいたものだったからだ。改めて僕は恵まれた初期・後期研修を受けてきたのだと感じた。とはいえRateの単位がPerson-Timeであることなど基礎が抜けていることがわかったり、一通りおさらいできてよかった。

GH 501 Evidence-Based Global Health Policies, Programs and Research

グローバルヘルスの歴史・概論についてのレクチャーから、前半はPolicy Brief (政策提言書?)の執筆及び学生同士でピアレビュー、後半は小グループでGlobal Innovation Fundという実在するドナーへGrant Proposalを書く実習など、盛りだくさんだった。ちょうど国連総会でSustainable Development Goals (SDGs)が採択されたタイミングも重なり、非常に高揚感があった。Policy Briefを書くのは結構大変で、締切に追われBIOSの小テストをすっぽかしてしまったことは今ではよい思い出だ。ただGrant Proposalのグループワークはダレてしまったのが残念だった。そもそもPeace Corpを数年経験したぐらいで、良い企画を生み出すのは難しい。System Thinkingなどのスキルも紹介されたが、解説のみで実践的な実習はなかった。総じて非常に満足しているが、やや発散してしまった感は否めない。

EPI 533 Programming in SAS

ロリンスでは主にSASを用いている。BIOSでもSASの実習はあるのだが、この科目ではSASを駆使してデータクリーニングする方法などを学んだ。統計ソフトなど触ったこともなかったし、GUI版ではなくコードを打ち込まなくてはならず最初は苦戦したが、次第に慣れた。

ESL (English as a Second language)

留学生だけが集められ英語の勉強をするのだが…正直なくてもよいかもしれない。担当教員はすごくよい人なのだが…。

Certificate

授業やセミナー、修士論文などの組み合わせによりcertificateを取得することができる。僕はSocio-Contextual Determinants of Health (SCDH)のcertificateにエントリーした。さしあたりセミナーやジャーナルクラブに参加しなければいけないのだが、取り扱うテーマが人種差別や銃規制など米国ならではであり、新鮮かつ文脈を理解し難くもある。「私の夫は銃が大好きで…」とかいう話じゃ盛り上がれない。

クラブ活動

ロリンス内にもいくつかのクラブがあるので、希望に応じて参加できる。僕は当初Mobile Health (先進国のそれとは異なりSMSをサーベイランスなどに利用する)のクラブに加入したのだが、活動がガチでドロップアウトしてしまった。あの頃は英語力的にもキャパがなかった…。今はIHI Open School Emory Chapterの勉強会に参加している。Basic Certificateは取得した。

Conversation Partner Program

米国人と英語を話したい留学生と、留学生と英語を話したい米国人をマッチさせるという、ありがたいプログラムがある。それでマッチしたのが非常に良い人だったので、感謝である。

アトランタ日本人研究者の会

同級生の旦那さんが、エモリー大学医学でポスドクとして働いており、その方が主催された会に参加した。アトランタにはエモリー以外にもGeorgia TechGeorgia StateMorehouseなど様々な大学があり、日本人の学生やポスドクが結構いるのだ。昨今の若者は留学しないとか言ってるの、誰だよ。テーマはVLRという、今のところヤツメウナギにだけ見つかっているヒト免疫グロブリンとは異なる抗体の話だった。基礎医学の知識もいつかアップデートしたいなぁ…。

ボルダリング

エモリー大学のキャンパス内にはでかい体育館があり、ボルダリングもできる。他の日本人に誘われたのをきっかけに始めた…が、1回やると筋肉痛がひどいので、まだ2回しか行けてない。これをきっかけに運動も再開したいが…。

初めはどうなることかと思いきや、なんとか生き残っています。思い出したら、追加で書き出したいと思います。

※ 筆者は2015年入学者なので、情報が最新でない可能性があります。

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