なぜMPH留学なのか?

著者は米国の公衆衛生大学院で公衆衛生学修士(Master of Public Health, MPH)を取得するために留学することになった訳だが、その動機について以下に記したい。ちなみに最初に言っておくと、損得勘定だけではMPH留学はオススメできない。例えば過去の投稿でエモリー大学へのMPH留学が2年間で約1,600万円かかることを記した。

日本で働いていたら稼げたであろう収入を仮に900万円/年とすると、機会損失1,800万円と合わせて3,400万円分の経済的損失がある(割引率やインフレ率で補正してません)。しかもMBAとは異なり、MPHを取得したことで年収がアップすることはほぼない。むしろ公衆衛生業界で働くとなると生涯賃金は恐らく減る。あなたの自己実現に3,400万円以上の価値があると感じられれば、留学すればよい。こうしたダウンサイドを考えて「留学はちょっとなぁ…」と思ってしまうのであれば、無理にする必要はないと思う。日本でもパートタイムでMPHが取得可能だし(東大・京大など)、学位がいらなければ独学でもよいのだから。

それでもなぜMPHなの?と問われれば、グローバルヘルスの仕事がしたかったからである。ボランティアとして海外で医療行為をしたり、NGOに活動するのであれば必ずしもMPHは必要ないだろう。しかし開発援助機関や国際機関で職を得て飯を食っていこうと思ったら、MPH等の修士号の学歴は最低条件である。私は医者だ!というだけではダメなのだ。例えば以下の世界保健機関(World Healh Organization, WHO)の求人を見て欲しい。

ある求人のrequired qualificationsには以下のように書かれている。

A university degree in a health-related profession and a master’s degree in epidemiology, public health or related field from a recognized university.

しかもよく読んでみると、以下のようにも書いてある。

WHO only considers higher educational qualifications obtained from an institution accredited/recognized in the World Higher Education Database (WHED), a list updated by the International Association of Universities (IAU) / United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization (UNESCO). The list can be accessed through the link: http://www.whed.net/. PAHO will also use the databases of the Council for Higher Education Accreditation http://www.chea.org/ and College Navigator, found on the website of the National Centre for Educational Statistics, https://nces.ed.gov/collegenavigator to support the validation process.

まぁWHEDには日本も含めて多くの大学が登録されているのだが、なるべく有名な、欧米の大学院でMPHを取得した方が良さそうだというニュアンスはご理解いただけるだろう。いづれにせよ、MPH(や公衆衛生分野の修士号)があるからといって仕事にありつける保証は全くないが、ないと足切りされてしまう。必要条件なら、粛々と取るしかない。しばしば「グローバルヘルスをやるのにMPHは必要か?」と悩んでいる学生に出会うが(僕も昔はそうだった気がするが…)、そこは悩みどころじゃないのだ。だって取るしかないから!まぁ純ジャパが英語に自身がない・不安だというのはよく分かるのだが(私も純ジャパなので…)、しょうがないじゃん。やるしかない!

このように返答すると次に来る質問は「なぜグローバルヘルスなのか?」である。パーソナルは話になるのだが、その根底には…

『自らがコントロールできない環境によって人生が左右されてしまうことに対する怒り・憤り』

…がある。結果の不平等はある程度仕方がないにしても、機会の不平等は受け入れがたいと思っていた。大学生の頃に国際医学生連盟日本(IFMSA-Japan)に出会ったことがきっかけで、他国の医学生とディスカッションしたり、途上国をバックパックを背負って旅行するようになった。もちろん日本国内にも格差はあるが、低所得国の最貧層にカテゴライズされる人々は、我々日本人よりもはるかにチャンスが限られている。で…彼らの健康を担保することは彼らがよりチャンスを掴む可能性を高めてくれるので、グローバルヘルスの仕事をしたい、と思うようになった。

上記のように暑苦しく語ったが、不安がない訳ではない。著者は今まで途上国に年単位で住んだり・働いたことがないのだが、にも関わらず本当に心のそこから「グローバルヘルスがやりたい」と言い切れるのか??と問われると、正直よく分からない。今でも若干迷っている。でも、よく分からないからといって何も行動しなければ、一生分からないままだろう。確かめたいと思ったら、行動してみるしかない。経験してみて「やっぱり違った」という結論になる可能性はあるが、やる前から心配しても意味がないし、人生は一度きりなのだから、エイヤーと飛び込んでみたらいいじゃないか!

また上記のような志望理由書向けの美しい理由がある一方で、決して綺麗事だけではない内的な動機も存在する。人は誰しも、綺麗事だけで動機付けられるわけがない。私も突き動かしていた何かががあるはずだ。何だろう?…と胸に手を当てて考えてみると…

(※以下はややパーソナルな内容になるので有料にしています)

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